2017年03月16日

【コシノ洋装店ものがたり】小篠綾子



プロローグ 父と私、私と娘-コシノ家の生き様とは
第1章 女にしか出来ないこと
第2章 父と娘の二人三脚
第3章 男と女-夫婦というもの
第4章 別れと出会い
第5章 恋という名のあだ花
第6章 我が子との戦い
エピローグ 私の道はまだ続く-三姉妹から四姉妹へ

著者は、国際的なファションデザイナーであるコシノヒロコ、ジュンコ、ミチコ姉妹の実母。国際的なファッションデザイナーを3人も育てた方ということで、興味をもって手にした一冊。そろそろ将来のことも考え始める我が娘に、何か参考になることはないだろうかという思いがあったこともある。読んでみれば、なかなかユニークな人生を歩んだ方のようである。

著者が生まれたのは、大正2年。場所はだんじりで有名な大阪、岸和田。子供の頃は男の子と一緒になって遊んでいたという。それどころか、男の子と取っ組み合いの喧嘩をしたりもしたらしい。「男女七歳にして・・・」の時代にこれはかなり異例のこと。その日、学校に呼び出された後、家に帰り父親にぶん殴られたという。それ以後、男の子とは遊ばなくなったというが、この時好き勝手ができる男の立場を理不尽に感じたらしい。

そしてある日、ミシンの噂を聞きつけ、わざわざ置いてある店に見に行ったという。そしてそれに興味を惹かれ、毎日店に日参する。外から毎日眺められたら店の方もたまったものではなく、中に入れて見せてくれたらしい。そこからさらに店の手伝いを始めてしまう。他人の店で男に混じって女の子が働くことが正常ではない世の中、随分軋轢があったようである。父と対立し、女学校を辞めてその店に通い出す。

こうして著者は洋裁の道へと踏み出す。最初は奉公人としての立場であり、ミシンなど触らせてもらえない。ところが店の主人の計らいで、夜中に使わせてもらえるようになる。なんとも時代を感じさせるエピソードである。やがて独立し、コシノ洋装店を開店する。当時は男社会。女は家で家事をするものという世の中。相当珍しい存在だったのであろう。ただ、扱っているものが流行り始めていた(男が手を出しにくい)女性の洋服だったからよかったのかもしれない。

店も軌道に乗ってくると、著者は多忙な日々を送る。しかし、世の常識として結婚という問題が生じる。著者を見初めたという人が婿養子になる形で結婚するが、親の決めた相手との結婚で、しかも式の当日まで仕事をしていて、新郎を待たせたというから、ホントに何から何まで異例づくしであったのだろう。そして3人の娘たちが生まれる。

この結婚は、しかし夫が戦死するという形で終わりを告げる。さらに父親も死に、著者はコシノ家を一人で背負う立場となる。女手一つと言っても、著者の腕はかなり太い。商売も大きくなるが、ここである人物と不倫関係になる。今でも多少はそうだが、当時不倫となると世間の目は冷たい。子供も3人もいる中で、しかし著者は初めての恋に浮かれる。実に人間臭い方である。

年頃になった娘たちが、ファッションの道を歩むのも、著者が仕向けたわけではない。それでも多分、子供の頃から見ていた母親の後ろ姿が影響したことは間違いないだろうと思う。まるでドラマのような人生が描かれる。つくづく、人は考え方だと思う。時代の中で、多くの女性たちは普通に結婚して専業主婦となって夫を支え子供を育てるという人生を送っていただろう。著者はそれに反して、無人の荒野を誰の目を憚ることなく駆け抜けたのである。できない言い訳を次々に考え出す人には到底送れない人生である。

世の中に対するチャレンジという意味では、十分先駆者と言えると思う。そんな先駆者の人生を時代背景とともに読んでみるのも面白い一冊である・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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