2014年06月20日

【空の中】有川浩



作家の中には名前だけで読んでみようと思う作家が何人もいる。
有川浩は、そういう作家の一人である。
これまでに読んだ『フリーター家を買う』『阪急電車』『県庁おもてなし課』など、どれも満足行く面白さであった。
そんな事もあって、迷わず手に取った一冊。
事前に何の予備知識もない状態であった。

2000年代のある日、国産輸送機開発プロジェクトの試作第一号機として飛び立った“スワローテイル”は、四国沖上空20,000メートルで突如謎の爆発事故を起こす。
搭乗員は全員死亡。
そして、そのしばらくあと、同空域で訓練飛行中のF-15戦闘機がやはり同様に爆発する。
原因は不明。

主人公の春名高巳は、“スワローテイル・プロジェクト”のメンバーであるが、事故調査のため空自に派遣される。
そこで爆発したF-15戦闘機とともに飛んでいたパイロット武田光稀三尉に、当時の状況を聴取する事になる。
初めはあまり語りたがらない武田三尉。
それでも複座のF-15に春名を乗せ、武田三尉は現場空域へと向かう。
そしてそこで信じ難いものに遭遇する。

一方、高知県仁淀川の河口にある田舎町で、幼馴染みの斉木瞬と佳江の物語が同時並行で進む。
瞬の父親は空自のパイロット。
そして、瞬の父親が四国沖の空域で事故死したその日に、瞬は海岸で見た事もない物体を見つけ、佳江とともにそれを家に持ち帰る。
父の事故死を知らされた瞬は、たった一人となってしまった家で、父親の携帯に電話をかける。
繋がるはずのない携帯に、電話が繋がる・・・

物語は、事故調査にあたる高巳と光稀、そして高知の高校生瞬と佳江との二組のカップルを軸に進んでいく。
それは、一見爽やかな恋愛ドラマ風。
しかしそこに謎の生命体が絡み合う。
その点で、物語はSFチックになっていく。

女性でありながら戦闘機のパイロットである光稀。
そして行動的な女子高生佳江。
それぞれ女性のインパクトが強い。
“男の職場”に女として参入し、背伸びして突っ張る光稀。
幼馴染みであるがゆえに、近過ぎて瞬に近づけない佳江。
不器用な二人の女性の姿は、女性作家視点のキャラクターなのだろうかとも思う。
今の時代は何でもアリのような気がする。

謎の生命体を巡る物語と、大人と青年の二つの恋愛物語。
縦糸と横糸とが見事に絡み合う。
個人的に謎の生命体を巡る物語には抵抗感を覚えた為か、どうも他の作品のような読後の爽快感は得られなかった。
ただ横糸の方は、有川浩のテイストが出ていて期待通りだったと思う。

好みの部分は人それぞれ。
評価もまた同様。
高知の瞬と佳江の会話は土佐弁。
これもなかなかの味わい。
巻末には宮じいを交えた後日談があり、おまけの楽しさがある。
縦糸は今イチだったが、それなりに楽しめた一冊である・・・
   
    
posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 有川浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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