2015年11月29日

【世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠】ジョセフ・E・スティグリッツ



原題 : The Great Divide

第1章 アメリカの“偽りの資本主義”
第2章 成長の黄金期をふり返る
第3章 巨大格差社会の深い闇
第4章 アメリカを最悪の不平等国にしたもの
第5章 信頼の失われた社会
第6章 繁栄を共有するための経済政策
第7章 世界は変えられる
第8章 成長のための構造変革

著者は、ノーベル経済学賞を受賞しているエコノミストであり現コロンビア大学教授。
その名前は、よく目にしている。
そんな著名人が、アメリカ社会の問題について語った一冊。
中心となっているのが、著者の過去に発表した論文。
それが解説と共に各章を構成している形をとっている。

原題にある通り、この本で扱われているテーマは「不平等(巨大格差)」である。
経済学者は、「パイの増やし方」を扱うのが仕事であるとし、「パイの分配」は政治の仕事としてきたが、そのスタンスを批判=反省している。
そんな反省に基づいて、ここで扱われているのは、「不平等の経済学」である。

あらゆるセクターの中でも金融セクターについては、その破綻が経済全体に及ぶことから、最も重視すべきとしているが、リーマン・ショック時には、数千億ドルが銀行業界に流れ込む一方、差し押さえにあった多くの人が家を失うがままにしたと批判。
銀行に対する著者の批判は厳しい。

アメリカでは1%の人々が国民所得のおよそ1/4以上を懐に入れ、総資産の40%を支配している。
この状況を著者は、「1%の1%による1%のための政治」と呼ぶ。
「独占利益(独占状態を管理するだけで転がり込んでくる収入)」または「所有権から生じる利得」を「レント(地代)」と称し、それを求める活動を「レントシーキング」と名付け、これがアメリカの元凶であるとする。

こうした状況の改善のためには、
・キャピタルゲイン税と相続税の引き上げ
・教育を受ける権利を拡大するための巨額投資
・独占禁止法の厳格な運用
・企業幹部の報酬を制限するための企業統治改革
・銀行の搾取能力を制限するための金融規制
などを行う必要があると主張する。

また、税制改革案としては、
・良いもの(労働や貯蓄)ではなく、悪いもの(公害や投機)に課税
・課税しても消えないもの(土地・石油・天然資源)に課税
・恩恵が広く行き渡るような活動を推奨し、社会に犠牲を強いるような活動を抑制する
などを挙げている。

アメリカの不平等は決して必然のものではなく、それは「政治と政策の結果」として、世界各国の事例をその証拠に挙げる。
日本についても、「手本にすべし」と主張しているが、「貧困児童の割合」、「平均余命」、「人口に占める大卒者の割合」、「定失業率」などは確かにアメリカよりも良いが、鵜呑みにして良いのかどうかは不安に思うところである。
また、東欧三カ国やモーリシャスなど、アメリカよりも経済力のない国々が実現できていることが、「お金がない」という理由でアメリカではできていないことも挙げられる。

読めば読むほど、アメリカの深い問題が明らかになる。
「アメリカの問題だから関係ない」というのは、あまりよろしくないだろう。
もしかしたら我が国も同じ轍を踏むかもしれない。
アメリカの問題ではあるが、我が国も陥るかもしれないとして、著者が提言する解決法を頭に置いておきたいと思う。

こうした本も、考える良い材料になる。
そういう意味で、読んでおいて損はない一冊である・・・
    
    
posted by HH at 18:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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