2010年01月26日

【永遠の0】百田尚樹 読書日記35


永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/07/15
  • メディア: 文庫



     
0とは太平洋戦争で名を馳せた旧帝国海軍の戦闘機零戦(正式名零式艦上戦闘機)、通称ゼロ戦の事である。
一人の零戦パイロットの足跡を辿る事で、一人の男とそして戦争を振り返る物語である。

二人の姉弟、慶子と健太郎はフリーライターの姉の企画で、太平洋戦争で戦死した祖父を調べる事になる。
その祖父は妻子を残して戦場へ行き、特攻で戦死したのである。
戦後再婚した祖母は、その祖父の事をほとんど語らぬまま亡くなったため、二人は手さぐりで名前しかわからない祖父の調査を始める。

旧海軍人会から紹介された祖父のかつての戦友たちを訪ね歩く二人。
そして戦友たちの口を通して太平洋戦史が語られていく。
真珠湾、ミッドウェー、ガタルカナル、ラバウル、そして沖縄。
それは馴染みのある戦史であるが、一人の男の背後に流れるそれは実にリアルな感がある。

開戦当初は世界最高の戦闘機として無敵を誇った零戦。
ところが次第に米軍も物量にモノを言わせて反攻に移る。
そして差があるのは物量だけではなく、兵士に対する思想。
防弾板に守られた米軍機は撃墜されても兵士の生還率が高く、再び空へと復帰し、やがて熟練パイロットへと育っていく。
かたや防弾装備を削り徹底して攻撃力に重きを置いた零戦は、一度撃墜されればそれまで。
物量と共にパイロットの熟練度でも差がついていく・・・

ガダルカナル、インパール、硫黄島とすべて実際の戦闘による死者よりも自害・餓死などの死者が上回っているという事実。
「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓に縛られ、死ぬ事のみ求められた兵士たち。
試験の優等生がそのまま出世していく軍のシステムが、マニュアルにない状況に脆く、自分の考えが絶対だと妄信するエリート軍人を育てていく。

戦争末期には志願という名の命令で次々と未熟なパイロットが特攻で命を落としていく。
その頃には米軍も圧倒的な防空戦闘機と正確な対空砲火で特攻もほとんど効果なく途中で撃墜されてしまう。
最後まで残っていた戦艦大和も無謀な特攻作戦へと向わせられる。
ただ死ぬ事だけを目的とした作戦の数々を、「素人の賭け事」に例える。
「勝ってる時はちびちび小出しして大勝ちできるチャンスを逃し、それで今度はジリ貧になって、負け出すと頭に来て一気に勝負」
言い得て妙である。

戦史というノンフィクションと一人の祖父の物語としてのフィクションとが織りなすストーリーは、時折目頭が熱くなるほど秀逸。
26歳で死んだ祖父と同じ年齢の健太郎の心の変化も見逃せない。
そして感動的なラスト。
涙なくしては読めない。

作者はこれがデビューだという。
圧倒的な迫力に近年にない感動を覚える。
これから他の本もフォローしていきたいと思わされる一冊である・・・



posted by HH at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 百田尚樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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