2015年06月13日

【神坐す山の物語】浅田次郎



神上がりましし伯父
兵隊宿
天狗の嫁

見知らぬ少年
宵宮の客
天井裏の春子

浅田次郎の作品の内、密かに個人的に“不思議系”と名付けている系統の作品である。
舞台となるのは、東京は奥多摩の山中。
御嶽山の神社。
その神社に住む一族の、それぞれのエピソードを集めた短編集である。
短編が集まって、一つの物語になっているとでも言えるだろうか。

『神上がりましし伯父』は、文字通り伯父の話。
死者が見える“私”の下に、ある朝伯父が訪ねてくる。
されどその姿は普通の人には見えない。
やがて届けられた伯父の入院の知らせ。
だが、“私”には伯父がもうこの世の人ではないことがわかっている。
伯父の葬儀は、御嶽山の本家の神社で取り行われる。

『兵隊宿』はおばさんのイツの昔話。
日露戦争の頃、ある雪の降る夜、兵隊の一隊が神社を訪ねてくる。
聞けば行軍の途中で行方不明となった一兵士を探していると言う。
外の気温は低く、迷ったら命はないかもしれないと思われる中、その一兵士は見つからない。
そしてその兵士である古市一等卒が、後日イツの婚礼の日に訪ねてくる。
古市一等卒がこの世の人ではないのではないかと恐れたイツであるが、意外な事実が明らかになる。

『天狗の嫁』は、伯母のカムロの話。
カムロは子どもの頃、いずことも知れずに3日ほど行方不明になったことがあったという。
そしてある時、御嶽山の神社に台風が到来する・・・
『聖』は、子どもの頃、寝物語に聞いた喜善坊と名乗る山伏の話。
その喜善坊が、修業をさせてほしいと神社にやってくる・・・

『見知らぬ少年』は、“私”が子どもの頃、神社で出会った少年の話。
「かしこ」という不思議な名の少年。
かしこは、“私”に神主である祖父から習ったという軍歌を教えてくれる・・・
『宵宮の客』は、神社に一夜の宿を求めてやってきた男の話。
その男には、一人の女が付き添っていたが、その女の姿が見えていたのは、応対した神主の祖父とちとせ伯母だけであった・・・

『天井裏の春子』は、きつねに憑かれた少女春子の話。
狐払いで名を知られた神主の祖父を訪ねて、母子が神社にやってくる。
春子に取り憑いていたのは、老狐であった・・・

まだ不思議な物語は、当たり前のように存在していた昭和の頃。
御嶽山の神社の神主一族の話は、どれも味わい深いものがある。
死者と話をしたり、狐に憑かれたり、今ではとても信じられぬ話でも、浅田次郎の物語の中では素直に受け入れられる。
そんな話があったんだと、素直に思えるのである。

今でも奥多摩の御嶽山には、この物語に出てくるロープウェイはあるし、物語に出てきた神社もありそうな気がする。
いつか行ってみたいものである。
取り立てて心を動かされるというほどではないが、各物語ともしみじみと伝わってくるものがある。

浅田次郎の作品としては、まずまずと言える一冊である・・・

posted by HH at 15:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 浅田次郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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