2020年06月27日

【すごい物理学講義】カルロ・ロヴェッリ 読書日記1165



《目次》
はじめに―海辺を歩きながら
第1部 起源
第2部 革命の始まり
第3部 量子的な空間と相関的な時間
第4部 空間と時間を越えて

 著者はイタリアの物理学者。現代物理学界の第一人者らしいが、そんな物理学者による最新の物理学講義である。と言っても、難しさはあまり感じない。始まりはなんと2,600年前のギリシアにいきなり遡る。宇宙全体は終わりのない空っぽの空間から構成され、その中を無数の原子が行き交っていると唱えたのはデモクリトス。この本を読み終えてから、この説明を読むとなんとも言えない不思議な感覚に襲われる。なんでそんな考え方に行き着いたのだろう。

 続いてゼノンのアキレスと亀の有名なパラドクスが登場する。それを一本のロープを半分に切って行くことにたとえ、その矛盾を解説する。「無限の個数の時間を合計しても無限の時間が得られるとは限らない」という説明はなかなか面白い。そして時代を下り、プトレマイオス、コペルニクス、ケプラー、ガリレオそしてニュートンと天文学とともに物理学も発展する。そしてこの本では一貫して「世界は何からできているのか?」を歴史を追って解説していく。
 
 ニュートンはそれを「時間」「空間」「粒子」とする。ファラデーとマクスウェルはそれを「時間」「空間」「粒子」「場」とする。この「場」というのが少々分かりにくい。今日の物理学者は「量子重力理論」を研究しているが、その出発点となるのが「一般相対性理論」と「量子力学」。アインシュタインの一般相対性理論は何度読んでもなかなか難しい。ここでは「拡張された現在」という概念が説明される。

 「拡張された現在」とは、「過去でも未来でもない時間」とされる。例えば地球と火星での会話に15分のギャップがあるとして、火星で発した音声が地球に届くまでの15分がそれだという。この15分は過去でも未来でもない現在であるとする。これがアンドロメダ銀河との間となると、この時間が200万年となるというから、一見理解するのが難しい。一般相対性理論は「最も美しい理論」とされているが、その芸術性を理解できないのが悲しい。そしてアインシュタインは、世界を「時空間」と「場」と「粒子」から成るとする。

 重力で時間も空間も曲がるというのはこれまでも見聞きしている。光も屈曲し、高いところほど(重力の影響で)時間は早く過ぎる。アインシュタインは実は数学が苦手だったらしいが、苦労してリーマンの数学を習得し、方程式により宇宙全体を描写する。宇宙は有限であるが、同時に果てがない。それは球体をイメージすると分かりやすい。宇宙は三次元球体であり、実はこれはダンテが『神曲』で描いたものと同じ。空間は粒状の原子構造を持っていて、「宇宙空間は目に見えない頑丈な入れ物ではなく、巨大な軟体動物の中に浸っているようなもの」という話はちょっとショッキングである。

 量子論はこの反対に一気にミクロの世界の話となる。このあたりは『「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!』を読んでいたのでついていける。アインシュタインの光電効果を雹にたとえて解説する。車を凹ませるのは降る雹の総量ではなく、一粒あたりの寸法。ある元素を特徴づける振動数の総体をスペクトルという。それまで分離して理解されていた「場」と「粒子」の概念は、量子力学の中で1つになる。

 量子力学と一般相対性理論は、どちらも正しいが、双方は互いに矛盾するものなのだという。何度読んでも理屈はわからない。だが、この両者を結び付けようとするのが、著者が第一人者である「ループ量子重力理論」なのだという。重力の量子は時間の中で展開するのではなく、量子の相互作用の結果として時間が生じるという。ゆえに時間は存在しないのだとか。「世界は何からできているのか?」という問いは、ここに至りたった1つの「共変的量子場」という素材に収束する。

 ビッグバンにブラックホールとなるとホーキング博士の話が蘇る。ここでの解説もわかりやすい。「情報=起こりうる選択肢の数を計測したもの」「熱」「時間」・・・「ループ量子重力理論」の最有力候補が「超ひも理論」なのだとか。説明を聞いてもわかりにくいが、それでも著者の説明はわかりやすいと思う。読んだ瞬間はなんとなく理解できるが、ではそれを説明してみてと言われると難しい。難しいが、実に面白い。ますます物理の世界に引き込まれていく感じが心地よい。

 著者には、まだ他にも著作があるらしい。是非とも読んでみたいと思う。物理に対する知的好奇心をこれでもかと刺激してくれる一冊である・・・




posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 科学・化学・数学・物理学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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