2015年01月12日

【フォルトゥナの瞳】百田尚樹 読書日記500



百田尚樹の久しぶりの新刊。
毎回違う分野の本を書くと言っている著者だが、これはどちらかと言えば「不思議系」とでも分類されそうな物語である。

主人公は木山慎一郎という一人の男。
幼い頃、両親と妹を亡くし、今は天涯孤独な身。
自動車のコーティング工場で働いている。
主として高級車を対象とするこのコーティング、実は初めてその存在を知った。
もっとも、純国産のファミリーカーが愛車という身では、それも当然だと思う。

真面目な性格で、仕事熱心。
それゆえに社長にも目をかけられている。
ただ、苦労して育ってきたため女性との接点はなく、当然彼女もいないし女性に積極的にアプローチするタイプでもない。
そんな木山が、ある日電車の中で吊革を握る男の手が透けて見える事に気がつく。

何が起こったのかはわからない。
周りの人は平然としていて、どうやら透けて見えるのは自分だけらしい。
そしてさらにその後、体全体が透けて見える男を見かける。
思わず後をつけるが、その透明な男は木山の目の前で事故死する。
そんな経験を重ね、どうやら自分には人間が死ぬ前兆が、体が透明に見えるという形でわかるのだと気がつく・・・

こうして今回は、そんな不思議な“目”を持った男の物語が描かれる。
タイトルの「フォルトゥナ」とはローマ神話に出てくる運命の女神だとのこと。
人間の運命が見えるとされていて、そこから人間の死を見ることのできる目を持ってしまった主人公をたとえているのである。
普通の人にはない能力を持っているという事は、羨ましいことのように思える。
しかし、この物語の主人公木山慎一郎が持つ「フォルトゥナの目」はどうだろうか。

読み進むうちに、結末は何となく想像できてしまった。
それでも、エピローグでの百田尚樹らしい味付けはきちんと残されていたところはさすがである。野球にたとえれば3塁打といえる作品だろうか。
十分だと思う反面、ホームランバッターにはホームランを打って欲しかったと思ってしまう一冊である・・・

 
posted by HH at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 百田尚樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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