2009年11月22日

【金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか】ローレンス・マクドナルド+パトリック・ロビンソン

2008年9月15日。
創業158年を誇るリーマン・ブラザーズが世界最大の負債を負って倒産する。
その衝撃波は、アメリカ国内はもとより世界中に伝播する。
今なお「リーマン・ショック」という言葉で語られ、その傷跡が各国に生々しく残っている事件である。

その世界最大の倒産劇を、元リーマン社員であった著者が語ったのが本書である。
何気なく手に取ったのだが、ぐいぐいと中に吸い寄せられるようにして読みきってしまった。
内容的にも興味深く、読み物としてもまた一級品に面白い。

前半は著者の出世物語。
金融界を志すものの、当時は大手有名大学出身でなければウォールストリートデビューなど夢のまた夢。
無名大学出身の著者マクドナルド氏は、入社希望の手紙を数十通送るがすべてだめ。
営業ができれば、とアドバイスを受けてポークチョップの営業マンからスタートする。
そして3流証券会社に足場を得て、会社を経営し、ついにリーマン・ブラザーズの一員となる。
その成功物語が前半の見所。
これはこれで面白い。

そしてやがてサブプライム・ローン問題として世界経済に大打撃を与える事になる出来事の成り立ちを解説してくれる。
クリントン政権下で、貧しい人々に住宅をという動きが起こる。
銀行と証券の垣根を作ってきたグラス・スティーガル法が廃止される。
そんな動きが後々大問題になるなどとは誰も想像できない。

そして、融資の常識を無視した住宅ローンが登場し、目先の利益のみを追う住宅ローン会社と営業マンが見境もなくそれを売って行く。
3年後には金利が跳ね上がるローン(400ドルの返済額が2,000ドル〜2,500ドルへと増額される)、30万ドルの家を購入する時に33万ドルのローンを組む(頭金なしで家を取得しさらに現金3万ドルがプレゼントされる)というローンタイプもあったというから無茶苦茶だ。
さらにそれを字の読めない(したがって契約書も読めない)人にも貸していったという。
そしてローン会社はその債権を証券化し、リーマンらの投資銀行がそれを買い取って世界中に販売して行く・・・

驚くべき事にリーマンの内部には早くからその危険性に気付いた人々がいて警鐘を鳴らしていた。
2006年の時点ですでにデルタ航空の破綻とGMの破綻を予測していた人々がちゃんといたのである。
GMについては、「あれは自動車メーカーじゃない、副業で車を作っている福利厚生施設だ」と断言しているのである。

だが、そうした理性的な声は経営陣に届かない。
幾度となく続いた警告はすべて無視され、有能な人々が次々と愛想をつかして去っていく。
そうした崩壊への道のりを著者は絶望的な眼差しで見つめていく。

そうした記述からわかる事は、リーマンの破綻はまさに経営陣によってミスリードされた人災であった事がわかる。
サブプライム問題の本質、世界最大の倒産劇のリアルストーリー。
起こるべくして起こってしまった問題をこれほど面白く読ませてくれるものはないかもしれない。
一読の価値は十分にある一冊である。


金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか

金融大狂乱 リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか

  • 作者: ローレンス・マクドナルド
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2009/09/17
  • メディア: 単行本



posted by HH at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック