2017年03月07日

【赤めだか】立川談春



「これはやめとくか」と談志は云った。
新聞配達少年と修業のカタチ
談志の初稽古、師弟の思い
青天の霹靂、築地魚河岸修業
己の嫉妬と一門の元旦
弟子の意欲とハワイの夜
高田文夫と深夜の牛丼
生涯一度の寿限無と五万円の大勝負
揺らぐ談志と弟子の罪-立川流後輩達に告ぐ
誰も知らない小さんと談志-小さん、米朝、ふたりの人間国宝

著者は立川談志の弟子である落語家。俳優としても活躍していて、私も顔を見ればあの人かとわかる方である。そんな著者が、自らの半生を綴った自伝。

もともと著者は競艇に興味を持っていて、競艇の選手になろうと思っていたようである。ところが身長制限に引っかかってアウト。競艇選手は小さくないとダメらしい。時に世の中は大漫才ブーム。ところが著者は図書室で見つけた落語全集に興味を持つ。そして寄席に行き、出会った談志の追っかけを始める。そして弟子になるなら志ん朝か談志かと悩んでいた時、談志の「芝浜」を聞く。これに衝撃を受けて談志に弟子入りすることを決意する。

すぐに高校を辞めて談志に弟子入りする。この行動力は、正直言ってすごいと思う。この方は自分とほぼ同世代。あの頃、そんな思い切った行動はとてもではないが自分にはできなかった。弟子といっても談志は内弟子は取らず、住み込みで新聞配達をしながらの弟子生活のスタートである。実は談志は落語協会から飛び出していて、普通の落語家の弟子とはかなり不利な状況だったらしい。

落語協会は運命共同体。弟子たちは自由な時間はないものの、寄席に入っていれば飲み食いには困らないらしいが、その代わり序列が大事で変革は望まれない。一方立川流は仕事は少なく自由な時間はあるが、自分で腕を磨く必要があり徹底した実力主義の世界。なんとなく立川談志という人の性格が見えてくる。

著者には、兄弟弟子がいる。志の輔、関西、談々、談秋。弟子同士の交流、修業生活の日々。そこには普通の人は知りようもない立川流の修業の世界がある。理不尽な部分もかなりあるが、相手の進歩に合わせて教えるというのも談志の弟子育成の特徴だったらしい。それでも思い通りにいかず、辞めて行く人たちがいる。

修業の途中でクビの危機に陥る。それも風邪で師匠の稽古を断ったことが発端。理不尽にも落語とは関係のない築地魚河岸での修業に出され、戻ってからも食べるものを確保するのに苦戦する日々。そんな生活の中でも感動がある。そして二ツ目と呼ばれる、相撲で言えば幕内に昇進する。昇進試験はまるでそれ自体が落語のようである。さらに二ツ目の後は真打ちであるが、ここで著者は後輩に抜かれる。これは次の日から先輩後輩の関係が逆転するものらしく、なかなかシビアな世界である。そんな一般には知られざる世界の話が興味深い。

それなりに名を成した人の人生には学びが多いと思う。この方の人生にしてもしかり。理不尽さには理不尽さの理由と長所がある。今風に言えば、完全に「ブラック」な世界だが、それを否定するのは難しい。著者が成功し得たのも、こうした理不尽な修業があったからと言えるに違いない。

今度寄席に行ってみようか。そんな気持ちになった一冊である・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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