2017年10月03日

【東芝解体 電機メーカーが消える日】大西康之



序 章 日本の電機が負け続ける「本当の理由」 
1. 東芝 「電力ファミリーの正妻」は解体へ
2. NEC 「電力ファミリーの長兄」も墜落寸前
3. シャープ 台湾・ホンハイ傘下で再浮上
4. ソニー 平井改革の正念場
5. パナソニック 立ちすくむ巨人
6. 日立製作所 エリートの武士集団の死角
7. 三菱電機 実は構造改革の優等生?
8. コンピューターの雄も今は昔

原発の次は米ウエスチングハウスの問題が噴出し、東芝が揺れ動いて久しいが、そんな時期にタイムリーなタイトルを見て手にした一冊。「東芝解体」とあるが、東芝を含めた電機メーカー各社に付いて現状を開設した一冊である。電機メーカー各社も安泰ではなく、そんな凋落にある日本の電機メーカーの現状に触れていて、実に興味深い。

作者は日経新聞出身の作家で、実はこれまでも『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』『ファースト・ペンギン 楽天三木谷浩史の挑戦』『ロケットササキ』といずれもビジネス系の実録を出版していて、いずれも興味深く拝読させていただいている。この本も読む前から興味をそそられた。

東芝は、事業立て直しのために、すでにメディカル事業はキャノンに売却し、白物家電は中国の美的集団、そして半導体事業は売却の相手先をめぐって新聞紙上を賑わしており、米WHが倒産した現在満身創痍の状況にある。日曜日のサザエさんのCMなどでおなじみだった白物家電も、いつの間にか売却。白物家電も携帯と同様、「ガラパゴス化」してアジアの新興企業に抜かれてしまったらしい。

半導体や家電、携帯電話で日本の各社が負けたのは、それが「本業」でなかったからだと著者は言う。日本の電機産業を支えてきたのは、「電力ファミリー」と「電電ファミリー」であり、この2つのピラミッドの瓦解が電機全滅の原因だとする。電力ファミリーとは東京電力をはじめとする電力会社であり、電電ファミリーとはNTTを筆頭とする通信会社で、これらの安定した設備投資が電機各社を支えてきたのだと言う。

東芝の3社長による粉飾への道はすでにあちこちで見聞きしているが、西田社長が経団連会長の椅子に意欲を見せて人事抗争に発展したとか、WHの買収価格6,000億円が身の丈を超えた買収であったとか、著者は遠慮がない。ただ、東芝には軍事産業としての顔があり、原発とミサイルを造っていることから国内では「核ミサイルを作れる会社」なのだと言う。確かに知り合いに聞くと、軍需産業部門は安定しているのだとか。ただし、原発の廃炉は国策であり、これがある限りは国もこの会社を潰せず、最悪は水俣病のチッソのようになるのかもしれないとする。

NECは「電電ファミリーの長兄」とされているが、ノキアやフィリップスが大胆に事業構造を変革したのに比べて動きが遅く、M&Aなど実施しているがその規模はあまりにも小さいとする。既にパソコン、半導体、ビッグローブ、携帯事業となりふり構わず売却し、「売れるものは売り尽くした」状態だとする。NECもパソコン事業を売ってしまったのかと今更ながら思う。

シャープは液晶技術で世界のテレビ市場を席巻し、世界の亀山モデルで話題になったのもまだ記憶に新しい。しかし、世界最大のパネル工場を作り上げた時、既に世界はスマホの時代に突入しており、さらに国策会社ジャパンディスプレイにトドメを刺されて、台湾ホンハイの傘下になったのも最近である。

その他、ソニー、パナソニック、日立製作所、三菱電機、富士通と採り上げられるが、三菱電機以外は皆苦境に陥っている。そんな現状をこうしてまとめあげてくれているのはわかりやすくてありがたい。それにしても、日本を代表する世界に冠たる電機メーカーが大変なことになっているものである。そしてそこから抜け出せずにいるのも、日本的経営の特徴なのかもしれない。

例えば、ノキアやフィリップスは早々に大胆な構造改革で既に成長軌道に戻っているし、グーグルやIBMはAI関連に年間数千億円の研究開発費を投じていると言う。これに対し、日本勢は富士通にしろ日立にしろ「3年間で1,000億円」と言う規模だと言う。優秀なインドの学生をグーグルやIBMは年俸2,000万円でスカウトするのに日本勢は500万円。追い掛ける方がこれでは勝負にならないと著者は指摘する。

著者によれば、この本はかつての名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』モチーフなのだと言う。確かに、日本軍の敗北したパターンと相通じるものがあるように感じる。我が国は大丈夫なのかと、他人事ではない気がする。ただ、著者には電機各社に対して復活を期待するところが根底にはあるようであり、私も別業界ではあるものの、大いに頑張って欲しいと思う。

普段なんとなく目にしていたはずのことでも、こうして整理されると理解しやすく、また問題点もわかりやすい。ビジネスマンであれば、一読して問題認識を持つのもいいだろうと思う。他人事ではなく、自分も自分の業界で二の轍を踏まないようにしたいと思う一冊である・・・



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2017年07月05日

【1984年のUWF】柳澤健



序 章 北海道の少年
第1章 リアルワン
第2章 佐山聡
第3章 タイガーマスク
第4章 ユニバーサル
第5章 無限大記念日
第6章 シューティング
第7章 訣別
第8章 新・格闘王
第9章 新生UWF
第10章 分裂
終 章 バーリ・トゥード

タイトルを見た瞬間、読むことを決めてしまった一冊。かつてプロレスにのめり込んだ身としては、当然の反応だったと思う。何事も当事者にしか知ることのできない世界を知ることは興味深いもの。それがもともと興味を持っていたプロレスの世界であればなおさらであるというものである。

UWFの源流はやはりカール・ゴッチ。実力的には優れていたものの、ショービジネスであったプロレスには溶け込めず、不遇の身に甘んじる。嘘が嫌いなカール・ゴッチは、「(八百長をやる)プロレスラーなんでしょう?」と問われ、「アイム・リアルワン」と答える。プロレスラーとは答えられず、しかし己の実力に誇りを持っていたのである。

一方、日本のリングで革命を起こしたのは、タイガーマスクとして一世を風靡した佐山聡。プロレスこそ最強の格闘技と信じて新日本プロレスに入門するも、試合はあらかじめ決着の決められたものだと知ってショックを受ける。レスラーを志す者は、皆そのパターンで真実を知ってショックを受けるそうである。

著者曰く、「身体能力の化け物」である佐山聡は、メキシコ、イギリスと遠征してたちまち人気を博す。そこに白羽の矢が立てられ、タイガーマスクとして帰国。日本で大ブームを巻き起こす。この頃、毎週金曜日が待ち遠しくてたまらなかったものである。しかし、すでにアントニオ猪木には、打撃と関節技を組み合わせた新しい格闘技を作りたいと打ち明けていたという。そして衝撃の1983年8月。タイガーマスクが突然引退を表明する。あの時のショックは今だに忘れられない。そしてそこに至る経緯。いろいろなメディアでだいぶ真相は明らかにされているが、改めて詳しい経緯が述べられる。

それから新間寿氏が暗躍してUWFが旗揚げする。当時の事情もまた新鮮。新間氏は早々に失敗と見切りをつけようとしたが、前田日明やフロントが反発。そのまま継続することになる。そして藤原と高田が参加。このあたりの経緯はお馴染みだ。しかし、UWFはまだプロレスの範疇。何とかリアルファイトに近づけるべく、佐山は前田、高田、藤原らとともに無限大記念日大会の前日リハーサルを行うも、関節技中心のグラウンドはとてもファンの支持を得られそうもないとわかる。まだ、UWFはプロレスを離れられない。

その後の展開、新日へのUターン、第二次UWF、三分裂という経緯は記憶にしっかりと残っている。その時何が行われていたのか、改めて知る事実は興味深い。特にリングスの試合については、前田はフィクストマッチ(決着が決められている試合)を行い、それ以外ではリアルファイトが増えていったという。これは個人的に知りたかった事実なので、満足である。そしてリアルファイトは、パンクラスにてついに実現する。

著者の最後の言葉が印象的である。
「1984年に誕生したUWFはプロレスと総合格闘技の架け橋となり、役目を終えて消滅した」
カール・ゴッチの目指したものを日本で佐山聡が受け継ぎ火を灯す。今更ながら、佐山聡は大きな役割を果たしたのだとわかる。
読み終えて大いなる満足感を得る。かつてプロレスとUWFとに夢中になった人なら、読んでみてもいい一冊である・・・



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2017年05月09日

【西武信用金庫はお客さまを絶対的に支援する】碓氷悟史



第1章 西武信用金庫のお客様のすごさ
第2章 プロ経営者としての落合寛司誕生の原点
第3章 「年齢による定年制度の廃止」がもつ意味を考える
第4章 人事考課の快
第5章 西武信用金庫お客様支援センター(総合コンサルバンク)への道
第6章 落合寛司の経営哲学

 不動産業界に身を置いていると、そして特に「資金調達」という課題を抱えていると、西武信金の名前は少なからず耳にするはずである。最近、不動産融資を伸ばしていると評判だからである。そんな評判にプラスして、「定年制度を廃止した」「100人の求人に20,000人が殺到」など聞くと、嫌が上にも興味を持つというもの。そんな時に目にしたのがこの本である。

