2018年02月23日

【『純粋理性批判』を嚙み砕く】中島義道 読書日記895



序 章 難しくて易しいカント 
第1章 アンチノミーとは何か?
第2章 宇宙論的理念
第3章 無条件者への無限背進
第4章 矛盾対当と反対対当
第5章 哲学の競技場
第6章 世界は時間的始まりを持つか?
第7章 世界は空間的に無限か?
第8章 空虚な空間・空虚な時間
第9章 世界は無限分割できるか?
第10章 世界は単純な部分から成っているか?
第11章 単子論の弁証的原理
第12章 自由は認められるか?
第13章 現象の系列における絶対的な始まり
第14章 絶対に必然的な存在者はあるか?
第15章 必然性と偶然性
終 章 易しくて難しいカント

 ここのところ少し哲学を勉強したいという気持ちが湧いてきていて、しかしいきなり哲学者の著作を読んでも理解できないことから、入門書から始めることにしたのだが、この本は『カント「純粋理性批判」入門』に次いで二冊目のカント入門編ということになる。と言っても、『カント「純粋理性批判」入門』が「入門」と言いながら実に難解でよく理解できなかったことからかなり不安を持って手にしたのが事実である。

 著者は元大学教授であり、ウィーンへの留学経験もある研究者だということである。かなりドイツ語も堪能であるという事は、端々からわかる。その著者が、「カントとはわからなさの代名詞」だと言う。現代ドイツ人にとっても「純粋理性批判」は読めたシロモノではなく、カントの同時代の哲学者たちにとっても「頭を抱えるほど難解」だったのだと言う。と言うことは、言葉も違う現代日本人が読んでも理解できるわけがない。最初からそう言ってくれるのはありがたい。正直、ここで読むのをやめようと思ったほどである。

 しかし、そんな著者が「噛み砕く」と言っているのだから、それを読んでみたいという誘惑から読み進めた次第。ただし、噛み砕くのはカントの思想すべてではなく、タイトルにある通り「純粋理性批判」。それも全部ではなく、全体の1/6を占める「純粋理性のアンチノミー」という部分だけである。と言っても厚い本であることを考えると、残りを噛み砕くと一体何冊の本になるのやらと思ってしまう。

 カントの難しさは、解説することすら難しいようで、それはとどのつまり「理性(vermunft)」という用語のわからなさに行き着くとする。とりわけ「理性の自然本性」という概念をカントはいかなる厳密な定義なく規定もなしに使っていると言う。専門に研究していなければこんなことわかりようがない。そして「カントの難しさとは、『理性の自然本性』を理解する難しさに他ならない」とまで言い切る。素人にはやっぱり無理そうである。

 しかし、「噛み砕く」としているのはやはりその通りで、例えば『カント「純粋理性批判」入門』ではよくわからなかった「カテゴリー」については、「悟性の中には純粋な思考の形式が潜んでいてそれらを一覧にしたもの」と説明してくれていてわかりやすい。そしてそれは12個に分かれていて、内容としては「量」「質」「関係」「様相」のそれぞれが3通りに区別されているもの(3×4)だとする。こういう風に解説されると、『カント「純粋理性批判」入門』ももう少し理解できたかもしれないと思う。

 そしていよいよ中心となる「アンチノミー」を噛み砕くことになるのだが、それにはまずカントも学んでいた古典論理学の知識がないとダメなようである。カントはこれを下敷きにして、独特のかなり癖のある「技法」を使っており、これを知らなければ読み解けないとする。事実、著者が解説に別の方の翻訳を利用しているが、文中でしばしばその誤訳を直していく。つまりドイツ語がわかるだけでもダメなのである。

 アンチノミーは4つあり、それぞれ
第一のアンチノミー:世界は時間的始まりを有するか/世界は空間的に無限か
第二のアンチノミー:世界は無限分割できるか
第三のアンチノミー:自由は認められるか
第四のアンチノミー:絶対的に必然的な存在者はあるか
となっている。それぞれテーゼとアンチテーゼがあって、その内容が説明される。テーゼとアンチテーゼと言われると、何か対立的なものを考えるが、その関係は「矛盾ではないが一見そう見えてしまうような対立」だとされる。ここから確かに噛み砕いてはくれているが、それでもど素人には飲み下すのが難しい。

 カントは易しくて難しいと著者は語る。「難しい」のはわざわざ言われなくてもわかる。だが、「易しい」のは理解が難しい。それが証拠に著者自ら(カントを理解するのに)手軽な方法はなく、膨大な時間(最低10年!)かかるとしている。正直言って「そこまでして」という感じがする。もっとわかりやすい解説書はないかと探すより、哲学に対する興味がまだまだ残っている間に、違う思想に触れてみる方がいいと思う。

 そんなことを教えてくれた一冊である・・・





posted by HH at 00:00| Comment(0) | 人生論・哲学・生き方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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