2012年04月28日

【逆説の日本史18】井沢元彦 読書日記239



第1章 幕末から維新へT 『前史』としての日米交渉史 前編
第2章 幕末から維新へU 『前史』としての日米交渉史 後編
第3章 幕末激動の15年1854年編
第4章 幕末激動の15年1855・56年編
第5章 幕末激動の15年1857年編

シリーズ第18巻。
いよいよ幕末である。
そして幕末と言えば、黒船来航。
その黒船来航がこの18巻の中心である。

「泰平の眠りを覚ます上喜撰たった四杯で夜も眠れず」と歌にも詠まれた黒船来航だが、実は突然やってきたのではなく、何年も前から予想されていたのだという。
その裏付けが、第1章で語られる。
世界史的にはアヘン戦争があり、イギリスの無法ぶりが日本にも伝わる。

ロシアそしてアメリカも日本に使節を送り、幕府と交渉を試みる。
そんな世界情勢を受けて、オランダ国王からの助言ももたらされるが、幕府は何もしない。
ペリーの前にアメリカのモリソン号が、やはり開国交渉に来ていたというのは知らなかった。日本人も漂流などの形で外国船に拾われるケースが増えていた。日本の位置的な関係から我が国は、アメリカにとっては是非とも交流したい国だったという背景が語られ、当時の状況がよくわかる。

黒船は突然やってきたわけではないが、日本人はみなそう思い込んでいる。
著者は何度もそう繰り返すが、それは仕方ない。
学校の歴史の教科書では黒船来航が強調されているし、各時代ごとに細かく取り上げるわけにもいかず、象徴的な出来事を強調するのは仕方ない事だ。
歴史ばかり勉強しているわけにはいかないからだ。

そして、当時の幕府の対応が批判される。
初めは正攻法で交渉に臨んできたアメリカに対し、幕府は二枚舌、嘘つき外交で応じたと著者は幕府の役人を批判する。感じられるのは、当時の幕府の役人も今の日本の政治家も同じだという事。先送りすれば問題が解決するとでも言いたげだし、それに何よりリーダー不在、リーダーシップの欠如が致命的。だとすると、現代日本の行く末も案じられる。

鎖国によって世界の常識から隔離されていた日本。
そのため結果として不平等条約を締結させられ、為替問題では富の流出を招く。
当時の日本は豊富な金を有し、世界有数の金持ち国家だったという指摘には改めて驚かされる。しかしそれも銀の交換レートによって、バカみたいな理屈で流出させてしまう。今の日本もアメリカに富を吸い上げられているし、何ら進歩がない気がする。

やむを得ない部分もあったと思うが、当時日本で恐らく唯一英語が話せたジョン万次郎を日米交渉の通訳として利用しなかったとか、日本側は当時の社会制度がネックとなって、うまく交渉できなかった事がわかる。著者はひたすら当時の幕府の無能さを批判するが、サラリーマンの身としては当時の幕府の役人の対応もよくわかる。現代の大企業や役所に同じは理論が今も流れているからだ。

初めの頃はきらりと光っていた著者の分析や推理も、この巻ではやや色褪せた感がある。近代になると資料も増える。著者の得意とする資料と資料の間を埋める分析も、その分トーンダウンするのかもしれない。さりとて次はもう読まないというわけではない。むしろこれからが楽しみと言える。

1年に1冊のこのシリーズ。
1年後をまた期待して待ちたいと思う。


「逆説の日本史17」
「逆説の日本史16」
   
      
posted by HH at 20:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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