2010年08月24日

【リング】百田尚樹 読書日記95


リング

リング

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2010/05/07
  • メディア: 単行本


   
「永遠の0」の作者百田直樹による最新作。
わりと早いペースで出版されているのは誠に嬉しい限りである。

タイトルにある「リング」はボクシングのリングの事。けっして怖い方ではない。
ボクシングと言えばなんと言っても大傑作 「BOX!」があるが、これもそんなボクシングストーリーかと思ったらちょっと違う。ファイティング原田を中心とした、言ってみれば日本ボクシング史とも言えるノンフィクションである。

「永遠の0」では、太平洋戦史が背景で語られ、おかげで読み終わったらすっかり太平洋戦史に詳しくなってしまっていた。さらに 「風の中のマリア」ではオオスズメバチの専門家になれてしまった。背景をきちんと語ってくれるのが百田直樹流であり、この本でも当然日本ボクシング史に明るくなってしまった事は言うまでもない。

日本のボクシング界で初めて世界チャンピオンになったのは白井義男である事は誰でも知っている。しかし、その白井を見出したアメリカ人のカーン博士との二人三脚の事は知らなかったし、白井以降ファイティング原田まで8年も世界タイトルから日本勢が遠ざかっていた事も知らなかった。今では4団体17階級が存在し、世界チャンピオンは70人近くいる。しかし、当時は1団体8階級しかなく、したがって世界チャンピオンは8人しかいなかったという。チャンピオンの重みも違ったのである。

白井義男以降に現れたボクサー達の挑戦の歴史も面白い。
そこには実力だけではなく、また運も必要だった事がわかる。
悪しき習慣もあり歴史に埋もれていった悲運なボクサーも多かった事がわかる。
そんな中で登場したファイティング原田はとにかくすさまじい練習をこなしたらしい。
16歳でデヴューし、取材していた記者さえも倒れるほどの環境下での猛練習。
そして偉大なチャンピオン達との戦い。

女はマイナスになると信じて引退後の27歳まで童貞だったというエピソードも凄い。海外での評価も高く、日本人ボクサーとしてただ一人アメリカのボクシング殿堂入りしている。「ファイティング」というリングネームは、日本ボクシングコミッショナーから他の者が使用する事は禁止とされている。長嶋茂雄の背番号3と同じ扱いだ。マイク・タイソンもそのファイトスタイルを参考にしたというし、名前は知っていてもこんな凄い選手だったとはまるでイメージしていなかった。

当時の視聴率は常に紅白歌合戦に次いで2番目で、50%を越えていたというし、日本中の熱狂と歓声が行間を通して伝わってくるようである。
こうしたノンフィクションでも百田直樹の作品は引き込まれる何かを持っている。
これからも読み続けたい作家だ。

次の作品は 「モンスター」だ・・・



posted by HH at 23:03| Comment(1) | TrackBack(2) | 百田尚樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
読んでボクシングがより面白く見ることができるようになった気がします。
トラックバックさせていただきました。
Posted by 藍色 at 2012年02月07日 18:49
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「リング」百田尚樹
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Tracked: 2012-02-07 18:33

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