2017年02月22日

【アリさんとキリギリス−持たない・非計画・従わない時代−】細谷功



第1章 キリギリスの復権
第2章 ストックとフロー
第3章 閉じた系と開いた系
第4章 二次元と三次元
第5章 川下と川上
第6章 アリとキリギリスの共存は可能か

 著者は、ビジネスコンサルタント。この著者の本は、以前【地頭力を鍛える 問題解決に活かす『フェルミ推定』】を読んだことがある。すっかり忘れていたが、なかなか面白い本であった。この本は、「思考やそのベースとなる価値観との対立構造」について、「新と旧」、「保守と革新」、「自由と規律」、「新参者とエスタブリッシュメント」という対立構造の根底に潜む価値観とその要因を「アリとキリギリス」に例えることで探る本と説明されている。

 「人があるべき論や善悪を語るときには、知らないうちに自分が育った環境や価値観を引きずりそれが唯一絶対のものだと思いがち」という指摘は、実生活でもすごく実感している。その通りである。著者は、これについて、「あるのは善悪ではなく、前提となる価値観の違いだけ」とする。価値観の違う世界で、別の価値観を表現してしまうことを吉幾三の歌の歌詞に例え、「銀座で山を買う」と表現する。
・創造性の教育のために効率的で画一的な方法を考える
・新規事業の意思決定のために過去のデータと事例を使った説明を求める
といった具体例が挙げられるので、分かりやすい。

 有名なイソップ童話の「アリとキリギリス」では、「アリを見習うべし」とされているが、本書では「違いを理解すべし」とし、あくまでもアリとキリギリスは並列で良し悪しではないとされる。しかし、一方で現代はキリギリスが活躍できる時代とする。そういう変化が9例ほど挙げられるが、中でも個人的には「知識から思考へ」というところに重きを置きたいと思う。AIの進化はますますこの傾向に拍車をかけるだろう。

 アリとキリギリスの違いは大きく分けて次の3点。
1. 貯めるアリと使うキリギリス(ストック重視かフロー重視か)
2. 巣があるアリと巣がないキリギリス(内と外、集団思考か個人思考か)
3. 二次元のアリと三次元のキリギリス(次元とは行動の自由、アリは制約の中で最善を尽くそうとし、キリギリスは制約を変えてしまおうとする)

 具体的な例だとはっきりわかる。ストックとフローでは、
1. アリはお金を貯めてから使おうとし、キリギリスは使えばそれによって入ってくると考える。
2. 知識のアリ、思考のキリギリス
3. 過去を見るアリ(前例思考、前例がないからやらない)、未来を見るキリギリス(前例がないからやる)

 内と外では、アリはチームワークを得意とするが、キリギリスは個人プレーである。一見、チームワークが勝るように思えるが、仲間意識はセクショナリズムと表裏一体という指摘は、その弱点を示す。確かに、見方は様々である。「仕事」と「遊び」についてもしかり。アリはワークライフバランスとして分けて考えるが、キリギリスはワークとライフはそもそも表裏一体と考える。

 自分はどちらのタイプだろうかと、自然と例を見ながら考えている。どちらかといえば、自分はキリギリスタイプである。「規則は絶対ではなく、見直しも選択肢の一つ」だし、「選択肢を与えられるよりも自分で作り出す」方だ。だが、どちらのタイプかと決めるのも無益であるとする。例えば起業家は、会社を立ち上げるまではキリギリスであることが求められるが、会社を成長させ規模を大きくしていく際にはアリの要素がいるとしており、一人の中でも変化があるとする。自分はどちらだということに意味はないのであろう。

 なかなかこれも面白い本である。相手のタイプがわかると、対応も変わってくるかもしれない。自分がキリギリスで、相手がアリであればその反応も納得できる。腹も立たずに冷静に対応策を考えられるかもしれない。著者の言うように、どちらが優れていると考えるのではなく、違いを理解すると言うところがミソなのだろう。
今後のコミュニケーションに参考になりそうな一冊である・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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