2016年10月17日

【「考える」は技術】グル・マドハヴァン



原題:Applied Minds How Engineers Think
第1章 「モジュラーシステム思考」で分解して考える
第2章 モデル化で問題を「最適化」する
第3章 「逆算思考」で信頼性と効率性を両立する
第4章 組み換え発想で解決策を「標準化」する
第5章 「制約」を逆手にとってトレードオフを乗り越える
第6章 「適応思考」で共感と理性の均衡点を探る
第7章 「プロトタイプ思考」で創造力を最大化する
第8章 「人類学思考」でアイデアの中心に人を置く

著者はインド出身のエンジニア。アメリカ政府の上級政策顧問を務めるバイオメディカルエンジニアなのだという。正直言って「バイオメディカルエンジニア」がどんなことをするのかよくわからないが、この本は原題にもある通り、「エンジニア思考」とでも呼ぶべきエンジニア流の考え方を紹介した本である。

冒頭で、ボストンマラソンで行われた不正事件を紹介。何でも途中をすっ飛ばしてゴールだけした女性が優勝したという事件らしいが、そうした不正をどう防ぐべきか。また、鉄道で膨大な量の貨物車の位置をどう把握するか、同じく在庫管理をどうするのかといった問題が紹介され、それをエンジニアたちがどう解決したかが語られる。在庫管理の問題に取り組んだIBMでは、上司の指示を無視したあるエンジニアが、結果としてバーコードを開発した例が紹介される。

エンジニアとは、問題解決に対して緻密に、そして体系的に向き合う能力があり、それが問題解決につながるのだとか。そして続けて紹介されるフランスの大砲の例が面白い。グリボーバルという大尉が、当時利用されていたヴァリエールの大砲について問題点を考え、やがて兵器の組立工程や製造企画を導入し、それまで手間と時間のかかっていた修理を素早く簡単に行う手順を明確にする。これによって短時間修理が可能となり、実戦での有効利用につながる。

しかし、このグリボーバルの考えはヴァリエールによって否定され、そのためグリボーバルは当時優秀な軍事技術者が不足していた同盟国のオーストリアに招かれ、その実力を発揮する。個人的にこのエピソードを興味深く思う。グリボーバルの技術でオーストリア軍は、優勢なプロイセン軍に対して善戦し、グリボーバルはプロイセンからも評価されたという。わが国でも国内で相手にされず、製品の良し悪しだけで判断されるアメリカで成功する例が多くあるが、何処も同じなのかもしれない。

エンジニア思考の特徴は、
@ 存在しない「構造」を見る力
A 「制約」のもとで物事をデザインする能力
B 「トレードオフ」
だとする。このキーワードが全編を通して語られる。「制約条件」など無い方がいいように素人的には思うが、そうではないようである。

そして、各章では、具体例が紹介されていく。渋滞が問題となっていたストックホルムでは、渋滞する時間帯に課金するという方法で、橋も道路も作らずに渋滞を解消し、さらに課金収入をもたらす。わずか五桁のZIPコードが郵便を効率化し、スーパーのセルフサービスやATMの開発、ペニシリンの発見、シートベルトの発明、そしてトヨタの生産方式にも及んでいく。「標準時」がなかった不便さは、今では想像しにくいがこれもエンジニア思考の賜物だという。

そうしたエンジニア思考の数々は、読み物としては面白い。だが、では実際にこの本を読んで身につくかと言われれば、エンジニアでもない我が身には困難なこと。「なるほどなぁ」で終わるのがせいぜいである。しかし、そこは硬く考えず、「何かのヒントにはなる」くらいで捉えたいと思うところでもある。
そういう意味で気軽に読みたい一冊である・・・

posted by HH at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/442889575
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック