2014年08月16日

【黒書院の六兵衛】浅田次郎



個人的に好きな作家である浅田次郎。
新しい本が出れば読む事にしている。
今回は時代劇。
浅田次郎の時代劇と言えば、『壬生義士伝』『一刀斎無録』の例があるから、いやが上にも期待が高まるというものである。

舞台は幕末。
勝海舟と西郷隆盛の有名な会談を経て、江戸城の無血開城が決まる。
主人公の加倉井隼人は、尾張徳川家の江戸定府の御徒組頭。
仕えるは尾張の徳川家であるが、江戸生まれの江戸育ちである。
そんな隼人が、尾張屋敷に呼び出されるところから物語は始まる。

待っていたのは、官軍の軍監と称する土佐の侍。
江戸城明け渡しに際し、物見の先手を努めよと西洋軍服を渡される。
トップが無血開城を決めたと言っても、家中にはどんな感情が渦巻いているかわからず、危険を承知で隼人は配下の徒士を引き連れて江戸城へと向かう。

既に15代将軍慶喜は江戸城を出て大慈院に謹慎しており、官軍に反発する者は上野に集結している状況。
隼人達の心配は杞憂に終わり、無事城内に入る。
勝安房守(勝海舟)と会い、安心したのも束の間、一人の侍が西の丸御殿に座りこんでいると聞かされる。

侍の名は、的矢六兵衛。
幕府の陸軍にあたる「書院番」の番士で、格式高い旗本であった。
六兵衛は座りこんだまま何もしないが、開城し勅使を迎えるにあたっては退去させなければならず、しかも勝と西郷の取り決めにより流血、力づくは避けるべしと条件がつく。
ここから隼人の「六兵衛下城」に向けた奮闘が始まる。

やがて的矢六兵衛の正体がわかってくる。
と言っても、謎の人物であるという事がわかってくるのである。
由緒正しき御書院番の家柄なれど、前年の正月に突然「元の」的矢六兵衛と一家で入れ替わったという。
老父母と家中の者はそのままに、本人と妻子が入れ替わったらしい。
悪名高い高利貸が出入りしていた事から、旗本の株を金で買ったと推測される。

当の本人は、黙り込んで いる為、隼人らが関係者に話を聞く形で物語は進んでいく。
一方、六兵衛も何の考えがあってか、城内の居場所を次々と変え、次第に高位の部屋へと座り込む場所を移っていく。

気になるのは、六兵衛の出自と座り込む目的。
そして物語の展開であるが、そこは浅田次郎にうまくやられてしまう。
ただ座っているだけなのであるが、「力づくはいかん」という制約条件がついたため、いろいろな人が六兵衛の説得を試みる。
右往左往する様はどこかユーモラスだ。

読み終わって、いかがかと問われると、他の浅田作品と比べると、少々物足りなさが漂う。
期待度が高い分、「普通」だと物足りなくなるものである。
もう少し、六兵衛のベールを持ち上げてくれたら、あるいは満足感も得られたかもしれない。
これはこれで、次回作に期待したいと思うところである・・・

    
posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 浅田次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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