2018年05月15日

【世界最高の人生戦略書 孫子】守屋洋 読書日記919



第1章 戦わずして勝つ
第2章 戦況を見極める
第3章 知略で優位に立つ
第4章 逆転を狙う
第5章 将たる者の心得

最近、中国古典に興味を持っていて、論語や老子などを既に読んでいる。そしてこの本のタイトルを見つけ、迷わず手に取る。孫子と言えば、兵法。「彼(敵)を知り己を知れば百戦して殆うからず」はあまりにも有名である。そんな孫子は、2,500年前に孫武という人物によって書かれたのだという。著者は、中国文学者であり、中国古典に精通している第一人者とのこと。そんな著者が、孫子の中からキーワードとも言うべき名言を採り上げて著者なりの解説をつけたという一冊。

冒頭は、「敵を知り・・・」が採り上げられる。よく知りすぎている言葉であるが、では彼と己の一体何を知れば百戦百勝なのか。なかなか鋭い問いかけである。著者は「自分の勝てない相手を知る」ことだとする。つまり「相手を選べば良い」と。当たり前すぎるくらいだが、当たり前すぎるから真理だとも言える。

1. 戦勝攻取してその攻を修めざるは凶なり
 敵を攻め、城を奪取しても、戦争目的を達成できなければ失敗
2. 善く戦う者は勝ち易きに勝つ者なり。故に善く戦う者の勝つや智名なく勇功なし
 戦上手は無理なく自然に勝つので、勝っても知将は目立たない
3. 虞を以って不虞を待つ者は勝つ
 万全の体制を固めて、相手の不備につけ込む者は勝つ
4. 百戦百勝は善の善なるものに非ず、戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり
戦わずして勝つのが理想。
どれもこれも当たり前すぎる感じがするが、2,500年前に既にこのことが説かれていたという事実がすごい気がする。と言うか、真理はいつの時代も変わらないのだろう。

しかし、これは何と言っても兵法。戦いのための金言である。ビジネスに通じるものもあるとは言え、戦い目線のものは、応用しようにもできない。
「智将は努めて敵に食む」
これは、智将は現地で食料を調達するということらしいが、旧帝国陸軍はそれをインパールでやろうとして大失敗している。当時とは状況が違うところもあるのだろう。

「その来らざるを恃むなく、吾の以って待つあるを恃むなり」
敵の来襲がないのを期待するのではなく、的に来襲を断念させるような備えを頼みとすべしということらしい。希望的観測によるのではなく、自ら備えよという言葉はビジネスにも通じる。
「智者の慮は必ず利害を雜(まじ)う、利に雜えて努め信ぶべきなり、害に雜えて患い解くべきなり」
利益と損失の両面から考えるという意味らしいが、これもビジネスに通じる。

リーダーとしての心得も出てくる。
1. 先に暴にして後にその衆を畏るるは不精の至なり
   部下を怒鳴り散らしておいて後で離反を気遣うのは将として失格
2. 進んで名を求めず、退いて罪を避けず
   成功しても名誉を求めず、失敗しても責任を回避しない
3. 卒を視ること嬰児の如し 故にこれを深谿に赴くべし
   兵士を大事にすれば、どこまでも行動を共にしてくれる

流石に厳選されたものだけあって、どれもこれも真理だと思うものばかりであるが、やはり個人的にビジネスに通じる言葉に興味は止まる。あれこれ迷った時に、原理原則としてよりどころにできるかも知れない言葉がいろいろとある。考え方の基本として、持っておきたいところである。そんな参考にしたい一冊である・・・



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2016年03月27日

【China2049】マイケル・ピルズベリー 読書日記642



原題:The Hundred-year Marathon
序章  希望的観測  
第1章 中国の夢
第2章 争う国々
第3章 アプローチしたのは中国
第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
第5章 アメリカという巨大な悪魔
第6章 中国のメッセージポリス
第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)
第8章 資本主義の欺瞞
第9章 2049年の中国の世界秩序
第10章 威嚇射撃
第11章 戦国としてのアメリカ

著者はアメリカにおける中国の専門家。
もともとは親中派(パンダハガー)で、中国の軍事戦略研究の第一人者だったというが、長年の研究の結果、中国の野望に気づき警鐘を鳴らすようになったらしい。
そしてその主張をまとめたのが本書というから、なかなか興味をそそられる内容である。

ソ連に対しては、第二次大戦直後から冷戦に突入し、警戒感たっぷりだったアメリカだが、中国に対してはその警戒感は薄い。
それどころか中国に対しては以下の希望的観測に支配されている。
@ 中国は民主化への道を進んでいる
A 中国はアメリカのようになることを望み、実際、その道を歩んでいる
B 中国のタカ派は弱い
しかし、実際には、タカ派が北京の指導部を通じてアメリカの政策決定者を操作し、情報や軍事的・技術的・経済的支援を得てきたのだとする。

習近平は、中国共産党書記長就任時、「強中国夢」(強い中国になるという夢)という言葉を使い、それを2049年に実現させようとしているという。
2049年とは、中華人民共和国成立100年の年で、それまでの100年マラソンを行っているというのが著者の主張の骨子である。
(本書の原題もここからきている)

1970年代、中ソの対立もあり、米中の関係改善が進む。
1979年にはケ小平が訪米し、中国人学生の留学が始まる。
以来、結果的にアメリカの化学的・技術的専門知識の「史上最大の流出」が進む。
国内には反米的な動きが出ても、中国の指導部はアメリカの指導者の前ではそれについて何も知らないようなそぶりをする。
アメリカが中国の発展に貢献したという記述は、中国の教科書には全く載らない。
そんな二枚舌を使いこなしていたという。

さすがに中国の専門家であるだけに、普通の人が知りもしない知識がそこかしこに披露される。
「殺手鐗(シャショウジィエン)」というのは、それを持つ者は自分より強い敵に勝てるとされる古の棍棒らしいが、これが100年マラソンの軍事戦略の重要な要素なのだという。
そして中国の軍事力は、今世紀半ばまでにアメリカに勝るか少なくとも同等になると予測される。

様々な例証により、著者の考えが荒唐無稽なものではないということが説明されるが、今の中国の動きを見ていてもそれはなんとなく正しいと感じられる。
そして著者はそんな中国に対する対抗策も提案する。
・国家同士の縦の協力体制を作りあげる
・中国内の政治的反体制派を守る
・対米競争的行為に立ち向かう
・汚染者を突き止め恥じ入らせる
・汚職と検閲を暴露する
・民主化寄りの動きをサポートする
・中国のタカ派と改革派の議論を監視し支配する

日本としてどういう立ち位置でどう振る舞うかはなかなか難しいところ。
アメリカが絶対王者の世界が良いか悪いかを見極めるのも難しい。
名もない一個人に何ができるかという問題はあるものの、自分なりの意見は常に持っていたいと思う。
これは、そんな私の知見を広げてくれた一冊である。

   
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2013年01月19日

【中国外交 苦難と超克の100年】朱建栄 読書日記304



序章  中国の近代史を再検証する
第1章 中国はなぜアヘン戦争に負けたか
第2章 旧体制への「最後の一撃」−日清戦争
第3章 孫文が背負った「負の遺産」
第4章 蒋介石が手に入れた「史上空前の勝利」
第5章 二十一世紀中国外交の教訓

長年日本に滞在し、日中両国の事をよく知る著者。
これまでにも 「中国で尊敬される日本人たち」他の著作を読ませていただいているが、テーマ的にも興味を持って拝読した。

最近は中国脅威論があちこちで語られている。
しかし著者はそれを否定して言う。
「今日の中国は対外輸出と外資の導入を通じて世界経済に最も依存する大国の一つになっており、孤立と経済崩壊を招く軍事拡張の選択肢を取れない」
冷静に考えればその通りだと思う。
そんな前置きから、タイトルにある中国100年の外交史が解きほどかれる。

100年前の1911年。
辛亥革命によって清朝は倒れる。
西欧列強の侵略を受け、清朝政府は何もできないまま国土を西欧の支配下に奪われていく。
アヘン戦争にも負け、「屈辱の連続」である。
屈辱の相手は西欧だけでなく、隣の日本もまた然りである。

ここで興味深いのは沖縄を巡る日中外交交渉。
日本は1879年に当時の琉球に軍隊・警察を派遣し、首里城を摂収して沖縄県設置を布告するも、これを認めない清朝政府と対立。
清朝政府は琉球王国の宗主国の立場からの主張であった。
「沖縄は中国領」と今でも主張する人がいるのは、このあたりの経緯によるのだろう。
日中間では琉球分割条約の合意がなされ、契約一歩手前まで行くが、当の琉球側の反対もあったりしてまとまらず、やがて日清戦争となる。
このあたりの経緯は歴史好きには受けるところだ。

辛亥革命後も屈辱は続く。
日本との戦争が始り、同じく日本と対立する欧米から中国は仲間として迎えられる。
中ソ米英「4大国」としての地位を与えられるが、列強には裏切られ続ける。
口ばかりの支援だった米英ソに対し、この時期軍事面で中国を支えたのは、日独伊三国同盟を結んでいたドイツであったというのも面白い事実である。

「外交史」とあるが、それは歴史にほかならず、そしてお隣りであるがゆえに、日本に無関係でもない。
今や名実ともに大国となった中国は、「責任ある大国」とのイメージと新しい外交スタイルを世界に向けて発信していかねばならないと著者は語る。
そしてそのためには、周辺地域の諸問題に重点的に取り組み、全世界で評価されるような実績を積み重ねていくべきだと続く。
まさに、その通り。
されどそれをどう具体的に進めていくか、が問題である事は言うまでもない。

中国に対しては、尖閣諸島を巡って不穏な空気が漂っている。
警戒すべき相手なのか、それとも真の友人として付き合うべき隣人なのか。
相手を知るという意味では、有意義な一冊であると思う。

      
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2011年01月05日

【中国で尊敬される日本人たち】朱健栄 読書日記127

著者は東洋学園大学の教授。
中国生まれであるが、1986年に来日して以来日本に在住。
日中双方を知り尽くした方である。
個人的にも知っている事から、さっそく拝読。

現在、中国に対する我が国の国民感情はかならずしもよくない。
尖閣諸島問題を巡って、昨年はだいぶごたごたがあった。
ただ、何事も偏ってしまうのはよくない。
冷静に客観的に、長期的視点に立って考えていかないといけない。
そのためには相手の考え方を知ると言う事はとても効果的である。

この本は相手を知るという意味では少し違うかもしれない。
ここで取り上げられているのは日本人たち。
タイトルにある通り、戦後、新中国の建設に奮闘努力した日本人たちを取り上げている。
中国には 『水を飲むのに井戸を掘った人を忘れない』という言葉があるらしい。
この本では、そんな『井戸を掘った』日本人たちがとり上げられている。

冒頭に出てくるのは田中角栄に大平正芳。
日中国交回復時の我が国総理大臣と外相である。
今までは日中国交回復は、アメリカ追随外交の表れだと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。
というのも、キッシンジャー訪中でアメリカは中国との関係改善に乗り出したものの、一気に進んだわけではない。
ところが日本はそんなアメリカを追い抜いて先に国交回復してしまったようである。
アメリカからは「拙速だ」という圧力がかかったにも関わらず、田中角栄総理は押し切ったという。
歴史とはつくづくよく学ばねばならない。

有名人が取り上げられるのは、冒頭だけ。
以後はすべて無名の日本人たちである。
中国空軍創設に協力した旧軍人を始めとして、建国の革命戦争に協力した人たち。
ずたずたになったインフラ整備に関わった人たち。
文化大革命を生き抜いた人たち。
そして現代中国でも経済大国になる過程で貢献した人たちが数多く紹介されている。

著者はこの本の中で、ただ中国に貢献し今でも尊敬される日本人を列挙して終わりにしたくないと述べている。
これからどのようにして、中国でそして世界で尊敬される日本人になっていくのか考えるヒントにしてほしい、と。
どの国に対してであれ、長期的視点に立って考えていく事は必要な事である。
ましてやそれが隣国中国であれば尚更であろう。

取り上げられている人たちは、いずれも私利私欲を越えて活動した人たち。
驚くのはその数の多さ。
この本でもすべての人が取り上げられているわけではない。
いたずらに対立的な部分を取り上げるだけでなく、この本に出てくる人たちの如く、多角的に考えていきたいものである・・・


     
中国で尊敬される日本人たち [単行本(ソフトカバー)] / 朱 建榮 (著); 中経出版 (刊)

   
     
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