2016年05月14日

【「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告】エマニュエル・トッド



1. ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
2. ロシアを見くびってはいけない
3. ウクライナと戦争の誘惑
4. ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
5. オランドよ、さらば!-銀行に支配されるフランス国家
6. ドイツとは何か?
7. 富裕層に仕える国家
8. ユーロが陥落する日

著者はフランスの歴史人口学者・家族人類学者だというが、正直言ってその肩書きはよく分からない。どういう人がどういう立場で主張しているのか、よく分からないところが読む前に不安に思ったところである。そんな本書は幾つかの論文をまとめたものらしい。刺激的なタイトルに惹かれて手に取った一冊。

タイトルにある通り、ドイツの脅威を謳った内容であるが、二つの世界大戦で敗戦したドイツは確かに経済的には大国に入るのだろうが、現在ではどうもピンとこない。しかし、著者によれば、現在のヨーロッパはドイツがコントロールしているという。そしてフランスのオランド大統領は、「ドイツ副首相」だと手厳しい。「ドイツというシステム」は、驚異的なエネルギーを生み出しうるとする。同じことは日本やスウェーデンなどについても言えるらしいが、それは「フランスには制御できない」とする。

ヨーロッパは「ドイツ圏」であり、今後20年の間にアメリカとドイツの間に紛争が起こるだろうとしている。力を持つとドイツは非合理的に行動し、ロシアが崩れればウクライナまで「ドイツシステム」が広がり、だからこそアメリカにとってロシアの崩壊こそ恐れなければならないとする。ウクライナ問題の原因はロシアではなく、ドイツであるという。このあたりの主張は、そのまま受け入れていいものかどうか躊躇を感じるところである。

そんな著者は、かつて「乳幼児死亡率」の上昇からソ連の崩壊を予測したらしい。現在のロシアは乳幼児死亡率は低下し、出生率が上昇している。広大な国土に大勢のハイレベルの科学者たちを要するロシアは無視できない存在で、米露の協調こそ世界安定の鍵だとする。ロシアが好戦的になることはありえず、そんなロシアを含むヨーロッパにとってもアメリカなしでは安定できないという。

著者は自国の大統領にも手厳しい。オランド大統領は「マルク圏」の「地方代表」に過ぎず、民間金融機関は、「政府債務を発明」し国家をコントロールしている。それはドイツもしかりで、真の権力中枢はメルケルではなく、ドイツ経済界だとしている。フランス人が発明したユーロは、ドイツが利用し、今やドイツの最大の貿易黒字はユーロ圏内にて実現している。

ピケティも主張した格差の拡大も明らかで、「市場とは最富裕層のこと」、「政府債務は富裕層の集金マシーン」とし、1%の富裕層に奉仕する国家が出来上がってしまっているとする。そんな諸悪の根源がドイツであり、ドイツ経済がヨーロッパの民主主義を破壊する危険もあり、ストップをかけるのがフランスの役目だと主張する。

確かに主張されているところは理解できるところもある。ただ全体としてどうなのかはよく分からない。ヨーロッパとの距離の差が、温度差を招いているところがあるかもしれないし、日本でも異論を吐く人はいる。ただ、日本については記述が幾つかあり、それには興味を惹かれた。
・日本とロシアの接近はエネルギー的、軍事的視点から見ても論理的
・ドイツの輸出力は途轍もないとはいえ、技術の面で日本のレベルには及ばない
・日本社会とドイツ社会は、元来の家族構造も似ており産業力が逞しく経済面でも類似
・日本の文化は他人を傷つけないようにする、遠慮するという願望に取り憑かれている

ドイツに対する批判はともかくとして、一つの意見としては実に参考になる一冊である。今後ニュースを見る時に、頭の片隅に置いておくにはいい一冊である・・・

posted by HH at 12:58| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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