2019年11月22日

【哲学と宗教全史】出口 治明 読書日記1095



《目次》
はじめに──なぜ、今、哲学と宗教なのか?
第1章──宗教が誕生するまで
第2章──世界最古のゾロアスター教がその後の宗教に残したこと
第3章──哲学の誕生、それは“知の爆発"から始まった
第4章──ソクラテス、プラトン、アリストテレス
第5章──孔子、墨子、ブッダ、マハーヴィーラ
第6章(1)──ヘレニズム時代にギリシャの哲学や宗教はどのような変化を遂げたか
第6章(2)──ヘレニズム時代に中国では諸子百家の全盛期が訪れた
第6章(3)──ヘレニズム時代に旧約聖書が完成して、ユダヤ教が始まった
第6章(4)──ギリシャ王が仏教徒になった?ヘレニズム時代を象徴する『ミリンダ王の問い』
第7章──キリスト教と大乗仏教の誕生とその展開
第8章(1)──イスラーム教とは? その誕生・発展・挫折の歴史
第8章(2)──イスラーム教にはギリシャ哲学を継承し発展させた歴史がある
第8章(3)──イスラーム神学とトマス・アクィナスのキリスト教神学との関係
第8章(4)──仏教と儒教の変貌
第9章──ルネサンスと宗教改革を経て哲学は近代の合理性の世界へ
第10章──近代から現代へ。世界史の大きな転換期に登場した哲学者たち
第11章──19世紀の終わり、哲学の新潮流をヘーゲルの「3人の子ども」が形成した
第12章──20世紀の思想界に波紋の石を投げ込んだ5人

 タイトルはわかりやすくそのものズバリ。著者はライフネット生命の創業者で、最近はこの手の歴史関係の著作を多数手がけている方。多分、著作業が最後の「本業」なのかもしれない。そんな大著の始まりは、人類がはるか昔から抱いてきた問いかけから始まる。すなわち、
  1. 世界はどうしてできたのか、また世界は何でできているのか?
  2. 人類はどこからきてどこへ行くのか、なんのために生きているのか?
非常に大きな問いかけであると思う。これを今の知識で簡単に答えてしまうのは何か違う気がする。

 本書は世界最古の宗教ゾロアスター教から始まる。その昔、高校の授業で習ったような記憶がある程度。それを改めて丁寧に簡単に説明してくれる。善悪二元論と最後の審判。なんとなく馴染みがあるのは、ゾロアスター教がのちにユダヤ教、キリスト教、イスラーム教に多大な影響を与えているからである。代々受け継がれていくうちに混ざり合っていったのだろうと素人でもわかる。

 日々、生き残るのに精一杯だった時代を経て、生産性が向上し、有産階級が生まれてくる。奴隷に労働をさせて働かなくなった有産階級から知識人や芸術家が生まれる。それが人類の知識的発展史であるが、現代人としてはなんとも言えない感覚を覚える。そしてギリシャでは特にそれが顕著であり、タレスが哲学の祖となる。こうして「知の爆発」が起こるが、それはギリシャだけではなく、インドと中国でも同様である。

 ギリシャではソクラテス、プラトン、アリストテレスが登場する。中国では孔子、老子、墨子、インドではブッダにマハーヴィーラ。名前だけは覚えている。それでも改めてその思想を簡単に説明されると興味が湧いてくる。アリストテレスの『ニコマコス倫理学』や『形而上学』、『墨子』などは今度読んでみたいと思わされる。

 中には間違って記憶していたのもある。「性善説」と「性悪説」は互いに相対するものだと思っていたが、実はそうではなくて、社会を構成する別々の階層について言及したものであったと教えられる。性善説は理解力のある教養高い上流階級の人々のことで、性悪説は下層の労働者階級の人々のこと。そうした知識の補完修正がなんとなくできていく。中国諸子百家の思想も興味深い。

 キリスト教も拡大していくが、その中で解釈が様々生まれ、公会議が幾度となく開催される。イスラム教は専従者がなく、個々が信仰を全うする。クルアーンは何人であろうとすべてアラビア語で理解されなければならず、「翻訳」という概念がだからない。一夫多妻制は夫を失った妻は生きていくことができなかったことから生まれた制度であること。現代につながるそんな諸々の知識も興味深い。

 イスラム帝国がササーン朝ペルシャを征服したことで、ササーン朝が有していたギリシャ、ローマの古典がアラブ世界に取り入れられる。それがアラブに新しい知識をもたらし、それが今度はヨーロッパに伝わってルネッサンスになる。プラトンやアリストテレスが大事に受け継がれていったのは、改めて不思議な気がする。

 人間が何千年という長い時間の中で、よりよく生きるために、また死の恐怖から逃れるために必死に考えてきたことの結晶が哲学と宗教の歴史だという著者の解説は素直に頷ける。手に重たい大著であるが、そうした人類の哲学と宗教を解説するにはむしろ薄い本だと言えるかもしれない。いわば「ダイジェスト版」ではあるが、各々について簡単に理解するには大いに参考になる。個人的には中国の古典とアリストテレスの思想、そしてヨーロッパの近代の思想には改めて興味をそそられたところである。

 ざっと理解し、個々の興味を惹かれたところについて改めて専門書を手に取るきっかけとするにはいいかもしれない。そんな風に興味を深めていける大著である・・・
 



posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | 人生論・哲学・生き方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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