2010年08月22日

【デカルト方法序説を読む】谷川多佳子

デカルトと言えば、「方法序説」。
そして「コギト・エルゴ・スム(我考える、ゆえに我あり)」。
それはあまりにも有名であるが、その「方法序説」について行われたセミナーを一冊にまとめたのが本書である。
したがって、そのセミナーを受けているような感覚でこの本を読み進めていく形となる。

「方法序説」は、その名の通りの「序文」であり、全体は「屈折光学」「気象学」「幾何学」という大きな本である。
つまり、本体は別にあったわけであり、にも関わらず序文の方が有名になってしまい、あの世でデカルトはどんな気分なんだろうと思わざるを得ない。

そして幾何学では、デカルトは大きな功績を残している。
それまでは代数記号はややこしく、複雑なラテン語であらわされていたという。
それをデカルトが、未知数を「x,y,z」、既知数を「a,b,c,・・・」とあらわすようにし、さらに「2×X×X×X」を「2X3」と表記するようにしたのだという。
それまでは「2A cubus」と表記していたらしいから、これは新鮮な驚きである。

そんな発見を楽しむ一方、講義はデカルトの生涯を紹介しながら進んで行く。
その時代背景も重要な要素である。
時にデカルトは「世界論」という光や宇宙、そして人間の身体について大きな構想をもってまとめた本を出版しようとしていたという。
ところが、ガリレオが宗教裁判を受けるという歴史上の大事件が起こり、下手をすると火あぶりになるというリスクから出版を見合わせる事になる。

そんな時代の下、「方法序説」は6部構成で書かれる。
第一部の冒頭の文章、「良識はこの世でもっとも公平に分け与えられている」という言葉は有名で、人権宣言や独立宣言にもつながったらしい。
ここでの「良識」は「真と偽を区別する能力」という意味だという。
こうした用語と使い方が哲学を難しくさせている理由なのであるが、幸いこの本ではわかりやすく解説されている。

「方法序説」は旅に出たデカルトが、日記風にまとめていったもの。
そしてその中で考えをまとめていく。
「コギト・エルゴ・スム」は第4部に出てくる。
一緒に出てくる神の存在証明は、興味深いものの、その証明方法には疑問符がつく。
「考える事が世界のあるなしに関わらず、私の存在を証明する」と結論付けるわけであるが、そうして疑う自分自身の考えももっと完全なるものがあって、そこから来ていると言い、それが「完全なるもの=神」だと言う。
ここはあまり理解できない。

哲学も正面から取り組むと難解だ。
しかしながらこうした専門の研究者が解説してくれるものはわかりやすい。
また昔のようにいろいろと哲学系の本を読んでみようかな。
そんな気にさせられた一冊である・・・


デカルト『方法序説』を読む (岩波セミナーブックス)

デカルト『方法序説』を読む (岩波セミナーブックス)

  • 作者: 谷川 多佳子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 単行本



posted by HH at 11:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 人生・哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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