2018年03月16日

【「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法】中室牧子/津川友介 読書日記903



第1章 根拠のない通説にだまされないために
    「因果推論」の根底にある考え方
第2章 メタボ健診を受けていれば長生きできるのか
    因果関係推論の理想形「ランダム化比較試験」
第3章 男性医師は女性医師より優れているのか
    たまたま起きた実験のような状況を利用する「自然実験」
第4章 認可保育所を増やせば母親は就業するのか
    「トレンド」を取り除く「差の差分析」
第5章 テレビを見せると子どもの学力は下がるのか
    第3の変数を利用する「操作変数法」
第6章 勉強ができる友人と付き合うと学力は上がるのか
    「ジャンプ」に注目する「回帰不連続デザイン」
第7章 偏差値の高い大学に行けば収入は上がるのか
    似た者同士の組み合わせを作る「マッチング法」
第8章 ありもののデータを分析しやすい「回帰分析」

 タイトルを見て興味を持った一冊。データ分析については、最近ビッグデータという言葉が流行っていたり、統計などがもてはやされたりしているが、個人的にそれらの分析についてはあまり興味を持っていない。専門家がそれをやるならお任せするというのが私の考えで、自らそれらの手法を覚えて利用したいとは思わない。そんな私がこの本に興味を持ったのは、サブタイトルに「データから真実を見抜く思考法」とあったからである。

 「因果関係」と「相関関係」は間違われやすいと著者は説明する。当然ながら両者を混同すると誤った判断のもとになってしまう。特に日本では、因果推論を体系的に学ぶ機会がほとんどないため、テレビや新聞でも相関関係に過ぎないことを因果関係にあるかのように報道しているのをしばしば目にするという。因果関係がはっきりしない根拠のない通説が山のように氾濫しているのが、教育と医療の現場だという。なかなか興味深いイントロである。

 因果関係を確認する方法は3つあるとする。その3つのチェックポイントは以下の通り。
1. まったくの偶然ではないか
2. 第3の変数は存在していないか
3. 逆の相関関係は存在していないか
なるほど、言われて見れば上の3つが存在していれば因果関係は否定されるわけであり、このポイントをまず確認すべしというのはよく理解できる。

 因果関係を証明するのは「反事実」だとする。これは、「もし〜をしなかったらどうなっていたか」というもので、実はこれは確認ができない。というのも、例えば広告効果を見る場合、広告は出したか出さなかったかのどちらかであり、両方を比較することはできない。「事実は観察することはできても反事実は観察することができない」わけである。こういうことはあたり前だが、だからこそ難しいのだと思う。

 こうしたことをそれぞれ各章で章題に挙げられていることを考えていくわけであるが、話のネタとしては確かに面白いかもしれない。ただ、最初にサブタイトルを見て期待した気持ちからするとちょっとずれている。「データを用いた分析をどう解釈するかが大切」という考えに異論はないが、そのためには「因果関係をしっかりと見極めましょう」という結論なら「ちょっと・・・」と感じてしまう。

 もっとも、それは何を求めるかによって異なるところであり、この本が役に立たないというわけではない。因果関係を確認するというのは、ビジネスの世界も含めて大事なことだと思う。そういう意味でも、そういう内容を求める人には有意義な本であると思う。目的に応じて、読む本を選びたいと思わされる一冊である・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | ビジネス/理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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