2015年07月09日

【その女アレックス】ピエール・ルメートル 読書日記562



原題:ALEX

何となく面白そうだと手に取った一冊。
作者の名前は初めてであったが、なぜかそう感じたのである。
時折、そういう本に手を出すが、これが見事に正解であった。

主人公はタイトルにある通り、アレックスという名の女性。
職業は看護師である。
そのアレックスがある夜、食事をして一人自宅へと帰る途中、何者かに襲われ拉致される。
殴られ、手荒く扱われた揚句、裸で狭い檻の中に監禁される。
レイプするわけでもない男が何を要求するのかと思いきや、「淫売がくたばるところを見てやる」と不気味に語る。

一方、拉致現場の目撃者からの通報で警察が動き始める。
捜査の指揮を執るのは、カミーユ・ヴェルーヴェン警部。
小説ではわからないが、背が低い男らしい。
1年前に最愛の妻を誘拐された上に殺害されるという経験をし、心の傷も癒えぬまま臨時に捜査の指揮を任される。

第一部は、誘拐されたアレックスと事件を追うヴェルーヴェン警部とが並行して描かれる。
ここは物語の全体の入り口。
ヴェルーヴェン警部の人物像と、彼を支えるルイ、アルマンという二人の部下、そして上司のグエンといった人物が描かれていく。
偶然の幸運で、女が監禁されているという情報がもたらされ、警察は現場に急行する。
そして意外な顛末・・・

小説は3部構成となっている。
この第一部が第二部へと移ると、物語の雰囲気はガラリと変わる。
第一部では描かれなかったアレックスの予想もしなかった行動。
そしてパリ警視庁(物語の舞台はパリである)にとっては、事件は続いており、ヴェルーヴェン警部の捜査も続く。
そしてまた予想外の展開を見せて第三部へ移行する。

ここでもまた物語が劇的に変化する。
だんだんと結末が見え始めるに従って、物語の全体像が明らかになる。
それは実に驚くべきもの。
3部はそれぞれ連続しているが、様相はガラリと変わる。
それはまるで弁証法のような展開。
第一部を受けながらも違う物語となった第二部を受け、そしてまた第三部は違う物語となるといった感じか。

こういう小説は初めてだし、読み終えて深い読後感を得た。
実に、面白い。
母国フランスでは、ヴェルーヴェン警部の物語はシリーズになっているようであるが、翻訳はされていないようである。
ちょっと残念であるが、この本だけでも読めたのは幸いと言える。

どうやら映画化の話もあるようで、実現されたらたぶん、面白いものになるに違いない。
果して、キャスティングはどうなるのだろうという興味が湧く。
「読まなきゃ損」と断言できるフランス犯罪小説である・・・
    
posted by HH at 21:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説(スリリング) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック