2017年03月31日

【デービッド・アトキンソン新・所得倍増論 潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋】デービッド・アトキンソン



第1章 日本はほとんど「潜在能力」を発揮できていない
第2章 「追いつき追い越せ幻想」にとらわれてしまった日本経済
第3章 「失われた20年」の恐ろしさ
第4章 戦後の成長要因は「生産性」か「人口」か
第5章 日本人の生産性が低いのはなぜか
第6章 日本人は「自信」をなくしたのか
第7章 日本型資本主義は人口激増時代の「副産物」
第8章 日本型資本主義の大転換期
第9章 日本の「潜在能力」をフルに活用するには

著者は、国宝・重要文化財の補修を手がける創立300年余りの小西美術工藝社社長。しかし、元はと言えばイギリス生まれのオックスフォード大学出身、ゴールドマン・サックス証券でエコノミストをしていた変わり種で、以前カンブリア宮殿でも取り上げられていた方である。私も知らなかったのであるが、これまでにも日本経済に対する提言として何冊か上梓しているようである。この本もその一冊である。

日本は、GDP世界3位、製造業生産高同3位、輸出額同4位、ノーベル賞受賞者数同6位等々の堂々たる経済大国である、と我々は認識している。しかし、著者によるとそれは決してそうではないという。というのも、「一人当たり」で見ると、例えばGDPは世界27位、輸出額44位、ノーベル賞受賞者数39位とランクが大幅にダウンする。これは、「人口ボーナス」のなせる技であり、日本のランクが高いのはただ単に「人口が多いから」だという。

日本の人口は、イギリスの2倍、ドイツの1.6倍であり、技術力や国民の教育などベースの部分ではほぼ変わらないので、日本がイギリスやドイツよりランクが上なのは、単に人口が多いからだとする。それが証拠に、GDPでは中国に抜かれたが、それは中国が人口が日本の10倍もあるからだとする。なるほど、わかっていたつもりでも、改めてそう指摘されればその通りである。そしてこれが日本人の認識を曇らせているとする。

日本に必要なのは、とにかく「生産性を上げること」。そうでなければ、今後2050年までに日本はベスト10から転がり落ちるという。そして生産性を上げるのは、経営者の仕事と著者は語る。日本とアメリカの生産格差の45%は日本人女性の年収の低さというのは頷ける。さらに日本政府に対し、経営者にプレッシャーをかけることが必要だと主張する。

日本の生産性が低いのは、「経営者の経営ミス」と著者は手厳しい。農業に至っては一人当たりの総生産が異常に低く、これは行き過ぎた保護政策にもよるのだろうが、改善の余地は大きすぎるくらいありそうである。「移民政策はやるべきことから目を背けるための言い訳」という主張は、別の理由で移民に反対な私も大いに溜飲を下げる部分である。

人口激増時代に誤った意識を持ったことが、現在の問題につながっているという。それは下記の通り。
1. 責任を曖昧にする文化
2. 新発売キャンペーン癖
3. 計画性のなさ
4. 検証しない文化
5. マニュアル化
6. 融通がきかない
7. 縦割り行政

ここの是非はともかくとして、個人的に一番納得したのが、「現状維持が至上命題になっている」とまで著者が言う「改革アレルギー」。「制度を変えたくないと言う意識がまずあって、それを正当化するために様々な屁理屈を出しているようにしか思えない」とまで言う。一例として、コンビニでバーコード1つでできる公共料金の支払いが、銀行では名前と金額を書かされると言う例。その銀行が3時に閉まるのも前近代の名残とする。言われてみれば、であるが普段当たり前だと思っていて気にもしなかったが、確かにその通りである。

「アベノミクスの足を引っ張っているのは経営者であり、政策目標は企業の時価評価を上げること」と著者は主張する。株式市場を通じたプレッシャーにより経営者の意識を変えることが大切とする。外国人ゆえに、客観的に見られる部分もあるのだろうが、大いに考えさせられる提言である。良い悪いは別として、己の考えを熟成するのに、実に示唆に富む一冊である・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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