 著者は公認会計士、亜細亜大学教授という肩書きのあるコンサルタントで、西武信金の落合理事長とは亜細亜大学繋がりから執筆に至ったのだと思う。この手の本は、ともすれば「太鼓持ち」的になりがちであるが、そこのところは割り引いて読みたいものである。

 最初に西武信金の営業成績が掲載されているが、確かに現理事長になってからの成長は著しい。落合理事長就任前後の各指数は以下の通り。
1. 当期純利益5年合計:(就任前) 207億円 ⇨ (就任後) 274億円
2. 貸倒関係損失5年合計:(就任前) 7,269億円 ⇨ (就任後) 738億円
3. 貸出金:(就任前) 443億円 ⇨ (就任後) 2,104億円
4. 預金残増加額:(就任前) 778億円 ⇨ (就任後) 2,143億円
数字は嘘をつかないので、これは素晴らしいと思う。

 注目の定年制度廃止だが、これは正確に言えば廃止ではなく下記の選択制。
1. 定年のない現役コース
2. 嘱託で再雇用される嘱託コース
3. 60歳退職コース
 
 それぞれの事情に応じて選べるようなことが書いてあるが、よく読めば肝心の現役コースは条件がついている。それは「西武信金から選抜され、本人が同意すれば」というもので、「主として支店長などを対象」となっている。つまり、「できる人だけ」のようである。当たり前と言えば当たり前だが、全員が3コースの中から好きに選べるような書き方をしているのが気になる。

 そして、働くことや定年に対する考え方など、著者が絶賛する中村天風の引用がやたら多いのが気になる。西武信金に関係のない記述がダラダラと多い。薄い本なのにそれでページを稼いでいるので、西武信金についての記述は意外に薄い。年間一人当たり人件費が平均912万円から836万円に下がったと褒め称えるが、よくよく考えれば給料を下げたという意味であり、立場によっては不満を招くところである。

 ただ、人件費にしても20代で1,000万円とか、32歳で1,300万円という解説もあり、実力主義が徹底されているのかもしれない。下がったとは言え、836万円は高いと思うので、他と比べれば待遇は良いのかもしれない。本当はこういうところをもっと深く切り込んで欲しかったが、著者には無理だったのかもしれない。上っ面の記述に終始している。

 とは言え、西武信金に対する興味が薄れるというものではない。一読して疑問に思うところが多いも、それは著者の力量に問題があるのであって、西武信金自体に問題があるというわけではない。もう少しよく知りたいと思うところである。落合理事長の講演は一度聞いたことがあるが、今度はご本人の著述をそのうち読んでみたいと思うのである・・・



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2017年05月08日

【住友銀行秘史】國重惇史



プロローグ 前史
第1章 問題のスタート
第2章 なすすべもなく
第3章 行内の暗闘
第4章 共犯あるいは運命共同体
第5章 焦燥
第6章 攻勢
第7章 惨憺
第8章 兆し
第9章 9合目
第10章 停滞
第11章 磯田退任
第12章 追求か救済か
第13章 苛立ち
第14章 Zデー
第15章 解任!
第16章 虚脱
第17章 幕切れ
エピローグ あれから四半世紀が過ぎて

 「イトマン事件」と聞けば、その昔のバブル時代を象徴するかのような事件としての印象が残っている。当時駆け出しの銀行員であった私だが、実はあまり詳しいことは知らないできた。それを元住友銀行取締役の著者が当時を振り返って記したのがこの本。著者のことは、楽天の副会長になったニュースを記憶していたので、事件の当事者だったのかと改めて意外に思った次第である。

 まず初めに語られるのが、著者の簡単な略歴。なんとMOF担だったという。MOF担というのは今はほとんど死語であるが、銀行の「大蔵省担当者」のこと。当時の銀行にとって、主官庁の大蔵省は重要な存在。そこから様々な情報を取るべく、専門の担当者を置いていたのである。当時この仕事につくことは、「エリート街道に乗った」とも言われたものである。そして著者もその通りのエリート街道を歩んだようである。

 特に最初の支店長時代のエピソードは興味深い。なかなかのアイデアマンだったようである。その中で、当時の優秀な営業マンの仕事振りが紹介されているが、家に帰って奥さんに仕事を手伝ってもらっていたりして、その猛烈振りがすごい。でもよく考えてみると、当時はこんなことがあちこちで語られていたものである。著者のエピソードからしても、仕事のできる人だったことは間違いない。

