2016年09月12日

【靴下バカ一代 奇天烈経営者の人生訓】越智直正



第一部 丁稚時代 超人誕生編
第二部 創業時代 昭和豪傑編
第三部 黄金時代 悲願達成編
第四部 承継時代 無限激闘編

著者は、「靴下屋」の屋号で知られる靴下専門店タビオの創業者。その創業一代記である。この方、とにかく変わっている。靴下のことになると、我を忘れるようで、街で見かけた女性がタイツが似合っていないから忠告しようと声をかけようとしたエピソードが紹介されるが、とにかくそんな調子なようなのである(その時は結局声をかけなかったそうである)。靴下の品質を確かめるため、商品を頬に当てたり噛んだりするそうである。

そんな変わった著者であるが、中学を卒業すると丁稚に出る。出たところが靴下の卸問屋。出来は悪かったというが、朝の6時から起きて夜中の1時2時まで働いたというエピソードは、同じ年代の私の父の体験談と同じであり、やはりそういう時代だったのだろうと思わされる。通用しないとわかってショックを受けるも、その時中学の恩師の「中国古典を読め」という言葉を素直に信じ、猛烈に読みふけったという。しかし、前述の仕事の合間を縫っての話であり、まさに蛍雪の功を地で行っている。

丁稚時代の大将の教えも良い。
・商品と残品は似ても似つかぬもの。商品は利益を生み、残品は赤字を生む。
・大切なことは書くな。書いたら忘れる。言われたことは反復しろ。反復したら忘れない。
・計算ばかりするな。キタナイ商売人になる。ソロバンくらい目ではじけ。
・まず頭を使え、次に体を使え、銭を出せばバカでもできる。
・儲けの秘訣は、貧乏人は金持ちを、金持ちは貧乏人を相手にすること。
・商売は雪だるまを作るのと一緒。基本を固めて、あとは慎重に転がせ。
これはほんの一部であるが、こうした教えをきっちり覚えているのも大したものだと思う。

やがて、大将に追い出される形で独立。部下2名と共にダンという社名で会社を創業する。「凡そ商品は造って喜び、売って喜び、買って喜ぶようにすべし」という二宮尊徳の言葉を創業理念とする。そして随所に古典の言葉が登場する。
「勝兵はまず勝ちてしかるのちに戦いを求め、敗兵はまず戦いてしかるのちに勝を求む(勝つか負けるかはまず勝利の条件を整えてから戦争を始めるか、それともまず戦争を始めてから勝利をつかもうとするか、によって決まる)」
思わず旧日本軍を思い起こしてしまう。

その他にも心に響く言葉が続く。
・自分が打たれることを考えない剣道はない
・約束は絶対守れ
・借金はさっさと切り出す(最初から伝える)
・原因の解決なしに、結果の改善はない
・覇道ではなく王道を歩め-武力や権謀術作ではなく徳や仁義に基づいて組織を治める
・戦わない経営をする。戦うなら自分の理想と戦う
・真剣になれば商売のヒントは身近になんぼでもある
・バットを研究してもホームランは打てない
・仲間の利益をまず優先せよ

 一つ一つ己が実地で培ってきたことだからであろう、説得力がある。創意工夫を重ねているうちに、自然とサプライチェーン・マネジメントを築きあげる(それをご本人は「サムライチェーン・マネジメント」という)。いろいろと苦しい時期もあったようであるが、正しいやり方を追求し(それは古典の影響でもあろう)、靴下という一品だけで上場企業を育て上げたのは、立派というほかない。靴下の履き心地がわかるように普段から一切靴下を履かないというほどのこだわり。何事かを成し遂げるには、やはりここまでやらないとダメだということであろう。タビオで靴下を買ったことはないが、今度是非買ってみたいと思わせられる。

「一生一事一貫」という言葉が冒頭で紹介されているが、まさにそれが著者の生き方。自分の仕事でも意識したいと思う。仕事に情熱を傾けている人は是非、そうでない人も一読の価値ある一冊である・・・

posted by HH at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/経営者の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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