2018年03月14日

【中洞正の生きる力 山地酪農家】中洞正 読書日記902



第1章 山地酪農と牛のしあわせ
第2章 酪農のアウトサイダー
第3章 導き、支えてくれた人々
第4章 本当の「おいしい牛乳」
第5章 酪農維新に向けての決意

 この本は、どうやら「ソリストの思考術」というシリーズの一冊であるようで、第7巻とある。だが、そんなことを意識しなくても十分に読める。ここで採り上げられている人物は、山地酪農(やまちらくのうと読むそうである)を実践している酪農家。山地酪農とは、自然放牧の牧場ということである。何となく酪農というと牛舎を想像してしまうが、著者の実践する酪農は日本の従来の酪農とは全くスタイルが異なるようである。

 日本の酪農は、中洞氏曰く、「工業的酪農」だそうで、牛舎の中で一坪に満たないスペースで牛を飼い、器具または綱で牛を固定し、濃厚飼料や配合飼料を与え、邪魔な尻尾や角を切り落とし、ひたすら効率的に牛乳を絞るそうである。これに対し、山地酪農にはまず牛舎がない。自然放牧で24時間365日ほったらかしで、唯一朝夕に搾乳するだけだという。それも牛が自ら搾乳舎にやってくるそうである。農薬も飼料も一切使わず、牛たちにとっては楽園だと中洞氏は語る。

 聞けば聞くほど、自然放牧の良さばかりが目立つ。しかし、農協が取り扱い流通が認められているのは脂肪率が3.5%以上の牛乳。自然放牧だと脂肪率は3.2%程度にしかならず、流通には乗せられないという。この法改正が行われ、それまで少なからずいた自然放牧牧場はことごとく方向変換させられたそうである。

 さらに工業的酪農は、設備投資が大変で、酪農家は皆農協に借金する。濃厚飼料はアメリカからの輸入であり、酪農家は借金を返すためにせっせと「効率的に」稼がざるを得なくなる。なにやら陰謀めいた匂いがしないでもない。大いなるシステムに組み込まれれば、様々な補助金や援助もあり、抜けられなくなるらしい。その中で、己の信念を貫く中洞氏の姿は強烈である。

 自然放牧へのこだわりは、それが「自然の摂理に適っているから」という中洞氏の意見は実にシンプル。自然放牧は牛舎にまつわる重労働から解放され、むしろ「楽農」だとする。牛の幸せがあっておいしい牛乳がいただけるとする。その通りなのだろう。殺菌方法も低温保持殺菌法というものらしく、工業的酪農の高温短時間殺菌法より味がいいらしい。この方法は運送手段の発達した日本ではもう頼らなくてもいいはずと中洞氏は語る。いろいろと日本の酪農界の問題点も描かれる。

 自然放牧は、牛が草を食べることから、林業との相性も良く、コラボすれば可能性も広がるのだとか。さらに日本の土地はスイスの3倍も生産量があるらしく、そう考えるとやりようによっては世界的な競争力もありそうである。とにかくいい事づくしのような感じであるが、ネックはその価格。調べてみたら500mlで800円くらいしていて、めちゃくちゃ高い。これに対しては、「牛乳は『贅沢品』、『滋養食品』として週に何回か飲む程度でいい」と中洞氏は語るが、そう考えないとなかなか飲めない。

 なんでも『奇跡のリンゴ』の木村秋則さんとは交流があるのだとか。無農薬と自然放牧とはその目指すところは同じであり、息が合うのだろう。こういう農業がもっともっと増えてくればいいのにと思わざるを得ない。それはともかくとして、一度飲んでみたいとつくづく思った。できれば毎日飲めなくてもいいから、こういう牛乳を飲みたいと思わされる。そんな自然放牧の実態が描かれた一冊なのである・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | ビジネス/生き方・考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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