2014年07月07日

【夢幻花】東野圭吾


 
東野圭吾の作品は、出版されればまず読んでおきたいと思う。
そしてそれは大抵期待通りの結果となる。
だから安心して読む事ができる。
この作品は、ガリレオシリーズとも加賀恭一郎シリーズとも違う、「独立系」の作品である。

物語は、突然殺人事件のプロローグで始まる。
日本刀を持った男の無差別殺人である。
それに続くプロローグ2は、一転して中学生の淡い恋の物語。
この物語の主人公の一人である蒲生蒼太のひと夏の恋である。

翻って現在。
もう一人の主人公とも言うべき秋山梨乃の従兄である尚人が自殺したところから、物語は始まる。
遺書もない突然の自殺で、誰も原因に心当たりがない。
かつて水泳でオリンピックを目指していた梨乃は、ある日泳げなくなり、目標を見失った毎日を送っている。
葬儀で祖父と会い、やがて一人暮らしをする祖父の元に遊びに行くようになる。

祖父の秋山周治は、一人暮らしで花を育てる毎日。
ふとしたきっかけから祖父の花をブログにアップする手伝いを始めた梨乃。
しかし、ある時祖父から見せられた黄色い花の写真だけはブログにアップする事を禁じられる。
そのうち理由もわかると祖父は梨乃に語るが、その祖父が何者かに殺されてしまう。

タイトルにある「無限花」とは、ここに出てくる黄色い花のこと。
実は朝顔であるのだが、朝顔には黄色い花がないらしい。
と言ってももともと自然界に存在しないというものではなく、江戸時代には黄色い朝顔は存在していたらしい。
その点、もともと自然界に存在しない“青いバラ”とは違うようである。
そんな黄色い朝顔がキーワードとなって、物語は進んでいく。

主人公の蒲生蒼太は、原子力を専攻する学生。
そして秋山梨乃は、水泳でのオリンピック出場を目指していた学生。
蒼太の異母兄で警視庁に勤める要介。
ある事情があって、秋山周治殺人事件を粘り強く捜査する刑事早瀬。
一見、バラバラなエピソードが最後に一枚の絵に収まっていく様は、いつもながら見事なものである。

最後に物語はきれいに完結するのだが、福島第一原発の事故で自分が専攻していた原子力の将来に失望していた蒼太が、最後に希望を見出すシーンは個人的には心に残るものであった。
蒼太が見出した原子力を専攻する意義は極めて重要で、誰もそれを否定できない。
この点は若者たちへのメッセージのようでもある。

読んで損はない東野圭吾作品。
それをまた改めて確認する事となった一冊である・・・
   
posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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