2019年02月12日

【魔力の胎動】東野圭吾 読書日記999



第1章 あの風に向かって翔べ
第2章 この手で魔球を
第3章 その流れの行方は
第4章 どの道で迷っていようとも
第5章 魔力の胎動

 新作が出れば必ず読むことにしている東野圭吾作品。第1章を読み始めて何となく既視感にとらわれる。「竜巻で母娘が巻き込まれる」「自然(風)を読む不思議な女性」等。そしてこれは『ラプラスの魔女』の続編か何かだろうと気づく。事前に予備知識を持たないで読むようにしてるから、こういう気づきが楽しい。そしてあとで続編ではなく、「前日譚」だとわかる。これはこれで面白い。

 第1章は全盛期を過ぎ、引退を考えるスキージャンパー坂屋が最後の大会に臨むもの。鍼灸師のナユタが呼ばれて施術に当たる。ナユタはついでにと試合結果の解析に立ち会う。訪れた流体工学研究室で1人の若い女性羽原円華と知り合う。坂屋に興味を抱いた円華は、ナユタの泊まるホテルに押し掛けそのまま坂屋の試合に付きそう。満身創痍の坂屋に奇跡の風でも吹かない限り勝機はないと見られていたが、円華は「私の合図で翔べ」と主張する。

 第2章は一転して野球の話。ふとしたことからナックルを投げ始めたプロ野球投手。ナックルは投げた投手もどこに行くかわからない魔球。打者も打ちにくいが捕手も取りにくいという難点がある。引退を考えた捕手の三浦は、ナックルを補給できる捕手を育成しようと、目をかけている後輩山東に白羽の矢を当てる。しかし、山東は試合中のミスがきっかけてナックルが捕球できなくなる。

 第3章は河原に来ていた夫婦が、事故で子供を溺れさせてしまう。命は助かったものの、子供は植物状態に陥ってしまう。川に流された子供を助けようとした妻を夫は止めたが、助けられなかった妻は心のどこかで夫を責めている。夫も妻を止めたのが良かったのか今も自問自答する。子供は唯一、円華の父による手術によって回復する可能性もあるが、それには夫婦の同意が必要。夫は病院に行かず、毎週事故のあった川原に通っていて同意を得る機会が持てない。

 いずれも風や川の流れを読む円華の不思議な力が解決をもたらす。いずれのケースもナユタの身の回りの関係者の話。第4章はゲイである音楽家の話。実はナユタは、『ラプラスの魔女』でも登場した天才映画監督甘粕の作品に出演したことがある。それはゲイにまつわる映画であり、ナユタの人生に大きな影響を与えた映画でもある。そんなナユタは円華とともに音楽家のパートナーの突然の山での死について調べて行く。
 
 第5章は赤熊温泉で硫化水素による中毒事故が発生する。県警から依頼を受けて調査に臨むのは、『ラプラスの魔女』にも登場した専門家の青江。赤熊温泉での硫化水素による家族3人の死亡事故は『ラプラスの魔女』でも出てきたが、ここではその詳細が語られる。円華もナユタも出てこない。これはこれで面白い。

 東野圭吾作品の持ち味は、どちらかと言えばミステリーにある。推理が絡んだりするのが個人的には好きであり、「不思議系」に分類される『ラプラスの魔女』の前日譚と言ってもそれほどの感動はないのは確かである。それはともかくとして、これはこれで楽しみたい一冊である・・・



posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 有川浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: