2019年12月02日

【日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義】デービッド・アトキンソン 読書日記1098



《目次》
第1章 人口減少を直視せよ――今という「最後のチャンス」を逃すな
第2章 資本主義をアップデートせよ――「高付加価値・高所得経済」への転換
第3章 海外市場を目指せ――日本は「輸出できるもの」の宝庫だ
第4章 企業規模を拡大せよ――「日本人の底力」は大企業でこそ生きる
第5章 最低賃金を引き上げよ――「正当な評価」は人を動かす
第6章 生産性を高めよ――日本は「賃上げショック」で生まれ変わる
第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよ――「大人の学び」は制度で増やせる

 著者は、元ゴールドマン・サックス証券のエコノミストであり、現小西美術工藝社社長。これまでも『新・所得倍増論 潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋』をはじめとして、日本経済に対する提言を発表しているが、この本もまたそれに連なる一冊である。元エコノミストらしく、海外のエコノミスト118人の論文を読破し、それらの分析結果を日本の実情に合わせて考察したのが本書だと言う。

 日本で現在起きているパラダイムシフトは、「人口減少」と「高齢化」。このままでは日本に勝算はなく、必要なのはこれまでの常識にとらわれない考え方だとする。人口減少は不動産価格の下落をもたらし、物価全体に大きな影響を与える。これが最大のデフレ要因であるが、これ以外にも少子高齢化、政治要因、産業構造の変化等様々な要因がデフレ圧力となる。もはや金融政策の効果もなくなると言う。それは、同じ人であっても年齢が高まれば需要は減るものであるし、当然の結果だとする。なるほど、理屈はよくわかる。

 これまでも語られているが、日本はGDP総額世界3位といっても、それは人口ボーナスによるもの。それが証拠に一人当たりでは28位にまで落ちてしまう。それゆえに、著者はこれまでにも増して「生産性の向上」が不可欠だと説く。なぜ日本はこれほど生産性が低いのか。著者はそれを具体的に説明してくれる。生産性の向上には国としては輸出増が効果があるとする。それも中間財(中間財は輸出先の生産性向上に貢献するだけ)ではなく最終消費財である。

 日本の生産性が低い理由として、個人的になるほどと思ったのは、「日本には中小企業が多い」ということ。実は、内訳を見ていくと、個人ベースでは大企業では生産性はそれほど低くはないのだとか。中小企業こそ生産性の向上が必要であり、著者は最も効果の高い方法として「中小企業の規模拡大」と「最低賃金の引き上げ」を主張する。大企業の生産性が高くて中小企業が低いと言う理屈は、「下請けにしわ寄せしている」と考えれば理解しやすい。合併等によって規模を拡大すれば、それを防いで給料も上げられると言うことである。

 読んでいて、なるほどと思う反面、やっぱりよく理解できないところもある。そもそも生産性とは、と調べてみると、「労働生産性」については、「付加価値/社員数」ということのよう。付加価値とは、粗利益=限界利益。つまり、より少ない人数で多くの粗利を稼ぐということが生産性の向上につながると言える。中小企業は取引先の大企業に叩かれて粗利を抑えられ、一方で日本は雇用が守られているから労働者が減らせないというカルチャー面でも理由もあるのかもしれない。

 しかし、それは「物価」とどう関係するのかという疑問もある。1つの比較指標として「ビックマック指数」が挙げられている。日本のビックマックは途上国並みに安く、その理由は「最低賃金が低いから」としている。しかし、値段の高いビックマックと安いビックマックのどちらがいいかと問われれば、消費者としては安い方である。生産性が向上して、結果として給料が上がったとして、それで物価が上がれば「元も子もない」気がする。

 著者はこの本で以下の主張を展開する。
1. 高生産性、高所得資本主義を実施
2. 企業規模拡大を促す統合促進政策
3. 最低賃金の継続的な引き上げ
これから日本は「人手不足」が本格化してくる。安易な安い移民にシフトするのは愚策だというのはその通りだと思う。「人が足りないのなら人をより効率的に使う仕組みを作れば良い」と言うのもその通り。ただ、その方法論として、著者が主張することが正しいのかどうか、残念ながら素人の私にはよくわからない。ただ、これからいろいろ考えていく上で、1つの示唆に富む意見だと思う。

 頭の片隅にとどめておきたい一冊である・・・
 

posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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