2017年02月03日

【NASAより宇宙に近い町工場−僕らのロケットが飛んだ−】植松努



第1章 僕たちの宇宙開発
第2章 「よりよく」を求める社会をつくろう
第3章 「夢」って何だろう?
第4章 教えてくれる人がいないなら、自分で学べばいい
第5章 楽をしないで努力を楽しもう
第6章 他のどこにもない経営方針
第7章 あきらめないで世界を変えよう
第8章 未来の社会をつくるために

 著者は北海道でリサイクルに使うパワーショベルにつけるマグネットを製造している会社の社長。その会社は一方で宇宙開発を独自に進めており、その考え方が「TED」などあちこちで話題になった人物。この本の前に、『好奇心を“天職”に変える空想教室』を読んでおり、その前著となる本書を手に取った経緯である。

 なぜ宇宙開発をやっているかというと、それは「どうせ無理」という言葉をこの世からなくすためだと言う。世界で3箇所にしかないという無重力実験装置がこの会社にあるといい、其れもすべて自腹でやっているのだとか。全額自腹なのは、「補助金がつかないから何もできない」と言うことに反発する気持ちがあると言い、この考え方がこの本全編にわたって展開される。

 ビジネス的には、ついつい「元は取れるのか」と思ってしまうが、取れなくともいいと著者は明快だ。元はお金ではなく「経験と知恵と人脈」で得ているとする。事実、お金がかからない実験施設だと言うことで世界中から、(NASAの人たちすら)実験をしに来ると言う。「ノウハウが蓄積され、世界中の研究者と仲良くなれるための費用」と考えたら、ペイできているのだろう。

 著者の語る言葉は、どれも何か深みがある。
・結果が分かっている実験はしなくていい。本当の実験とはどうなるかわからないことをするもの
・「しんどい」と思うところにビジネスチャンスがある
・ニッチは自分でつくれ(ニッチと言うものは「見つける」ものではなく「自分でつくる」もの)
・できると思ったらできる、できないと思ったらできない、それが宇宙開発
・知らなかったら調べればいい、間違ったらやり直せばいい
・楽をすると無能になる
・自信がない人は「評論」をして他人の自信を奪う
・「不景気で仕事がない」は新しいことを始めるチャンス
・給料分だけ働いていると給料分の人間で終わる
・努力とは憧れた結果、「してしまう」もの
至言である。

「0から1を生み出す」とはよく言われることであるが、そういう仕事をするために必要な人というのは、「やったことのないことをやりたがる人」「あきらめない人」「工夫をする人」だという。ワインを作りたいが、それに必要なドイツ製のステンレスの装置が高価で買えないと嘆く友人に著者はアドバイスする。「ワイン造りの始まった紀元前にステンレス製の装置はあったのか?」と。こういう考え方なのだろう。

 著者は高校時代、進路指導で「飛行機かロケットの仕事をしたい」と希望を言ったら、担任の先生に「芦別に生まれた段階で無理、芦別高校に行くか芦別工業高校に行くか考えろ」と言われたそうである。いかにもの指導であるが、我々はこの担任を笑えるだろうかと考えてしまう。「本当の未来というものは、やってみたいことをどうやったらできるかなと考えてやり始めること」という著者の言葉を本当に理解できるだろうか。

宇宙開発だけでなく、本業でも著者の考え方はユニーク。「どんなことがあっても壊れない製品を作る」というのが信条だというが、製造業の場合「壊れやすい製品を作る」のが常識で(でないとリピートで食えない)、それゆえに「壊れない製品」は他社が真似できないのだそうである。ユーザーの立場からすると、「何だかなぁ」と思う業界体質であるが、それで「稼働率を下げる、なるべく売らない、なるべく作らない」を経営方針にしているというから驚きである。

「人が困っていることを見つけて助ける」、言い換えればそれは「優しさ」であり、その「優しさ」が夢を叶えるいちばんの近道だとする。問題というのは、必ず新しいビジネスの種であり、未来というものは現在できることの先にはないとする。著者の言葉の一つ一つに夢と希望が溢れている。「どうせ無理」と言葉にしなくとも心の中で思っていないか、つい胸に手を当ててしまった。

子供たちにも伝えたい考え方であり、その前に是非、自分でも身に付けたいことである。そんな風に考えさせられた一冊である・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/経営者の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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