2016年01月09日

【帳簿の世界史】ジェイコブ・ソール 読書日記618



序章  ルイ16世はなぜ断頭台へ送られたのか  
第1章 帳簿はいかにして生まれたのか
第2章 イタリア商人の「富と罰」
第3章 新プラトン主義に敗れたメディチ家
第4章 「太陽の沈まぬ国」が沈むとき
第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記
第6章 ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問
第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作
第8章 名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析
第9章 フランス絶対王政を丸裸にした財務長官
第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち
第11章 鉄道が生んだ公認会計士
第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性
第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか
終章  経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている

もともと歴史好きであり、しかもかつて銀行員をしていた関係で会計分野に興味がある。
となると、その二つがミックスされたようなこの本を手に取ってみようと思ったのも、必然かもしれない。
ここでいう帳簿とは、会計システムと言い換えることもでき、世界史を会計システムから見てみようという試みは面白いと思う。

この本では、「会計の歴史は人間と政治の物語」と言い切っており、一方で「会計は財政と政治の安定に欠かせない要素だが、信じがたいほど困難で脆くやり方によっては危険にもなる」と主張する。
さらに、「企業と政府の会計責任は民主主義においても未だ確立されない」と述べているが、我が国においても昨年東芝の不正会計事件が起きていることを取っても、まさにその通りである。

そんな会計であるが、歴史はローマ帝国時代にまでさかのぼれる。
皇帝アウグストゥスはすでに帳簿を利用しており、ハンムラビ法典にも会計原則が定められている。
古代アテネ、ローマ帝国の会計システムは、帳簿はつけられ監査もされていたが、不正の余地は大きく、しかも組織的に不正が容認されていたという。

現代につながる複式簿記は、中世イタリアで発明されたが、これは当時のイタリアではアラビア数字が使われており、貿易が発展し多くの資本が必要になって共同出資方式が考案され、出資者への利益配分が必要になっていたという事情が背景にある。
まさに「必要は発明の母」であったのである。

15世紀には、世界初の複式簿記の教科書『スムマ』が誕生し、以後五百年にわたり会計の基本は変わっていない。
16世紀オランダは貿易で大繁栄し、アムステルダムは会計の中心地となる。
世界初の株式取引所が作られ、外国為替の決済が大幅に円滑化され、その様子はオランダの富の秘密は複式簿記にあるという詩が創られるほどであった。

フランス・ブルボン朝では、コルベールがルイ14世を支え、会計の技術は会社から国家へと広がる。
ルイ14世は、常に小型の帳簿を持ち歩いていたという。
陶磁器で名高いイギリスのウェッジウッドは意外にも会計の歴史では大きな影響を持ち、緻密な原価計算がその後に影響を与えたという。

18世紀、革命直前のフランスでは、ネッケルが「国王への会計報告」を発表。
実はこれは初めて国民に対し、国家財政を詳しく説明したものだという。
それまで不満が高まっていた国民は、公開されないがゆえに誤った憶測を生んでおり、それを回避する目的であったようである。
贅の限りを尽くした王家に国民の不満が爆発したフランス革命にも、会計は切っても切り離せないつながりがある。

新大陸で建国されたアメリカでは、フランクリンが国家の会計に大きな役割を果たし、発展する鉄道において、財務会計は複雑化し、やがて公認会計士が生まれる。
ディケンズは、「会計はすばらしく輝かしく、途方もなく大変で、圧倒的な力を持ち、しかし実行不能」と述べる。

長い歴史を振り返り、ますます複雑化する財務会計は、現代においても政府やプロフェッショナルでさえ正確な数字を入手できないほどであるというが、その実態に携わってみればそれは真実だというほかない。
歴史をこうした角度から眺めてみるというのも、興味のある人にとっては非常に面白いだろう。
考えてみれば、お金というのはいつの時代も人間の生活、そして欲望の的であり、したがって争いも生じやすい。
そこから歴史が生まれるのも必然とも言える。

興味のある人には興味深い、そうでない人には退屈かもしれない。
ちょっとした教養を深めるにはいい一冊かもしれない・・・


posted by HH at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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