2015年08月15日

【いつか、すべての子供たちに】ウェンディ・コップ



原題:One Day,All Children…The Unlikley Triumph of Teach for America and What I Learned Along the Way

01 卒業論文
02 宇宙の法則を止める
03 理想だけでは不十分なとき
04 新しいアイディア
05 暗黒の年月
06 大きな決断
07 トンネルの向こうに灯りが見えた
08 上昇軌道
09 ティーチ・フォー・アメリカの評価
10 ビジョンを実現する
11 この先の10年

著者は、アメリカの非営利団体TEACH FOR AMERICAの代表者。
大学4年の時、ティーチ・フォー・アメリカのコンセプトを思いつき、実現に向けて奔走。
そして見事に成功して現在に至るが、そんな立ち上げからの経緯を綴った一冊。

プリンストン大学の4年生だった著者は、日本でも多くの学生がそうであるように、進路について悩んでいた。
そんな時、同級生の中でもインナーシティ(低開発地域)の出身者が大学で課題をこなすのに、東部の私立高校出身者に比べてはるかに苦労しているのを見て、同じ国にありながら、どこで生まれるかによって受けられる教育の中身が変わるという矛盾に気づく。

一方で、仲間とともに行ったセッションで、参加していた学生がみな「もし可能なら自分が公立校で教えたい」と語るのを聞き、「トップクラスの大学から学生を集め、卒業後の2年間、都市部や地方の公立校で教えてもらう」というアイディアを思いつく。
そしてそれを卒業論文のテーマとし、500人の学生を集めて研修を行い、全国の5つか6つの地域に送り込む計画を立てる。
費用は250万ドル。

普通の感覚だと、「できる範囲で始める」「無理のない範囲で始める」といった選択肢を取りそうなものであるが、著者は始めから大きく打って出る。
「緊急性や国家的な重要性は伝わらない」
「国中のもっとも優秀な新卒者を動かすためにも、大規模でなければならない」
と考えたためで、このあたりの狙いの良さと度胸の良さは感嘆に値すると思う。

そして論文を30ページの企画書にまとめ、大富豪のロス・ペロー他モービル石油、デルタ航空、コカ・コーラなど30社のCEOに送ったという。
この行動力も凄い。
そして卒業すると、ニューヨークに引っ越し、活動を進めていく。
その時、既にモービル石油から立ち上げ資金として26,000ドルを確保していたとはいえ、それ以外の保証など何もない。
若さゆえという一言では片付けられないエネルギーだと思う。

貧困地域で育った小学校4年生は、他の地域で育った小学校1年生程度の学力であるという状況を何とかしたいと思うのは人情だ。
そうした心に響く理念に共感して、仲間が集まってくる。
そして非営利ゆえに、苦労の大半は資金調達(寄付の依頼)となる。
いつ資金が尽きるかと毎週のように心配しながらの日々は、創業の苦労と同じ。
そんな日々を抜け出し、ようやく安定していくが、そこには資金の出し手を捕らえる心に響く理念があるからだろう。

人は誰でも「お金のために働きたくはない」と思うだろう。
だが、そうはいっても現実的にお金は必要であり、稼げれば贅沢もできる。
投資銀行やコンサルティング会社という高級取りになれる可能性が手の届くところにある立場で、それを捨ててどうなるかわからないものに進む勇気は誰にあるものではない。
揺るぎない信念を持って何かに進んでいく姿を見るのは、勇気を与えられるものでもある。
自分にも何かできるのではないかと思いたくなる。
著者のように大きなチャレンジでなくとも・・・

中に挿入されている子供たちを教える若い教師たちの姿がすべてを物語る。
精神的に老けこむ前に、一読しておきたい一冊である・・・

posted by HH at 10:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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