2015年05月29日

【田舎のパン屋が見つけた『腐る経済』】渡邉格



第T部 腐らない経済
第1章 何かがおかしい(サラリーマン時代の話・祖父から受け継いだもの)
第2章 マルクスとの出会い(父から受け継いだもの)
第3章 マルクスと労働力の話(修業時代の話1)
第4章 菌と技術革新の話(修業時代の話2)
第5章 腐らないパンと腐らないおカネ(修業時代の話3)
第U部 腐る経済
第1章 ようこそ、「田舎のパン屋」へ
第2章 菌の声を聴け(発酵)
第3章 「田舎」への道のり(循環)
第4章 搾取なき経営のかたち(「利潤」を生まない)
第5章 次なる挑戦(パンと人を育てる)

著者は、岡山県でパン屋を営む方。
現役のパン屋さんである。
そのパン屋さんは、自ら「不思議なパン屋」さんと称する。
看板メニューは、古民家に棲みつく天然の菌でつくる「酒種」を使って発酵させる「和食パン」
値段は350円と高価格。
週に3日休みで、毎年1カ月の長期休暇を取っている。
そして、店の経営理念は「利潤を出さないこと」。

なかなか面白そうだと思って読み進む。
高校を卒業して7年フリーターをしてから大学へ行ったという変わり種。
従って、卒業後就職した時は30歳。
その会社で奥さんと知り合うも、会社の営業方針に耐えられず退職し、二人でパン屋を始める。

タイトルにある「腐る経済」とは、文字通りパンなど放っておいたら自然に腐るものの経済を指しており、それと金融などの経済が「腐らない経済」として対比されている。
現在は、「食の安全」ということが、世の中かなり意識されているようであるが、この方も「夢枕?」に立った祖父から「パン屋をやれ」と言われて、経験のないパンの業界に飛び込み、作り方を習ううちに、「天然」というキーワードを極めていくことになる。

そして、天然の菌が喜ぶ環境を求めて岡山に辿りつき、そして古民家を借りうける。
なぜ古民家なのかというと、古民家には現代の建築資材が使われておらず、天然の菌が「育ちやすい」のだという。
空気中にふわふわ浮いているのだろう。

もともと変わった方だというのは、その経歴を読んでいてもよくわかる。
素直に社会に溶け込めていたら、真面目なサラリーマンをやっていたのだろう。
だからこそ、こういうお店も生まれて、世の中は面白いのだと思う。
そして、欠かせないのが奥様。
時に叱咤激励し、右手左手となってご主人を時に支え時に導いている。
そんな夫婦の姿が羨ましく映る。

どういう経緯でこの方が編集者の目に留り、出版へと至ったのかは個人的に興味深く思う。
『奇跡のリンゴ』ほどの感動はないが、それでも信念に基づいて真摯にパンを作る姿勢が伝わってくる。
とても興味深いし、是非食べてみたいのだが、いかんせん遠い。
いつか機会を見つけてと思うだけである。

パン作りの基本と菌との関係がよくわかり、人の生き方にはいろいろあるのだということを改めて実感し、そしておいしいパンを食べてみたくなる一冊である・・・

posted by HH at 21:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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