2016年06月26日

【中原圭介の経済はこう動く 2016年版】中原圭介



プロローグ 2016年、大転換する世界経済
第1章 【米国経済編】米国利上げで世界経済に何が起こるのか
第2章 【欧州経済編】チャイナ・ショックに怯える欧州経済
第3章 【中国経済編】中国経済の減速はこれから本格化する
第4章 【日本経済編】円安トレンドが終わり、日本株は低迷する

いつも定期的にチェックしている著者の本をまた一冊。読むのがちょっと遅くなってしまい、2016年ももう半ばである。その2016年の世界経済を予測した内容であるが、年半ばにしてもまだまだ刺激的である。

リーマン・ショック以降、金融緩和が浸透した世界。その金融緩和に過度に依存することにより、株式市場や不動産市場などでバブルの下地が醸成されつつあるという。そして経済成長が思うように伸びない先進国を中心に、経済統計の算出方法を変更することによって、GDP、GDP成長率をかさ上げしようとする動きが広まりつつあるとする。由々しき事態であるが、我が国も例外ではなく、いかに惑わされないようにするか、個人的には関心度大である。

波乱要因の一番に挙げられるのが、米国の利上げ。米国が利上げすれば、ローン金利が上がり、するとローンの支払いが増えることから、ローンで物を買う動きが減速し、米国の消費が鈍るとする。今は、原油安という神風が吹いており、これによって米国民の実質賃金の下落傾向が止まっているが、利上げはその効果を消失させ、米国への輸出が減ることで各国の経済も減速するのだという。相変わらず、説得力のある話である。

EUは2014年から、GDP算出に際し、麻薬取引やタバコ密売、売春などの「ブラック・エコノミー」をGDPに加えているという。驚きの事実であるが、こういうのこそ、マスコミが批判すべきであり、その役割を果たせているのかとも思う。期待する方が無理かもしれないが・・・
ECBは量的緩和によって域内景気を浮揚させようとしているが、到底不可能と著者はにべもない。なぜなら、企業は需要が見込めない限りは資金調達して投資などしようと思わないからと、当たり前の理由を説明する。こういうところも著者の意見が受け入れやすいところである。

中国経済の減速はこれから本格化するというが、いつまでも高成長が続くわけもなく、それも十分説得力がある。自動車の生産能力にしても、2,500万台の需要に対し、既に5,000万台の供給能力があるというから、実際のGDP成長率は、政府が発表している7%を大きく下回っているはずという指摘も頷けるものがある。

アベノミクスについては、著者は一貫してその効果を疑問視している。もっともゼロではなく、全体の2割程度だとする。御用マスコミははっきり調べないが、各紙の世論調査が奇しくもだいたい2割で一致しているところから、まんざら当たらずとも遠からずだと言えるという。実質賃金の下落要因は、巷言われるように消費増税などではなく、「行きすぎた円安」だという。著者は従来から、「良いデフレ」容認論を唱えており、それがここでも繰り返される。

安倍総理を始めとして、日本の景気低迷の原因はデフレというのが公式見解であるが、著者はそれを否定する。エネルギー価格の下落によるデフレは、生産設備の供給過剰によるデフレと違い、物価の下落率が実質賃金のそれを上回るため、かえって生活に余剰が生まれるとする。確かに理屈はその通りである。原油安によってデフレになるのは、国民経済においては好ましいのだという。「デフレ元凶論」がまかり通っている中、著者の意見は納得性が高いだけに面白い。

そして、2016年は米国の利上げによって円高トレンドへの転換があると予測する。それは過剰な円安への反動相場となり、円相場は1ドル100〜105円になると予測する。それは購買力平価でも裏打ちされる数字らしい。そうなると、当然株も下落トレンドに入ることになる。
著者は、政治経済の安定のためにはインフレ目標や金融緩和競争をやめるべきと主張する。それはずっと一貫した主張であるが、理由もわかりやすく、素人でも金融政策について意見が持てるようになる。それが著者の本を読むメリットであろう。

さて、ここにきて英国がEU脱退という大きなインパクトあるニュースが世界に流れた。著者もさすがにそんな予測はできなかったであろうが、FRBは利上げを当分見送りそうである。円相場はすでに102円をつけている。世の中がどう動いていくかなど、神のみぞ知る世界であるが、変動要因がわかるだけでも経済を理解する一助となるのは間違いがない。そういう意味で、著者の本を「定点観測」する意義は高い。

これからもずっと注目していきたいエコノミストである・・・

   

posted by HH at 17:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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