2017年07月12日

【野村證券第2事業法人部】横尾宣政



第1章 ノルマとの闘い
第2章 「コミッション亡者」と呼ばれて
第3章 「主幹事」を奪え
第4章 ブラックマンデーと損失補填問題
第5章 大タブチ、子タブチ-「ノムラな人々」
第6章 やりすぎる男
第7章 さらば、野村證券
第8章 オリンパス会長の依頼
第9章 事件の真相
第10章 国税との攻防
第11章 逮捕-私は闘う

 著者は、元野村證券の社員で、独立後オリンパスの巨額粉飾決算事件で指南役として逮捕された人物。しかし、ご本人は無実を訴えられており、この本は自身の野村證券での日々を回顧しながら事件の真相を語った一冊である。

オリンパスの巨額粉飾決算事件については、以前事件が発覚する経緯となったジャーナリストの本(『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』)を読んでいたが、その本の中で、「奇妙なコンサルティング会社」として描かれていたのが著者が独立後に設立した会社であると思う。1つの事件を角度を変えて見るというのも面白いことである。

著者は77年に京都大学を卒業して野村證券に就職する。しかし、当時の学生によくありがちで、あまり実態はよくわかっていなかったようである。多少厳しい方が自分のためにもなると考えたようだが、入社して早々に「ここまで厳しかったのか」と焦るも後の祭り。最初の配属店である金沢支店に行くと、上司が成績の悪い課長代理を奥さんもろとも怒鳴りつけているところを目撃する。かなり衝撃的である。

オリンパス事件の真相よりも、はっきり言って著者の経験談の方がはるかに面白い。「ノルマ證券」と揶揄され、入社した社員の半分が辞めて行く環境の中で、著者は実績を上げて行く。売れない=客が損をする投資商品を売るわけであるが、買った瞬間に損をしてあとは基本的に下がるだけという商品に厳しいノルマを果たして売らせる野村證券のスタンスがすごい。

客に損をさせることに耐えられない者は辞めていき、平気なものが実績を上げて出世して行く。著者もその1人であるが、それでも「20億出してやるから君の名前で株を買え、損は全部被ってやるし、利益は全部取っていい」とまで取引先に言わしめるのだから、単なる金の亡者(野村證券ではコミッションの亡者と言われたらしい)ではなかったのだろう。転勤の時、損をさせた取引先の社長に「オレの数億、無駄にするな。立派になれよ」と声をかけられたと語るが、そこまで信頼関係を築いていたわけである。

そしてタイトルにある第2事業法人部へ転勤となる。いろいろと事情はあったようであるが、異例の出世とも言えるわけであるが、ここでも著者は創意工夫を繰り返して行く。時に世はプラザ合意の金融混乱期。創意工夫といっても、勉強と研究のベースがなければできないはずで、詳しくは書かれていないものの、影なる努力はかなりあったのであろう。

そして独立する。残っていても役員には慣れたのかもしれないが、実績のためには社内を敵に回すことも厭わなかったようなので、軋轢もあったのかもしれない。ついて来た部下とともにコンサルティング会社を立ち上げる。問題となったオリンパスとは、野村證券時代からの付き合いだったが、粉飾の中心人物である山田秀雄氏とのやり取りも詳細に語られて行く。

事件の真相は、当事者にしかわからない。ただ、著者の言葉を信じれば、うまくオリンパスの山田氏に利用されただけであり、著者を悪人と決めつけた検察側がシナリオを創作して有罪にされたとなるのである。その前に国税が著者が関わった節税スキームを「シロ」と断定しながら、膨大な調査費がかかっていることもあり、「お土産」として200億ほど納税しろと言ってくるシーンがある。これを拒否した野村證券は、国税に損失補填で訴えられてしまう。官がすべて正しいと盲信するのも控えた方がいいかもしれない。

著者によれば、オリンパスの粉飾決算事件は、山田氏が中心となった投資で損失が発生し、それを糊塗しようと長年画策し、ついには暴露されてしまったのが真相。一度はオリンパスの損失穴埋めを得意の創意工夫で利益を上げてやってのけた著者は、山田氏に頼られそしていいように利用されたということらしい。入社以来の著者の経歴、考え方、国税や検察の考え方・行動等を読んで行くと、そこに嘘はないように思える。

ただ、正直いってあまり真相には興味はない。ただ、今とは比べものにならない労働環境下で、実績を上げて来た1人のビジネスマンとしてのスタンスには学ぶべきところがあると、個人的には思う。そういう部分で刺激を受けたという意味では、一読の価値ある一冊である・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/自伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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