2015年09月04日

【格差大国アメリカを追う日本のゆくえ】中原圭介



第1章 中間層が没落するアメリカ
第2章 格差はなぜ拡大したのか
第3章 経済学は何のためにあるのか
第4章 中間層と国家の盛衰
第5章 21世紀のインフレ政策は間違っている
第6章 世界の模範となる日本

常時出る本をウォッチしている中原圭介氏の著作をまた手に取る。
著者はずっとアベノミクスに警鐘を鳴らしている。
安倍総理に反対と言えば、もっぱら集団的自衛権を中心とした安全保障関連法案に反対するものが多いが、エコノミストである著者の批判対象はもっぱらアベノミクス。
正直言って、個人的にはアベノミクスはうまくいっていると考えている。
だから、著者の批判には懐疑的であるのだが、実はその提言には納得させられるものが多い。

アベノミクスが目指すのは、アメリカのインフレ志向の金融政策であるが、そのアメリカの現状を見ると、目指す方向性は確かに恐ろしいものがある。
アメリカは現在空前の株高好況にある。
しかし、巷で言われているように、格差が拡大し、いまや国民の1/3が貧困層またはその一歩手前なのだという。
そのあたりは、『ルポ貧困大国アメリカU』でも読んだところである。

アメリカでは株主の力が強く、雇われた経営者は株高を演出するために従業員の首を切り、自社株買いで株価を吊り上げている。
また、多国籍企業は複雑な租税回避行為をとっており、たとえばアマゾンなどは日本では税金を払っていない。
政治も近年金権化してきており、大企業とそのバックにいる株主の影響力が大きくなっている。

そんな現状を知ると、何とも言えない気分になる。
そしてその結果、一部の者だけが裕福になり、格差が拡大する。
著者は中間層の没落が、国家の衰退につながるとの説を古代ギリシヤやローマ帝国、唐などの例を挙げて説明して行く。
事例は古いが、だからといって当てはまらないとは限りらない。

・デフレは必ずしも悪ではない
・「円安=製造業にプラス」は時代遅れ
などは、当初政府が言っていたことと逆であるが、著者の論証は納得せざるを得ない。
アメリカ自身が苦しんでいる金融緩和と株主資本主義を、日本が目指すのはいかがなものかという著者の問いは、確かにその通りであると思う。

失われた20年と言っても、日本はその間雇用を守り、生活保護に代表されるセイフティネットが治安の良さを下支えしているとして、著者は評価している。
格差をつけない人事体系が、働く人のモチベーションを支え、日本企業の強さの原動力となってきたと説く。
ROE重視の経営は、それを破壊すると警鐘を鳴らす。

著者はエコノミストであり、こうした分析をするのが仕事。
一般の我々とは比べるべくもなく、我々がこうした事実がわからないのも仕方がないと思う。
ただ、関心があればこうした主張も目に留まるわけだし、そういう意味で、アンテナは常に張っておきたいものである。

できればこのままうまくいって欲しいが、好調に思われるアベノミクスも危うい要素を秘めているという事実は、知っておくべきことだろう。
またしても勉強させてもらったが、まだまだ著者の著書からは目が離せないと思うのである・・・

posted by HH at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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