2017年07月19日

【数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学】大栗博司



第1話 不確実な情報から判断する
第2話 基本原理に立ち戻ってみる
第3話 大きな数だって怖くない
第4話 素数は不思議
第5話 無限世界と不完全性定理
第6話 宇宙のかたちを測る
第7話 微分は積分から
第8話 本当にあった「空想の数」
第9話 「難しさ」「美しさ」を測る

著者は、いろいろと肩書きのある方のようだが、一言でいうなれば数学者ということだろうか。そんな数学の専門家が、世の中のことを数学に関連づけてやさしく解説しようというのが本書である(たぶん)。ただ、あまりやさしくはない。

最初は確率の話。アメリカの予防医学作業部会が、40代の女性には乳がんの定期検診を推奨しないとして話題になった例を取り上げる。そこでこの問題に対し、確率の考え方から考えていく。乳がんに罹っていた場合に検査で陽性の結果が出る確率からはじめ、ベイズの定理を使うと、なんと「乳がん検診で陽性の結果が出た時に乳がんに罹っている確率は9%」という結果がでる。乳がん検診の有効性がどうのというよりこの数学的な考え方が面白い。

確率の話としては、原発の重大事故が起こる確率は、やっぱり「100年に1度」だとか、OJシンプソン事件で相手の弁護士の無罪主張には確率の話でこう切り返せば良かったとか、日常的に数学の考え方は潜んでいるものだと思う。基本原理の話では、「(-1)×(-1)はなぜ1になるのか」という解説が面白かった。学校で習ったのかもしれないが、今は自動的に「1」と覚えてしまっているが、「毎日100円ずつ使っている場合を例にとり、3日前(-3)には300円多かった「(-3)×(-100)=300」という解説には改めてなるほどと思わされる。

天文学の話となると、大きな数が登場する。「対数」はその昔学校で確かに習ったが、やはり日常生活で縁がないせいか忘却の彼方だ。「log」が出てくるとちんぷんかんぷんになるが、それでもケプラーの第三法則「惑星の公転周期の2乗は軌道の長半径の3乗に比例する」の解説は面白く読める。改めて勉強してみたくなる。

素数の原理を利用したインターネットの公開鍵暗号の原理だとか、「アキレウスは亀に追いつけない」パラドックスの解説などは、改めて数学の凄さがわかる。特に紀元前275年に地球は丸いと考え、その円周を46,500キロと実際の40,000キロと遜色ない誤差で推定したエラトステネスの話は興味深い。夏至の正午にアスワンとアレキサンドリアと離れた場所で太陽が落とす影の角度から推定するというもので、実に驚異的だと思う。

話はピタゴラスの定理のような馴染み深いものからデカルト座標や虚数など多岐にわたる。中には難しくて目眩がしてくるものもあるが、基本的に数学は奥が深く、そして面白いと心から思う。できればもう一度高校あたりから学び直してみたい気になってくる。著者の狙いももしかしたらそんな数学の面白さを伝えたいというところにあるのかもしれない。

サブタイトルには「娘に贈る数学」とあるが、私の場合は「自分に贈られた」と感じられた一冊である・・・

posted by HH at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 教科書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック