2019年11月29日

【かがみの孤城 THE SOLITARY CASTLE IN THE MIRROR】辻村深月 読書日記1097



第一部 様子見の一学期
第二部 気づきの二学期
第三部 おわかれの三学期

 主人公は、中学一年生の少女安西こころ。中学に入学したばかりなのにクラスメイトの女子からのイジメにあい、不登校となってしまう。なんとか立ち直るべく、不登校児専門のフリースクール「心の教室」に行くことになるが、それすら「お腹が痛くなって」行かれない。そんなある日、一人留守番をしているこころの部屋の鏡が突然光り出す。不思議に思って触ろうとしたら、こころはそのまま鏡の中に入ってしまう。そこは見たこともないお城の中。

 出迎えたのは狼の仮面を被った少女「オオカミさま」。突然の出来事に戸惑うこころ。オオカミさまの言うには、この城は翌年の3月30日までの間、日本時間の朝の9時から夕方の5時まで開かれていて、その間どこかに隠されている「鍵」を見つければ、何か1つ願い事が叶うというもの。しかし、5時を過ぎて城に残っていると狼に食べられてしまうというルールがある。そしてこころの他にも全部で7人の中学生が同じようにやってきている。

 ふしぎの国のアリスではないが、不思議な城に招かれたこころは、そこで6人の仲間たちと知り合い、一定の時間城で過ごすようになる。メンバーは、中三のアキ、スバル、中二のフウカ、マサムネ、そして中一のリオンとウレシノ。城の中は自由だが電気しか来ていない。初めは鍵探しを試みるが、すぐには見つからず、やがてマサムネが持ち込んだゲームをやったりして5時までの時間を過ごすようになる。

 実はこの7人には、「学校に行っていない」という共通点がある。そして全員が初対面であったが、同じ中学だと判明する。それぞれどこに住んでいるかはわからないが、日中、鏡を通ってこの城にやって来る。学校へ行けないこころは、心地よい居場所を見つけ、鍵探しよりもここでみんなと過ごすのを楽しみに城にやって来るようになる・・・

 不登校の子どもたちが、学校に変わる不思議な居場所を見つける。はじめはなんとなく子ども向けのおとぎ話の雰囲気でストーリーは進む。どこにでもありそうな不登校の物語。理不尽なイジメをするクラスメイトに、どこかポイントがずれた対応しかできない担任の教師。心配する両親。そんな中でフリースクールの喜多嶋先生だけが、なぜか優しげな雰囲気を醸し出している。一体、どんな物語展開になるのだろうかと先が気になる。

 そして明らかになる7人のメンバーの意外な関係。オオカミさまの正体と「7人」の意味。オオカミさまの謎かけとこの城の正体。途中でなんとなくわかる部分もあるが、意外な展開に思える部分もある。有名な童話にちなんだ物語展開と心温まる顛末。子ども向けのおとぎ話のムードは、やがて涙腺を刺激する展開となる。そして明らかになる諸々の事実。不登校の子どもたちが、こんな風にして救われていったらと思わずにはいられない。

 著者は、気がつけば『ツナグ』の著者だとわかる。そう言えば『ツナグ』も「不思議系」の心温まる物語であり、本作にも通じるところがある。この手の「不思議系ハートウォーミングストーリー」が得意なのかもしれない。実際に学校に行けない子供が読んだら、ちょっとだけ勇気が出るかもしれないなんて思わせてくれる。

 優しく心に響く物語である・・・



posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 小説(長編ドラマ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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