2020年06月26日

【住まいから社会を変える】和田勇 読書日記1164



《目次》
第1部 私の履歴書
第2部 住環境は社会課題の中心にある
第3部 明日へ 未来へ

 著者は積水ハウスの社長、会長を歴任した方。日経新聞の「私の履歴書」をまとめ、プラスαを記したのが本書ということである。積水ハウスは、積水化学工業のハウス事業部を母体として設立された会社で、著者が入社したのは設立5年後で、まだ赤字の時分だったそうである。著者が入社してからの日々はそのまま積水ハウスの隆盛の日々であり、日本の住宅産業史としても面白く読める。

 和歌山で生まれ育った著者が、意気揚々と入社し配属されたのは右も左もわからぬ名古屋。しかし、配属初日に上司に「君は誰だ」と問われたという。まだ人事制度も定まっておらず、配属の連絡が行き届いていなかったらしい。何もすることがなく憂鬱な1週間を過ごすが、気持ちを改め営業の日々を送る。「自分で考え、足で稼げ」とのアドバイスが著者の心の芯に座る。世は戦後の住宅不足解消が国策となり、追い風が吹いていたとはいえ新興のプレハブメーカーの営業は大変だったようである。

 特に大きかったのは、工事力不足。材料はあっても施工してくれる工務店がない。在来工法が主流であり、プレハブは後回しにされたのだという。せっかく成約したのに着工が遅れ、お客様に叱られる。毎日通って正直に状況を報告したという。こういう経験を積み重ねたからだろう「協力工事店は運命共同体」という意識を強く持ち、お客様の満足を第一に考えるスタンスが身についていく。

 入社3年目で全国第1位の販売実績を収めたという。個人的に仕事で必要なのは何より「考え方」であり、「情熱(パッション)」であり「創意工夫」だと考えているが、著者はいずれも備えている。今でも展開されている賃貸住宅の「シャーメゾン」シリーズは、本社に無断で商品開発したという。完成して引き渡して終わりではなく、そこからお客様との長い関係が始まる。クレーム探しに本格的に取り組んだのも著者だという。出世するわけである。

 何より大事なのは「損得を超えた人間関係の構築」だというが、これは真実だと思う。人との出会いに大きな価値があるというのも苦手な自分には耳が痛い。後半は、日本の住宅産業に対する思いが語られる。日本再生の鍵は環境技術だという。それはモノを大切にする技術であり、これに住環境を加えれば日本の強力な輸出産業になるという。「生涯住宅」という考え方は不動産業に携わる自分にもいいヒントになる。

 良質な住宅は社会のストックだというのはその通りだと思う。ペットたちと快適に同居できる家づくり、家に癒され、大家族が平和に暮らす家。国が1つにまとまれば国力も経済力も強まるとする。タイトルに込められた思いが溢れている。著者が大事にしているキーワードはやはり「パッション」だという。それも納得。ビジネスマンとして何が必要なのかと問われたら、その答えがほとんど書かれている。ビジネスマンなら、一読の価値ある一冊である・・・







posted by HH at 00:00| 東京 ☔| Comment(0) | ビジネス/経営者の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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