2017年03月09日

【キリンビール高知支店の奇跡−勝利の法則は現場で拾え!−】田村潤



第1章 高知の闘いで「勝ち方」を学んだ
第2章 舞台が大きくなっても勝つための基本は変わらない
第3章 まとめ:勝つための「心の置き場」

 著者は元キリンビール代表取締役副社長。この本は、高知支店での成功体験を基にした経験談である。キリンビールといえば、戦後長らくラガービールで国内市場で圧倒的な地位を占め、「ビールといえばキリン」と言われていたが、「スーパードライ」を提げたアサヒビールが大逆転をしたのが有名である。そんなビール戦争を敗者の側から見るという意味で興味を持った一冊である。

 著者は、それまで社内で一般的であった価格営業に反対で、「安売りしろ」という声に反発していたそうである。そんな姿勢が問題になったのか、全国でも苦戦地域の一つであり、負け続けている高知支店へ配属される。全国でも最下位ランクであり、四国本部のお荷物とまで言われた支店への配属であり、それは「左遷」であり社内でも「田村は終わった」と言われていたらしい。

 当時の高知支店は、営業マンは皆本社から四国地区本部を通して下りてきた指示を販売店に伝えに行っている状態で、取引先に行くたびにこちらの言うことが(本部の施策に合わせて)違っていたという。それでいて「現場は一生懸命やっている」という言い訳をしてばかりで、「悪いのはできもしない目標をどんどんおろしてくる本社」という様子であったという。

 そんな中、著者はどうして良いか分からず、まずは聞くことから始めたという。年間270回に及ぶ宴会に出席していたらしいが、それで糖尿病、高血圧、痛風になってしまう。しかしそんな聞き込みから、戦略を「料飲店の攻略」という一点に絞る。戦略を絞ると、当然次々に下りてくる本部の施策をどうするとなるが、著者はそれを無視させたという。社外に加え、社内の戦いもあったのである。

 営業課長と一緒に推進したのは、「結果のコミュニケーション」。結果のクロージングにこだわるというもので、「やったつもりが許されない」「見てないことは罪」「やっていないことは悪」で、営業マンを逃げられない環境にしたという。そこには4ヶ月の法則というものがあり、結果が出ずとも我慢して4ヶ月目に入ると体が慣れてくる。やがてそうした動きが団結を呼び、営業サポートの女性も土日に出勤するようになる。「仕事が楽しくてしょうがない」とまで言われるようになったらしい。

 やがて高知支店にチームワークが生まれる。一番のきっかけになったのは、「高知がいちばん」のキャッチコピーを使ったセールス。一人あたりのラガー大瓶の消費量が全国1位だったことを利用したものだが、これが高知人の琴線に触れ、販売量が伸びていったという。著者は、本社や四国本部に高知支店の事情を丁寧に説明して社内調整をして行く。3年前には30〜40店しか回っていなかった営業マンが、400店以上回るようになったというからすごいことである。

 そうして高知支店で目覚ましい実績を上げた著者は、四国地区本部長に昇進し、ここでは四国四県それぞれの実情に合わせた戦略を取らせる。会社の方針とその意味を理解した上で、顧客からの支持を最大にするためにどの施策に絞り込むかを決め、効率的なやり方を議論し、現場ならではの工夫をし実行するという手法でまた成果をあげる。

 さらに東海地区本部長に昇進した際は、理論優先の組織の弊害を見抜き、大胆にも「会議廃止」を宣言する。これによって、社員間に工夫が生まれ、何より水と油だった営業と企画との関係が良くなったという。そして東京本社の営業本部長に昇進し、2009年にはアサヒビールからシェアNo.1を奪い返す(その翌年から現在に至るまでアサヒがNo. 1)。

 著者が特に強調しているのが、主体性を持つということ。指示待ちスタイルの変革であり、何より自分の頭で考え行動して主体的に議論をさせるものである。結果を出すことにこだわり、基本を徹底する。現場を熟知し、正しい決定を下し、覚悟と責任感を持ったリーダーを強化する。なるほど、書いてあることは難しいことではなく、「凡事徹底」に尽きるのだとわかる。

 強い組織でリーダーシップを発揮するのも簡単ではないだろうが、著者のように弱小中の弱小組織で成果をあげるのには、やはり考えて考えて考えることが必要だと良くわかる。どんな組織であれ、環境の責任にする前にやることがあるだろうと思えてくる。
実に学ぶところの大きい一冊である・・・



posted by HH at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/経営者の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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