 そして唐突に事件は始まる。この本は、当時著者が克明につけていたメモを元にしているという。そのせいか要所要所にメモ形式の記述が入る。時に1990年3月。商社であったイトマンの社長は住銀から行った河村氏。この人が伊藤寿永光なる人物を重用し、不動産投資にのめり込んで行く。そして許永中なる人物も絡み、美術品など住銀から出たお金がイトマンを通じて闇社会に消えて行く。このあたり著者の記述だけではどうも良くわからない。

 著者の主観で書かれているのはいいのだが、逆に客観性がないというか、事件の全体像がどうも分かりにくい。住銀の役員も多数出てくるが、人物関係がどうもしっくりしないまま読み進むことになり(いちいち確認するのも億劫)、ストレスが生じる。当時の住銀会長は、天皇と呼ばれた磯田一郎氏。私も名前くらいは聞いたことがある。そうした役員達と身近にいた著者による記述は、一般人にはうかがい知ることのないトップの様子であって、それはそれで興味深い。

 著者は、イトマンの深刻さを早くから掴み、愛行精神から行動する。されど保身や思惑にまみれた役員達の動きにイライラさせられる。日経新聞の記者に情報を流し、「従業員一同」の名前で大蔵省の銀行局長宛に内部告発文書を出す。これはこの本で著者が初めて暴露する事実だったようである。

 当時、住友銀行には大勢の行員が働いていただろう。その大半がこんな事実を知らないでいたわけで、トップに近いごく一部の人たちの世界のやり取りが実に興味深い。「メガバンクは守りの組織、徹底した減点主義で一回でもバツがついたらもうおしまい」と著者は語るが、自分は早々にバツがついた1人として、なるほどと思う。事件と合わせてそんな銀行の裏事情も興味深い。

 事件の全体像がイマイチ分かりにくいという難点はあるものの、銀行トップのリアルなやり取りは面白く、元銀行員として興味深く読めた。元銀行員でなくても面白いのではないかと思う。改めてバブルの時代は、異常な時代だったと思わされる一冊である・・・


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2017年01月18日

【世界を変える100の技術−日経テクノロジー展望2017−】日経BP社編



1章 すべてが変わる
2章 交通が変わる
3章 住まいが変わる
4章 医療が変わる
5章 産業が変わる
6章 危険から守る
7章 もっと早く、もっと便利に
8章 今なお残る課題を見極める

技術の進歩は日進月歩であるが、2017年は技術立国日本の底力を改めて発揮する転機の年になるという。そんな考えを持つ日経BP社の技術専門誌の記者一同が分野を問わず最先端の技術を集めて紹介したのが本書である。中にはもう見聞きしているのもあり、また初めて知るというものもある。興味深く読んだ一冊。

まず初めに登場するのが、「チャットボット」。チャットするロボットということであるが、ネットで花を買おうとしている人が、サイト上であれこれとチャットでやり取りし、注文に至る経緯が紹介されている。このチャットの相手をするロボットのことである。こういう「人に寄り添う」テクノロジーは、これからどんどん広がっていくのかもしれない。腹立たしいお客様コールセンターの対応(「○○の方は△番を押してください」というアレだ)ももっとスムーズになっていくのかもしれない。

面白かったのは、電気味覚フォーク。舌先に電気を流し、例えば塩味を感じさせるという。これによって塩分を控えないといけない高血圧患者の食事療法に生かせるという。音声認識はテレビに内蔵し、高齢者が口頭で簡単に番組予約をできるようにするという。一人で録画ができない実家の母には便利そうだ。腸内の健康状態を匂いで検知するにおいセンサー、体内に埋め込むインプラント機器、半身麻痺でも漕げ、階段も登れる車椅子等々生活も便利になっていく。

VR(仮想現実)は一般化してきているが、ポケモンGOのようなAR(拡張現実)もますます拡大し、やがてMR(複合現実)により目の前に実写映像のように映し出せるものが実現する。SF映画がますます現実化してくるわけである。自動運転の開発については、あちこちで目にし耳にしているが、その性能の良し悪しは、ソフト次第なのだという。Googleが手を出すわけである。さらにEV車の走行中給電技術により、もはや充電作業そのものが不要になるようである。

そしてやはり気になるのが医療技術。自己の免疫力で癌を叩いたり、臓器の3Dプリンティングや、次世代手術支援ロボット、高齢者見守りシステムなどは、ますますの高齢化社会を招き、その良きサポートになりそうである。昨今、IoTという言葉が一般化してきている。しかし今後は新しい製品やサービスを始めようとすると、何らかの形でIoTになるのだという。問われているのはIoTを使って新しい何かを打ち出す構想力だという。

こうなると、何ができるかというよりむしろ「人間がやることは何か」が問われていくという。それもまた面白い変化だと思う。そういう世界にきっちりついていかないといけない。周りの年配の人は、スマホを敬遠し、パソコンすら決まった利用範囲でしか使わなかったりする。「若い人にはついていけない」と口癖のように言うのを聞き、自分はそうならないようにせねばならないと思う。何事も意欲と好奇心なのかもしれない。

来るべき時代に備えて、一読しておいた方がいいかもしれない一冊である・・・




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2016年12月04日

【レクサス星ヶ丘の奇跡】志賀内泰弘



第1章 「お辞儀」ひとつでファンになる、「挨拶」ひとつで人生が変わる!
第2章 キング・オブ・レクサスと呼ばれるまでの苦難の道
第3章 「わかりません」「できません」とは言わない
第4章 すべての人に「ハグ」する気持ちで仕事をする
第5章 イノベーションは小さな気遣いから生まれる
第6章 サービスとは、先に「心」ありき
第7章 サプライズよりもプラスワン

 タイトルからもわかるように、この本はレクサスの店舗のひとつである星が丘店のサービスについて取り上げた本。レクサスの看板を掲げていても、実はそこはキリックスグループという独立法人の店舗であるようで、つまりはフランチャイズということである。同じレクサスでも実態は別会社ということで、だからサービスもそれぞれ異なるのであろう。そういえば、以前ホンダクリオ新神奈川のことを取り上げた『サービスの底力!』という本を読んだが、そのレクサス版と言える。

 最初に出てくるのは、店舗の入り口に立つ警備員。なんと1,000人のお客さんの名前を覚えているという。9時半が出社時間だというが、早く来るお客さんのために毎日9時に出社。お客様の案内は当然として、そのサービスは店舗前を通るすべてのレクサスにお辞儀するところにも表れているという。それがお客様に支持され、お礼状をもらったり、時にクレームの解決にも役立ったりしているという。

 そうしたサービスは、近隣にある三越に買い物に来るお客さんに無料で駐車場を提供したり、洗車したりというところにも及ぶ。営業マンが訪問するのは大変だが、それをやることによってお客さんから来てくれるのでありがたいという。そうしたサービスは、アシスタントと呼ばれるバックヤードのスタッフにも徹底されていて、電話番号を覚えてしまったり、プライベートで遭遇した事故現場でとっさの機転を利かせたりというところにも表れている。

 誰か一人優れている人がいるというより、全体にそうした精神が溢れているようである。そんなサービスを支えるのに必要なのは、マニュアルよりも心が先だとする。当然マニュアルもあるようであるが、マニュアルは形であるから、形ばかりできていてもそれで喜ばれるとは限らない。アソシエイト担当部長の言葉がとても参考になる。
 1. サービスとは相手を「思いやる心」
 2. 「思いやりの心」は、自分が幸せでなければ相手のことまで気が及ばない
 3. 健康でないと幸せとは言えない
お客様第一のためにも、自分の健康ありきというところは納得である。

 組織になると、どうしても出て来るのが「セクショナリズム」。その危険に気づき、セクションの壁を取り払うことを意識する。
お客様から頼まれない(=頼まれる前に気づいて実行する)。
サプライズよりプラスワン。
365日サービス体制。
こうしたことの結果、県外からもわざわざ星が丘店に買いに来ると言う。この店で買いたいと思わせたら勝ちである。

 こうしたスタッフ一人一人のサービスは、やれと指示してできるものではない。みんなが自ら率先してやろうとしなければやれるものではない。詳しくは触れられていないが、たぶんトップがそうなるような環境を作っているのだと思う。社主として紹介される山口春三氏の幼少時代のエピソードからその人となりがうかがえる。戦時中、男手がなくて耕せないでいた近隣の畑を頼まれもしないのに耕したのだとか。その時喜ばれた原体験が今も生きているのであろう。

 「見返りを期待せずに尽くせば必ず返って来る」
レクサス星が丘のサービスを読んでいて感じるのは、根底にあるその考え方だと思う。
 サービス業に携わるならば、是非とも心掛けたいことである・・・


  
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2016年09月15日

【冤罪 田中角栄とロッキード事件の真相】石井一



第1章 オヤジの側近として事件の渦中に
第2章 ロッキード裁判は間違っていた
第3章 真相を求め米国へ
第4章 米国の「陰謀」-その構図
第5章 何がオヤジを「闇将軍」にしたか
第6章 苦悩のゴルフとオールドパー
第7章 オヤジが枕元に置いた小冊子

最近、「田中角栄」がブームである。火付け役は、石原慎太郎の本であろうが、そのヒットを受けてなのかテレビ番組や関連本などが多数目につく。普段はそんな「便乗商法」には乗らない自分なのであるが、「元側近」が書いた「真相」に興味を持って、「便乗」に手を出した次第。

著者は、かつて「田中軍団の青年将校」と言われた政治家。50年前の昭和41年、神戸から立候補するにあたり、田中邸を訪れて初めて角栄に面会したという。その時激励とともに渡された封筒に入った30万円を渡される。今の価値にして300万円くらいらしいが、角栄といえば今でも「金権政治」のイメージがあり、それを彷彿とさせる。著者も「金権政治は事実」と認めている。ただし、角栄のお金は自分の商才で稼いでいたもので、他の政治家とは違うとも述べている。

かくして角栄から期待され、やがて側近になった著者。そこへロッキード事件が起こる。「逮捕」は寝耳に水であったという。当時の角栄非難の世論は凄かったと記憶しているが、著者は角栄批判の矢面に立ったという。当然、選挙にも落選し、それは著者のキャリアにも影響したそうである。ポピュリズムに走る最近の政治家と比べると、選挙に落選する覚悟であえて火中の栗を拾える政治家でもあることをうかがわせる部分である。

ロッキード事件は、ロッキード社のコーチャン副会長の「嘱託尋問調書」が発端となっている。事件の捜査段階で最高裁が不起訴確約の宣明書を出し、証拠採用する。のちに最高裁自身がこの証拠採用を取り消しているが、検察はこれを基に捜査を開始し、各証人から証言を集め、一審有罪に持っていく。手続き的に違法だとする指摘はその通りだと思うが、大事なのは「真実」はどうかという部分。ここも著者は米国の陰謀説を主張していく。

もともと角栄は総理大臣就任後、独自外交を進め、アメリカに先駆けて日中国交回復を成し遂げた。これが「米国の虎の尾を踏んだ」のかと思っていたが、その前に独自の資源外交も展開していたという。その相手には、アメリカが擁護するイスラエルと敵対するアラブ諸国や、冷戦中のソ連も含まれていたという。これが、キッシンジャーの怒りを買い、事件をでっち上げられたとする。「水を飲むのに井戸を掘った人を忘れない」とする中国からすれば、大事な友となるのであろうが(『中国で尊敬される日本人たち』)、飼い犬が逆らうことをアメリカは良しとしなかったのであろう。

著者は、真相を探るため独自に渡米し、味方として著名弁護士の協力を得る。しかし、田中角栄ご本人は無罪を信じきっていて、のちにこの弁護士の協力を断ってしまう。著者はその心境を「米国に仕掛けられたワナから逃れるのに米国人の手を借りたくないという日本人としてのプライドがあったと思う」と語る。それが果たして仇になったのか、頼んでいたら無罪となっていたのか、今となっては「もしも」の話でしかない。

読んでいて問題だと思うところは、マスコミの世論リードであろう。「有罪」一色の論調。そしてそれが世論に波及し、裁判官ですら無視できない雰囲気だっただろうと語る。裁判官がどの程度世論の影響を受けるかどうかわからないが、しかし当時から事件に疑問を投げかける主張はあったようであるし、中立的な報道をするところがあれば、ムードも変わったのかもしれない。しかし、現代に至るまでその傾向は変わらず、政治家はますます世論を気にするポピュリズムが蔓延してしまっている。

アメリカではいまだに機密指定されている資料があるそうだし、いずれ真相が明らかになるのかもしれない。そういう意味で、「歴史の評価」はいずれ定るのであろう。当初から信念を持って田中の無罪を訴えてきた著者が、この頃の角栄ブームでチャンスを得て、積年の思いを一気にぶちまけたかのような内容。著者の信念の迫力が随所に溢れている。冤罪を生み出す危険性はまだ内包されているようであるし、いろいろな問題にも気がつく。

単なる角栄ブーム本の一つと切り捨てるのは惜しい、一読の価値ある一冊である・・・



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2015年12月14日

【貧困女子】鈴木大介



第1章 貧困女子とプア充女子
第2章 貧困女子と最貧困女子の違い
第3章 最貧困女子と売春ワーク
第4章 最貧困女子の可視化
第5章 彼女らの求めるもの

何やら穏やかならぬタイトルであるが、格差拡大が危惧される我が国において、収入面でその底辺にいる人たちのうち、特に女性にスポットを当てたルポである。
タイトルの「最貧困女子」であるが、これは年収114万円未満で、特に10〜20代の女性を「貧困女子」というのに対し、さらにその下の層に所属する女性たちを指している。
何だか読むのを躊躇わせるものと興味とが混ざり合うタイトルである。

読んでいくと、そこには一括りにできない様々な実態があることがわかる。
単に年収が低いだけが問題ではない。
年収が低くとも、「プア充女子」と呼ばれる女性たちは、地域の中で仲間とシェアし助け合い、低い年収をカバーして生きている。

「貧乏」と「貧困」は同じようでいて実は異なる。
「貧乏」は単にお金がないだけ。
「貧困」は、それに加え「家族・地域・友人などあらゆる人間関係を失い、もう一歩も踏み出せないほど精神的に困窮している状態」だとする。

著者は、人は低所得に加え、「3つの無縁」と「3つの障害」から貧困に陥るとする。
「3つの無縁」とは、「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」であり、「3つの障害」とは「精神障害・発達障害・知的障害」であり、これらを複合的に抱えているのも珍しくはないらしい。
そんな女性たちの取材実例が紹介されていく。

女性たちが落ちて行く先は決まって風俗であるが、それも容姿によって「救われ具合」が異なるのは想像に難くない。
毎日出会い系サイトで「募集」しても、書き込みから何時間しても「応募」がないケース。
その「日銭」で二人の子供を育てる女性が登場するが、なんとも言えない気分になる。

著者もただ興味本位、金目的で取材しているだけではなく、それなりに苦境脱出の手助けを試みたらしい。
だが、ただ一人として改善に導けた例はないと告白している。
そしてやがて圧倒的不自由・悲惨・壮絶から、著者は「尻尾をまいて逃げ出」す。
読む者にとっても、いい気分がしないもので、直接接していれば当然かもしれないと思う。

そして著者は、そんな状況の改善策としてまず「小学生時代に救いの手を」としている。
何事も早めの対処が肝心なゆえ、それはよくわかる。
特に5時以降の時間外の「居場所ケア」「夕食サービス」については、いいアイディアだと思う。
だが、成人後の「セックスワークの正常化」案については、違和感を禁じえない。
こうした「最貧困」は可視化できないところに問題があるというのはよくわかるが、「セックスワーカーの社会的地位を高めていき、彼女らが労働者として保護されるようにする」という案は、なかなか過激だ。

まぁその意見の是非はともかくとして、週一回の副業でセックスワークに従事する女性とか、およそ普段考えもしない実態が描かれているところは、全くの興味本位であるが収穫であった。
何でもそうだが、世の中の実態を知るということは、改善の第一歩である。
いろいろと付随して考えさせられるところの多い本であることは確かである。
何もできるものはないが、世の中の事実を知るには良い一冊である・・・

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2015年10月08日

【なぜ今LOWSONが「とにかく面白い」のか】上阪徹



Chapter 1 「驚きのスイーツ」はいかにして生まれたか?
Chapter 2 そもそもコンセプトが違う「MACHI caféコーヒー」
Chapter 3 実は「保存料ゼロ、合成着色料ゼロ」製造工場の挑戦
Chapter 4 自社出資の農場から野菜を直送「ローソンファーム」
Chapter 5 「健康」に配慮された食品がなにげなく、続々と
Chapter 6 「Ponta」データ分析でリアルな消費行動を読み取る
Chapter 7 一点集中主義、「これぞローソン」を作りたい
Chapter 8 共存共栄を目指す対等なパートナー「FCシステム」
Chapter 9 「お客さまに来ていただくのではなく、お客さまに近づく」
Chapter 10 ローソン誕生40周年「180日プロジェクト」
Chapter 11 ローソンは、コンビニはどこへ向かうのか?

著者は、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか』『弁護士ドットコム困っている人を救う僕たちの挑戦』の著者でもあるフリーのライター。
どうやらこの手の” 企業モノ”が得意な方のようである。

普段利用するコンビニと言えば、セブンイレブンかファミリーマートという私であるゆえに、ローソンの品揃えについてはあまり知らなかった。
だが、それはちょっと損していたのかもしれない。
はじめに紹介されるのは、「驚きのスイーツ」と言われる「ローソンプレミアムロールケーキ」。
140種類の生クリームから選び抜かれた3種類の生クリームのブレンドで、女性の圧倒的支持を受けて人気商品となっているという。

「添加物を使わない」低糖質の「ブランパン」は、血糖値を気にする人に喜ばれているという。
そして今ではどこでもやっている「店頭コーヒー」は、ローソンでは店員さんが淹れてくれるという点で、他のコンビニとは異なる。
それは機械まかせだと、サービスが行き届かなかったり、ミルク系のコーヒーが出せなかったりするためだという。
そんな店員さんが淹れるローソンの「MachiCafeコーヒー」のスタートは、セブンイレブンより早かったらしい。

