2019年12月12日

【時短の科学−非製造業の生産性向上を初めて体系化!−】内藤 耕 読書日記1103



《目次》

第一章   なぜサービス業では時短が進まないのか
第二章   生産性が上がり、時短が進む方法
第三章   サービス業の生産性はどこまで高められるか
おわりに

 世の中は「働き方改革」の掛け声が勇ましいが、中小企業ではなかなかそうも言っていられない。「残業削減」は、「働き方改革」の面でも「人件費負担軽減」の面でも会社の至上命題になっているが、一方でお客様に迷惑はかけられない。その板挟みとなった従業員は、「サービス残業」に走らざるを得ない。この本は、そんな状況を少しでも改善するべく、時短を進めながら売上や利益を伸ばして成長し、従業員は収入を増やし、お客はより良い商品やサービスを得ることを考えた一冊。
 
 人口減少社会において、生産性の向上はあちこちで叫ばれている(『日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義』)。中でも特にサービス業での生産性の向上が必須であると著者は説く。しかし、サービス業で生産性向上が難しいのは、製造業と比べサービス業では、在庫が不可能であることがその最大の違い。ラーメンを速く作るだけでは限界があるのである。ここで「生産性(労働生産性)」とは、「付加価値」➗「労働投入量」と定義されている。「付加価値」と「労働投入量」は一見、二律背反の関係に見えるが、実はそうではなく、独立した関係だとする。

 まず、大半の会社は適切な人員配置、シフト管理ができていないとする。ここで具体例としてあげられているのが、かつては 「地獄の白菊」と呼ばれた「ホテル白菊」。残業が多く、年間休日数も少ないという典型例。朝食バイキングの提供方法を変えることに象徴される改革で、わずか1年で残業時間は月数時間に減少し、年間休日数も大幅に増加。さらに顧客満足の向上で客単価もアップしたという。これほど劇的な変化だと気持ちもいいだろうと思う。

 世に言う「人手不足」は生産性が低い証拠だとする。何でも闇雲にやるのではなく、「お客様の求めていないことはすべてやめる代わりに求めていることはすべてやる」と言う徹底も必要。著者は、リアルタイム・サービス法こそ生産性向上の鍵だとする。これはお客の流れに合わせてスタッフを移動させるというもので、考えてみれば理にかなっている。そしてこれを可能にするのがマルチタスク化である。

 こうした改善に取り掛かるにあたり、現状把握として、「プロット分析」「業務・人員推移グラフ」などを利用する。ここで関心を向けなければいけないのは、「忙しい時間でなく、ひまな時間」。これは素人的にはなかなか思いつかないと思う。残業時間の削減は後回しにして、人員配置の無駄をなくすことから始める。リアルタイム・サービス法とは、「必要な時」に「必要な人数」が「必要な場所」にいるシフトを実現することである。

 個人的には理論もいいのであるが、やはり具体例に勝るものはない。例えば、作り置き料理をやめた大型旅館の例。「一度に大量に作る」ためには「営業開始の3時間前から大人数で調理」していたが、「こまめに注文量を作る」体制にシフトしたことにより、「営業が始まってから少人数で調理」できるようになったという。「小ロット化」と「マルチタスク化」の具体例がよくわかる。

 打つべき手は「やりたいこと」「できること」「やらねばならぬこと」という3つの中に必ずあるとする。通常、「戦略」→「戦術」→「実行」という流れになるが、まず「やらなければならないこと」をやり遂げ、中でも「できること」を優先して行い、最後に「やりたいこと」をやるという逆の流れ、すなわち、「制約条件から戦術を生み出す」ことが大事という考え方も、はたと気づきを与えてくれる。  

 今の仕事は特にここで改善例として採り上げられているような時短が必要な状況ではない。関係ないと言えば関係ないが、それでもこうした考え方を知っておく事は何かの参考にはなると思う。ましてや、同じようにサービス残業が常態化しているような会社であればなおさらであろう。「サービス品質を上げる」ということでも大いにヒントが得られる一冊である・・・





posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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