2015年07月08日

【パナソニック人事抗争史−ドキュメント−】岩瀬達哉 読書日記561



第1章 カリスマ経営者の遺言
第2章 会長と社長の対立
第3章 かくて人事はねじ曲げられた
第4章 潰されたビジネスプラン
第5章 そして忠臣はいなくなった
第6章 人事はこんなに難しい

タイトルには、「人事抗争史」とあるが、内容はと言えば、歴代社長間の対立・暗闘・苦闘とも言うべきものだろうか。
パナソニックトップの雲の上の話である。

パナソニックと言えば、「松下電器」。
そして松下電器と言えば、創業者の松下幸之助。
著者は、どうやらこの手のドキュメンタリーが得意なジャーナリストであるらしいが、さすがに「経営の神様」には批判の目を向けることはなく、その矛先は二代目社長の松下正治に向かう。

松下正治は、松下幸之助の娘婿であり、その縁もあってであろう二代目社長となる。
しかし、どうも経営者としての能力は「神様」に評価されていなかったようで、「神様」は生前三代目社長山下俊彦に「ポケットマネーで50億円用意するから、正治氏に渡し引退して二度と経営に口を出さないようにさせろ」と言い残したという。
ところが、これは猫に鈴をつけるような話。
山下社長はそれを実行せぬうちに、社長の座を四代目谷井昭雄に譲る。

四代目谷井社長は、「神様」の遺言を忠実に実行しようとするが、当然ながらの抵抗に遭う。
そしてそうこうするうち、「ナショナルリース事件」「欠陥冷蔵庫事件」と世間を揺るがす大事件が立て続けに起こり、谷井社長自身の進退問題となる。
そして、本社は迷走を始める。

松下電器は映像部門への進出を図るべく、アメリカのMCAを買収する。
ところが迷走する中、USJの提案を却下し、挙句にMCAを冷たく売却する。
のちに売られた先のシーグラム下で、USJが花開き、現在の成功につながる。
このあたりの事情は初めて知るところであり、興味深い。
判断を間違えていなければ、パナソニックの凋落もなかったのであろう。

また、時代遅れとなりつつあったブラウン管テレビに投資を集中させて、テレビ部門で出遅れ、さらに次世代のプラズマと液晶のうち、プラズマに舵を切って敗北を喫する。
まだどちらが有利かわからない時、松下電器の資金力なら両方進めることもできたという。
まぁこのあたりは運不運もあるかもしれないが、結果論としては経営判断の誤りは致命的だ。

コネと地道な取材を重ねたのであろうが、普通は知り得ないような「雲の上の話」は、それだけでなかなか興味深い。
神様の娘婿松下正治氏は、すっかり「諸悪の根源」だが、ご本人には当然言い分があるだろうし、片方の話だけの「欠席裁判」は公平ではないかもしれない。
ただ、一つの見方としては、面白い。
きっとどこの企業でも、雲の上の方はドロドロしていて必ずしも現実の空のようにスカッと晴れているということもないのかもしれない。

届かぬ世界を見上る下々の庶民の立場としては、純粋に面白がって楽しめていいのかもしれない一冊である・・・
   
 
posted by HH at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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