2018年07月06日

【教養としてのテクノロジー AI、仮想通貨、ブロックチェーン】伊藤穣一/アンドレー・ウール 読書日記936



第1章 「AI」は「労働」をどう変えるのか?
第2章 「仮想通貨」は「国家」をどう変えるのか?
第3章 「ブロックチェーン」は「資本主義」をどう変えるのか?
第4章 「人間」はどう変わるか?
第5章 「教育」はどう変わるか?
第6章 「日本人」はどう変わるべきか?
第7章 「日本」はムーブメントを起こせるのか?

著者はMITメディアラボの所長(及び研究員)だとのこと。どういうラボなのかはよくわからないが、興味のあるところである。そんな著者が、これまで教養と呼ばれてきたレベルでテクノロジーについて本質的な理解が必要になったとして記したのが本書。全体を大きく3つのパート(「経済」「社会」「日本」)に分け、それぞれをまた「労働」「国家」「資本主義」(以上「経済」)、「人間」「教育」(同「社会」)、そして「日本人」「日本」(同「日本」)に分けて分類されている。

はじめの「経済」のパートでは、「労働」のところで「働くとは」が問われる。「AIは労働を代替するのか」などは興味深いところではあるが、単なるシナリオを述べるのではなく、「人間はお金だけのために働くのではない」「人生の意味(meaning of life)は」などという哲学的な話も出てくる。そしてここでも「ユニバーサル・ベーシック・インカム」が説かれていて、これは将来実現するのかもしれないと思ってみたりする。自分の生き方の価値を高めるためにどう働けばいいのか、ただ漫然と働くのではなく、ちょっと考えてみたいところである。

新たなテクノロジーという意味では、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)という資金調達手段が興味深いものであった。これは仮想通貨を利用したもので、その企業が提供するサービスで使える「トークン」を買ってもらうことで、その代金をもって資金調達と為すものらしい。著者によれば、企業が倒産すれば意味はなくなるものであるから、「最終的に損する被害者がいる仕組み」であるのが問題としているが、仕組みとして知っておきたいと思うところである。

今話題の自動運転では、「倫理」との絡みの議論が興味深いところである。すなわち、「トロッコ問題」というサンデル教授が議論として採り上げていた(『これからの正義の話をしよう』)問題であるが、例えば親子2人が飛び出してきた際、ハンドルを切って電柱に衝突する(ドライバーを犠牲にする)か、そのままはねるか(親子を犠牲にする)となった場合、どうするか。結論はともかく、そうした問題をどう解決していくのかは面白いところだと思う。

東京にミシュランの星付きのレストランが世界一多い事実を捉え、著者はその理由を「お金や利益ばかり考えているレストランは星を取れない」からとしている。日本ではオーナーやシェフが自分のやりたいことをしていて、そもそもお客さんからなるべく大きな利益を取ろうとしていないためではないかと推論する。それも一理あるように思う。

そうした職人にこだわりのある日本だが、サラリーマンにはそのこだわりがないとする。例えば建売住宅では、デザインに対するこだわりが感じられないとするが、言われてみればそういう例が多いと思う。それは社会として、イノベーションよりプロセスを重視するからではないかとするが、そうなのかもしれない。

なんとなく最後はテクノロジーから離れていってしまった感はあるが、いろいろと考えるいいヒントになることが並んでいるのは確かである。ただ漫然と生活のために働くのではなく、社会の動きとその抱える問題に常に興味を持っていたいと思うが、そんな人には一読の価値ある一冊である・・・



posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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