一日3万食以上の弁当、18万食のおにぎりは、こだわりの米を使う。
ローソンファームで作られた野菜を直送する。
おでんの大根は、畑で抜いて1時間以内に工場に運ばれるという。
「コンビニ弁当」と言えば、「それなり」と思っていたが、ここまで拘られるともうバカにできないものがある。

旬にあまおうのいちごを使ったサンドイッチは、ものすごい人気だという。
国産の高級魚を使ったおにぎりとなると、これはもう食べてみるしかないと思う。
牛ハラミのおにぎりもしかり、である。
私も持っているPontaカードで、顧客のリアルな消費行動を分析して活かしているらしい。

以前は、搾取されているかのようなフランチャイズ経営も、ローソンでは対等なパートナーシステムが導入されているという。
コンビニで唯一ミステリーショッパーを導入し、加盟店の自由度も高いようである。
ヘルスケアへの取り組み、介護相談窓口の設置など、進化は続いている。

社長は元慶応ラグビー部の玉塚氏。
現役のプレーヤーの頃から知っていて(もちろんテレビで、だ)、親近感もある。
これからもう少しローソンの利用を増やしてみようかと思っている。
と言っても、私の行動範囲内に店舗が少ないのがネックだ。

『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか』もそうだったが、こういう企業研究モノは、個人的に大好きである。
自らの仕事にも何か応用できないかと考えてみたりする。
役立つか役立たないかももちろんあるかもしれないが、単純に好きで面白いと思う人にはいいかもしれない。
また、別の企業を採り上げてほしいと思ってみたりする。
そのあたり、是非期待したいと思わずにはいられない一冊である・・・

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2015年07月08日

【パナソニック人事抗争史−ドキュメント−】岩瀬達哉



第1章 カリスマ経営者の遺言
第2章 会長と社長の対立
第3章 かくて人事はねじ曲げられた
第4章 潰されたビジネスプラン
第5章 そして忠臣はいなくなった
第6章 人事はこんなに難しい

タイトルには、「人事抗争史」とあるが、内容はと言えば、歴代社長間の対立・暗闘・苦闘とも言うべきものだろうか。
パナソニックトップの雲の上の話である。

パナソニックと言えば、「松下電器」。
そして松下電器と言えば、創業者の松下幸之助。
著者は、どうやらこの手のドキュメンタリーが得意なジャーナリストであるらしいが、さすがに「経営の神様」には批判の目を向けることはなく、その矛先は二代目社長の松下正治に向かう。

松下正治は、松下幸之助の娘婿であり、その縁もあってであろう二代目社長となる。
しかし、どうも経営者としての能力は「神様」に評価されていなかったようで、「神様」は生前三代目社長山下俊彦に「ポケットマネーで50億円用意するから、正治氏に渡し引退して二度と経営に口を出さないようにさせろ」と言い残したという。
ところが、これは猫に鈴をつけるような話。
山下社長はそれを実行せぬうちに、社長の座を四代目谷井昭雄に譲る。

四代目谷井社長は、「神様」の遺言を忠実に実行しようとするが、当然ながらの抵抗に遭う。
そしてそうこうするうち、「ナショナルリース事件」「欠陥冷蔵庫事件」と世間を揺るがす大事件が立て続けに起こり、谷井社長自身の進退問題となる。
そして、本社は迷走を始める。

松下電器は映像部門への進出を図るべく、アメリカのMCAを買収する。
ところが迷走する中、USJの提案を却下し、挙句にMCAを冷たく売却する。
のちに売られた先のシーグラム下で、USJが花開き、現在の成功につながる。
このあたりの事情は初めて知るところであり、興味深い。
判断を間違えていなければ、パナソニックの凋落もなかったのであろう。

また、時代遅れとなりつつあったブラウン管テレビに投資を集中させて、テレビ部門で出遅れ、さらに次世代のプラズマと液晶のうち、プラズマに舵を切って敗北を喫する。
まだどちらが有利かわからない時、松下電器の資金力なら両方進めることもできたという。
まぁこのあたりは運不運もあるかもしれないが、結果論としては経営判断の誤りは致命的だ。

コネと地道な取材を重ねたのであろうが、普通は知り得ないような「雲の上の話」は、それだけでなかなか興味深い。
神様の娘婿松下正治氏は、すっかり「諸悪の根源」だが、ご本人には当然言い分があるだろうし、片方の話だけの「欠席裁判」は公平ではないかもしれない。
ただ、一つの見方としては、面白い。
きっとどこの企業でも、雲の上の方はドロドロしていて必ずしも現実の空のようにスカッと晴れているということもないのかもしれない。

届かぬ世界を見上る下々の庶民の立場としては、純粋に面白がって楽しめていいのかもしれない一冊である・・・
   
 
posted by HH at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする