2016年06月23日

【フェルドマン博士の日本経済最新講義】ロバート・アラン・フェルドマン



第1章 世界経済と日本
第2章 アベノミクスの評価と今後
第3章 エネルギー政策を考える
第4章 働きやすい労働市場にするために
第5章 少子高齢化社会の煉獄
第6章 地方再生と教育改革の進め方


著者は、モルガン・スタンレーMUFG証券の日本担当チーフエコノミストであるが、一方でテレビ東京の『ワールド・ビジネス・サテライト』のコメンテーターも務めているということで、それなりに著名な方である。そんなエコノミストが語る日本経済ということで、興味を持って手に取った次第。

まずは世界経済から見た日本の強みと弱みが語られる。
強みは「豊かな水と農地」そして「技術」だという。日本の今後の成長産業は農業という。何となくわかるような気がするが、はっきりそうだろうかという確信もない。しかし、日本の1/4しかない農地面積のオランダが、農産物の輸出においてアメリカに次いで世界第2位と聞くと、俄然可能性を信じられる。「技術」は言わずもがな、である。

一方、弱みは「人材育成」。税金について高齢者のために使っているお金と若者のために使っているお金との比重を挙げている。ある程度は仕方ない気もするが、「義務教育のうちからグローバル化を意識して人を育てていく必要がある」という指摘は頷けるし、まぁ一つの意見として正しいと思う。

何となくよくわからない問題については、誰かの意見を聞いてみたくなるものだが、TPPに関する意見はその代表のようなもの。著者はそのメリットを4つ挙げる。
1. 農業分野におけるビジネスチャンス
2. 色々な商品の検査を国際基準で行うことが資源や手間の節約になる
3. アジアの貿易環境の整備
4. 日米関係の新たな象徴
それなりになるほどと思えるが、今度はデメリットについても知りたいところである。

アベノミクスについての評価は興味深いところ。それについては、
1. 第1の矢・・・非常にうまくいっている
2. 第2の矢・・・ある程度成功しているが、まだまだ宿題が多い
3. 第3の矢・・・分野によって分かれており、「農業・企業統治4」、「教育3.3」、「行政3」、「税制3」、「医療2.2」、「雇用2」、「エネルギー1.3」、「移民1」、「選挙制度改革0.6」
としている。
総じて、アベノミクスが成功したかどうかについては、「まだわからない」とするが、こうした分析はとても参考になる。

なぜ財政改革ができないかといえば、「政治は既得権益に弱いから」との意見には、なるほどと思う。
各選挙区の議決権を選挙区の人口比例で与えるというアイディアは、なかなかである。
日本のエネルギー政策は、原発再稼働に重点を置いてきたため技術を広げようというペースが遅いという意見は、やっぱりなと思う。
「核廃棄物の処分方法が決まらない以上、処分にかかる費用も計算できない」という意見には、多いに共感させられる。「限られた研究開発のお金は、原発よりも将来性が有望な太陽光や風力などの再生可能エネルギーに向けられるべき」という意見は、我が意を得たりの感がある。

その他にも、喫煙者やメタボの人は保険料を高くするという意見は、斬新だ。これは実にいいアイディアだと思う。こうした考えに触れることは、自分の思考の刺激にもなり、自らの発想も広げさせてくれる。この本に書かれていることは、みんなで大いに議論すべきことではないかと思うところである。

どうしたらこの国がより良い国になっていくのか。そうした思いを持つ人にとって、そのヒントに溢れた一冊である・・・
   
    
posted by HH at 21:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック