2017年02月23日

【参謀−落合監督を支えた右腕の「見守る力」−】森繁和



序 章 投手会の夜
第1章 なぜしぶといチームは完成したのか
第2章 教えるより考えさせるコーチ術
第3章 落合博満監督の凄さ
第4章 参謀の心得
終 章 選手への愛情は決してなくさない

 著者は、元中日ドラコンズのヘッドコーチ。落合監督の下で8年間苦楽を共にした方で、サブタイトルにある通り、「右腕」としての8年間から得たものを語った一冊である。
プロ野球をほとんど見なくなって久しく、したがって著者の現役時代(1979年〜1988年)はもちろんのこと、そのすぐ後のコーチ時代(西武→日本ハム→横浜)のことも中日に移ってからのこともほとんど知らない。まさに、「落合監督の下でこれを支えた」という一点に興味を持って本を手にした次第である。

 落合監督といえば、やはり2007年の日本シリーズの完全試合目前のピッチャー山井を変えた采配が印象深い。著者はまずそれを冒頭で語る。「非情な采配」と言われたが、実は交代を決めたのは著者だという。山井はマメを潰しており、本人から「岩瀬さんでお願いします」と言われたという。本人が「投げる」と言えば、著者はたとえ監督が反対しても投げさせたというが、本音は「交代」であったため、本人の申し出はありがたかったという。のちに落合監督も「山井に救われた」と語ったそうである。実に興味深い裏側である。

 著者は、横浜のコーチをしているシーズン終了間際に、落合監督から電話をもらい誘われたという。落合監督は、そうして誘った著者の契約期間を3年とし、報酬も球団と交渉して相場よりも高くしたという。そんな裏事情も興味深い。そして「ピッチャーのことはわからないから」と言い、著者にすべてを任せたという。著者はそんなやり方に、意気を感じたようである。だから、日本シリーズの采配に際しても、落合監督が批判にさらされたことを悔やんでいるのである。

 本の表紙に写る著者は、顔もそうだが、コーチとしては怖いのだと言う。しかし、落合監督からは、「絶対に手を上げるな」と言われたらしい。それは「選手が監督やコーチの顔色や機嫌を見て動くようになってはいけない」と言う考えらしい。落合監督自身、若い頃暴力的な指導に反発した経験があるからのようで、こう言う監督の側面は、『采配』には出てこなかったと思うが、別の角度から見た落合監督の姿として興味深い。

 そんな監督の下で、組織づくり体制づくりをした経験から、そのポイントは3つあるとしている。
1. すべてを任せられるトレーニングコーチ
2. 1軍と2軍の情報共有、コミュニケーションをよく取れるようにしておくこと
3. シーズン中も練習をしっかり欠かさないこと
1は意外や意外と言う気がする。選手は調子が悪くても、それを言わないことがあるらしいので、選手の管理という面で大事だということである。2はどんな組織でもやはりそうなのだと思う。3をわざわざ挙げるということは、出来ていないところが多いということだろう。

 著者は投手の起用を一任され、監督からそれを覆されたことはなかったという。こうした権限移譲は、今の自分の仕事でも参考になる。そしてやはりコーチとしての最大の責務は選手の指導育成だと思うが、自分は選手を「育てた」というより「潰さなかった」のだと語る。謙遜しているのかもしれないが、選手としっかりコミュニケーションを取り、「こうやれ」ではなく「こういうやり方もあるよ」と「教えるより考えさせるコーチング」を実行したという。サラリーマンでも、部下の育成にも言えることではないだろうか。

 落合監督が成功した要因は、すべて自分でやるのではなく任せることの重要性を理解していたことだという。そして判断基準は、「優勝のために是か非か」で組織づくりをしており、そのシンプルさが良かったとする。指導に際しては、「監督の言葉を借りるだけの指導は簡単だが責任逃れ」とし、「自分が任されているなら部下にもしっかり任せて責任を取る」としたらしい。こういうやり方は、サラリーマン社会でも効果があるのではと思う。

 プロ野球関係者の本は、読んでいても興味深く、そして得られるものも多い。野村監督の本などはその最たるものであるが、こういう自分が全く知らない人でも同様である。
『采配』とセットで読みたい一冊である・・・


posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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