2018年07月20日

【遅刻してくれて、ありがとう−常識が通じない時代の生き方−】トーマス・フリードマン 読書日記938



原題:Thank You for Being Late:An Optimist’s Guide to Thriving in the Age of Accelerations Version 2.0

Part 1 熟考 REFLECTING
Part 2 加速 ACCELERATING
Part 3 イノベーティング INOVATING
Part 4 根を下ろす

著者は、ピューリッツァー賞受賞の著名なジャーナリスト。ニューヨークタイムズで週2回コラムを書いていたらしいが、その「回転木馬を降りて歴史の根本的な転換点にいることの意味をもっと深く考えよう」として記したのが本書。しばし、待ち合わせで相手が遅れて来ると、思いもかけず自分の時間を作ることができて感謝の気持ちが湧くらしいが、それがこの本の奇妙なタイトルの所以。何事もポジティブに捉えたいものだと思わされる。

全体は4部構成。Part1については、「心から出たことは心に入る。自分の心から出なかったことは他人の心に入らない」という言葉が端的に表している。Part2は、「現在のマシーンの働きについてどう考えるか」。Part3は、「テクノロジーやグローバリゼーションや気候変動などの加速する力が人々や文化にどう影響しているか」。Part4は、「すべてから導き出した結論」としている。全2巻の分厚い本だが、全米ベストセラーというもので、アメリカ人もこういう本を読む人が多いと知って無関心ではいられない。

まずは「ムーアの法則」について語られるが、もう生まれてから50年経つらしいが、この法則は今だに有効だとする。テクノロジーが幾何級数的な速さで加速し続けている。特に2007年はスティーブ・ジョブズがiPhoneを世に発表した年であるが、そのほかにも様々な技術、企業、サービスが誕生していて、エポックメイキングな年であるようである。著者はクラウドを「スーパーノバ(超新星)」と称してその進化のすごさを述べる。これらに母なる自然が加えたものが、2007年以降の加速の時代の原動力となる。

そのうちスーパーノバが最も目に見える形で現れていると思う。
1. 医療への応用では、画像診断や症例検索等により医師をサポートし、医師は患者への対応に専念できる。
2. 中国の物乞いはスマホでQRコードをスキャンするモバイルペイメントで施しに応じる
3. Airbnb、ウーバーらのシェアリングエコノミー
挙げればきりがないほどであるが、個人的にはそうした「進化」にワクワク感を感じる。しかし、一方で環境への4つの大きな問題には背筋が寒くなる。それは、「地球温暖化」、「森林破壊」、「海水の酸性化」、「生物多様性の消滅」である。

さらに2050年に97億人に達すると言われている人口増加は、少子化問題を抱える我が国とは対照的で、「女性が20人の子供を産んでその20人がすべて生きて子供を20人産めば孫が400人になる」という喩えは笑い話では済まない。そんな発展途上国と対照的に、先進国では労働者がほとんどいない工場での製造が可能になる。ISISを産んだ要因の1つは、間違いなく北アフリカと中東においてこの50年で人口が3倍になったことであるということも、暗澹とした気持ちにさせてくれる。

さらにポスト冷戦後、何が従来と異なるのか、著者は思考を巡らせていく。「ムーアの法則」「市場」「母なる自然」は国際関係を作り直していく。アメリカと国際社会は地政学的な安定をどうやってもたらすか。ソ連が崩壊したとは言え、跡を継いだロシアは国家としての安定が何よりも求められており、中国の崩壊は世界経済に深刻な打撃を与えうる。そこには「高度な相互依存関係」がある。

変化する現在の環境で、レジリエンスを創出する上でかつてなく必要不可欠となっているのは、「多様性」だと著者は説く。その例を母なる自然に求め、単一栽培よりも混合栽培のほうが自然の抵抗力が増すとする。当事者意識の文化の促進も重要で、それは「レンタカーを洗車する者はいない」と喩える。当事者意識による自力推進こそが、レジリエンスの重要な構成要素だとする。

相互依存関係の強まる世界で何が必要となるのか。それは破壊力ではなく、建設力。人類という1つの集団の仲間であると捉え、コミュニティが大切であるとする。そのコミュニティの見本として挙げるのが、著者が育ったミネソタ州のセントルイスパーク。モンデール副大統領をはじめとして様々な著名人を生み、多様性が育まれたところだとして紹介する。強力なコミュニティのみがアメリカを再び偉大にするという。多様性という部分では、我が国はちょっと心もとないかもしれない。

上下巻に渡る著者の長い思考の旅は、現代の様々な問題を採り上げていて、読んでいて考えさせられるところ大である。みんなが考えなければならないことだとも思う。分厚い本であるが、頑張って読む価値はある。自分でも世の中の問題について、もっともっと関心を持って眺め、考えていきたいと思わされる一冊である・・・




posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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