2017年03月28日

【危険なビーナス】東野圭吾



東野圭吾の作品をまた一つ。今回の主人公は、獣医の手島伯朗。町の医院の雇われ先生で、助手の蔭山元美と二人で細々と診療を行なっている。そこへある日突然、若い女性から連絡がある。女性は矢神楓と名乗り、弟の明人と結婚したと告げる。そこから、伯朗と明人は異父兄弟であること、伯朗の父一清は画家であったが病死し、母禎子が明人の父矢神康治と結婚し明人が生まれたという事情が語られる。

さらに伯朗は、楓から明人が失踪したと告げられる。そしてその失踪には矢神家の人間が関与している可能性があり、まだ結婚の事実も告げていない楓の身では探ることも難しく、したがって伯朗に協力してほしいと求めてくる。実際に会った楓は、カーリーヘアの魅力的な女性で、伯朗は疎遠だったとはいえ弟の妻という身を忘れて惹かれていく。

こうして、伯朗は楓とともにかつて関わりを絶ったつもりでいた矢神家の人々と再び交わるようになる。矢神康治は病床にあって明日をも知れぬ身。医師であった康治は、かつて伯朗の父一清の治療をしていたこともあり、最後に描いていた不思議な絵が物語のキーとなってくる。

康治が研究していたのは、サヴァン症候群と呼ばれる精神疾患。映画『レインマン』でダスティン・ホフマンが演じて有名になったが、患者は時として不思議な能力を発揮する。『レインマン』では、ダスティン・ホフマン演じる男が床に落ちたマッチの数を瞬時に言い当ててみせたが、ここではフラクタルと呼ばれる全体の形と細部が相似となった不思議な絵として取り上げられる。こういう雑学も身について面白い。

物語は、伯朗の過去に触れつつ、それがもたらす謎に興味をもたせつつ、楓という若い女性のこれもまたどこか謎めいていて、読みながら作者の隠された意図を探り出してやろうと思わされるキャラクターに惹かれつつ、進んでいく。東野圭吾の作品はどれもこれも物語に引き込まれていく。電車の中で読めば、最低一度は乗り越してしまうこと確実である。

ラストに至る急展開は、さすがに素人に先読みさせるほど甘くはない。謎もすっかり解きほぐしてくれて、なるほどと唸らせてくれる。何を読んでもきっちり満足させてくれるところは、さすがだと思う。文句はないのだが、そろそろガリレオ先生か加賀恭一郎に登場してほしいと思うのは、私だけであろうか。

次をまた期待したいと思うのである・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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