2016年02月07日

【新軍事学入門 平和を望むのなら、戦争の準備をせよ】飯柴智亮/佐藤優/内山進/北村淳/佐藤正久



序章  なぜ、軍事学だけ抜けたままなのか?  
第1章 国家戦略の基本とは
第2章 日本に外交戦略はあるか
第3章 空軍戦略と「基本の7条」 
第4章 海上自衛隊戦略と「防衛三線」
第5章 海自作戦編-米海軍は空母・海兵隊を出さない
第6章 自衛隊戦術編
第7章 陸上自衛隊戦略とトランスフォーメーション
第8章 基本は外交、背後に剣
終章  「普通になれない国」の政治の闇

この本を手に取ったのは、何よりもサブタイトル「平和を望むのなら、戦争の準備をせよ」に惹かれたからに他ならない。
昨年の安保法案をめぐる議論でも、どうにも違和感を禁じえなかったのは、「目をつぶって反対」というスタンスであった。
賛成であろうと反対であろうと、「しっかり見据える」必要があると思うのである。

まずは、基本的な考え方が示される。
「国際関係論で過去の戦争の教訓を学び、国際政治学で戦争を避けるための外交交渉を学び、それでも戦争になった時に備えて軍事学に基づいた勝つ方法を考える」
とあり、「戦争ありき」ではない。
さらに、軍事好きのミリタリーマニアが、兵器のカタログデータに基づいて優劣を比較する「スペック論争」を明確に否定し、ミリオタ向けの本ではないと謳う。

この本は、聞き手が各専門家に意見を伺う形で進んでいく。
登場する専門家は、元米陸軍大尉、元外務省主任分析官、米空軍予備役少佐、米シンクタンク海軍戦略アドバイザー、参議院議員、いずれも日本人である。

元米陸軍大尉は語る。
日本列島は、アメリカと中国の間に位置する。
今や世界を二分する両勢力であるが、「日米同盟とは、日本列島と日本民族は米国民の盾であり、都合が悪くなったら使い捨てられる」ことを認識すべしと。
よくよく考えてみれば当然なのであるが、よく認識しておかないといけない。

日本には国家戦略がないとされる。
国家戦略を形成するのは、DIMEである。
すなわち、Dipromatic、Influence、Military、Economy であるが、日本は憲法の関係でMilitaryに目を背けがちである。

例えば海外に自衛隊を派遣した際、自衛隊員がもしも1名でも殺されれば、すぐ撤退議論が出てくる。
となると、敵はたった1名を殺すだけで一国を撤退に追い込めるわけで、核ミサイルを搭載した原潜を一隻撃沈するのと同じ効果を得られるとする。
素人でも想像できるだけに、言われてみればなるほどである。

さらに日本外務省の外交戦略の問題点も指摘される。
そこにあるのは一人の外務官僚の出世が重視されているということ。
どんな軍隊も政治がしっかりしていないと力を発揮できない。
知らぬが仏ではないが、こうした指摘はどこまで正しいのか、ちょっと怖い気もする。

意外だったのは、自衛隊も米軍に勝るところがあるという指摘。
例えば、アメリカは陸海空で士官学校が分かれているが、日本は防衛大学が1つのみ。
これは統合戦闘のための士官養成機関としては最適なのだそうである。
さらに海自の潜水艦は、ディーゼル艦であるがゆえに低音で敵に探知されにくいとのこと。
米海軍はすべて原潜であり、特に待ち伏せにおいてはこの威力は米軍を上回るとのこと。
さらに一部では有名な掃海力も米海軍を凌駕するとのこと。

一方、米軍では決してやらない島嶼奪還のための上陸作戦を日本は念頭に訓練と兵器調達を行っているとのこと。
理屈を聞けば問題感が残る。
日本防衛の弱点は原発で、通常のミサイルでも核弾頭と同じ効果が得られると聞くと、お隣がお隣だけにちょっと恐ろしくなる。

また、陸上戦力は防衛という意味ではあまり役に立たないという。
戦車が有効なのは北海道だけであり、いざ出番という事態ではもう終わりだという。
だから陸上の兵力を削減し、その分海と空に回すべしという指摘は、専門家でなければわからないところ。
原発攻撃の不安も、空と海さえちゃんと守れば大丈夫らしい。

非核3原則ならぬ5原則には複雑な心境である。
すなわち、「持たず、作らず、持ち込ませず」に加えて「考えない、見たくない」であるが、これなども議論の必要性を感じる。
ここに書かれていることは、「どうやって守るか」ということ。
よく読めば、内容の良し悪しはともかくとして、よく考えないといけないこと。
多分、安保法制に反対した人たちは、タイトルだけ見て批判するだろう。

「戦争の準備」というのは大げさかもしれないが、軍事をすべてタブー視するのも間違っている。
しっかり見て議論する必要はあるだろう。
最悪なのは思考停止。
そうならないためにも、一読しておきたい一冊である。

posted by HH at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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