2017年03月02日

【書く力−私たちはこうして文章を磨いた−】池上彰/竹内政明



第1章 構成の秘密-「ブリッジ」の作り方
第2章 本当に伝わる「表現」とは
第3章 名文でリズムを学ぶ
第4章 悪文退治

 個人的にブログもいくつかやっているし、「書く」ということについては、そもそも興味を持っていたこともあり手にした一冊。テレビですっかりおなじみの池上彰と「読売新聞の一面を下から読ませる」と称されるコラムニストとの対談である。

 「書く」と言っても、ここでは読売新聞の「編集手帳」のようなコラムが念頭にあるようである。そういう文章を「書く」場合、最初に出てくるのが、「ブリッジ」の話。テーマとそして自分の書きたいものをつなぐブリッジをどう見つけるか。プロの例を見ればなるほどと思えるが、上手いものである。そして「まずは何を書くかはっきりさせる」という当たり前の説明から入る。一つのヒントが「身近な話」。半径2〜3メートルの世界の話は、その人自身の小さな経験であるが、だからこそ興味深いのだとか。

 書くべき内容がどうしても見つからない場合は、「何でもいいから書いてみる」のがいいとする。そうすることで自分の考えがまとまってくると言うが、これは私自身も経験している真実である。また、テーマが決まったあとは、「書き出し」だと言う。「うまく浮かばなければ別のテーマにしてしまう」くらい大事にしていると言うが、これはなかなか難しい。書くべき要素を「とにかくまず書き出してしまう」と言うやり方はいいかもしれない。今度ブログを書く時試してみようと思う。

 文章を書く上で、いろいろな「部品」が必要になる。それは探しにいくとするが、お二人のレベルになると常時ストックしているらしい。過去の編集手帳の例が取り上げられるが、ヴェルレーヌの詩やジョーク、エピソードなどの「部品」がふんだんに使われている。このあたりは普段の意識だ。また、例えば「すごく悪いことをした犯人の弁護士になったら自分はどうするか」と言った思考実験も効果的だと言う。

・わかっていることをわかっている言葉で書く
・とにかく「削る」練習をする
・言葉選び、言葉への関心は文章への関心につながる
なるほど、随所で出てくる言葉は、さすがに参考になる。

 中でも膝を打ったのが、「自分の文章を時間を置いてから読み直す」と言うこと。これは私もよくやっている。自分のブログを後から何度も読み直している。それは多少、と言うかかなりナルシスト的な意味合いなのだが、そうすると直したくなることがかなりある。「1週間くらいは寝かせてそれからプリントアウトして読み直す」「メールは一呼吸置いてから読み直す」としているが、その通りだと思う。名人が同じことを言ってくれると嬉しくなる。

 また、「名文を書き写す」ことも良いとされる。これも個人的にやっている。よく小池真理子の本を読んだ時に、ラストシーンなど自分で気に入ったところを書き写している。自分のやっていることは間違っていなかったと言う嬉しさがこみ上げる。もっとも実際のやり方としては文字通り「書き写す」のがよく、何度も書いてリズムを体に馴染ませるのだとか。このあたりの徹底は、自分ではしていなかった。

 さすがに文章の達人の言葉は、色々とタメになる。自分ももっとうまく書けるようになりたいと思うし、この本に書かれていることをぜひ参考にしたいと思う。まずは日頃の意識からが、この本から得られた教訓。大いに学びの得られる一冊である・・・
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2016年09月22日

【老子-もう一つの道】原田禎忠



 中国古典の一つである老子。その専門書は多々あるのだろうが、自称専門家でない著者が、「古の智慧を生かす道はどうあるべきか」を考え、字句解釈や逐語訳にこだわらず話の精髄を咀嚼した自由訳を試みたのが本書であるという。そして老子の思想の本源をなす「道」という概念。これは今の世界の主流とは異なるものの、今こそ我々が追求するべきものではないかと考えた著者が、タイトルをあえて「もう一つの道」としたそうである。自然と内容に興味をそそられる。

 一読してやはり難しいのが、「道」の理解である。「道とはすなわち歩んでいれば万人をいずこかへ載せ連れて行くものである」という。すべての存在に先立って存在し、中身のないようでいながらとてつもない充実がその中にある。そしてその存在を確信する方法は直観だとする。結局、一読してもその正体はなお漠然としていて、言葉での説明は難しい。だが、そもそもそういうものでもあるようである。

 一方、具体的行動を示すものはわかりやすい。
・正しいことでも大きな声で主張すべきでない
・多言は無用
・無私-事業を成就したくば、私心を捨て欲望を捨てること
・違った発想をしてみる

 また、言われてなるほどと思わせられる真理もある。
・水はすべての存在を生かし、すべての存在にとって役に立つ。水は他とは争わない。
・満つれば欠ける
・静かなる者、受身の者、下にある者が制する
・恨みに報ゆるに徳を以ってする
・争わない人とは誰も争わない

 さらに普段それとは知らず使っている言葉が出てくる。
・大器は晩成す
・天網恢々、疎にして漏らさず
これらのことわざ(四字熟語になっている)は、出典が老子ということであり、浅学の身には意外な発見であった。
いかに古くから中国古典が読まれてきたかという証だとも言える。

 大海はあらゆる谷の水が集まってくる。すべてのものより低いところにいるからこそ、いわば「百谷の王」となれたという言葉には唸らされるものがある。平和を愛し、戦争を憎み、人と争うことを避ける。強剛よりも柔弱を尊ぶ。こう言う生き方を誰もがしていたら、世の中は平和な楽園と化すに違いない。それは決して難しいことではないと思うが、誰もが実践するとなると難しいのかもしれない。

 いずれにせよ、こう言う心持ちで暮らしていたら、心中穏やかでいられるのかもしれない。「道」という概念はうまく説明できないものの、なんとなくイメージとして理解できる。まともに読めば、小難しくて抵抗感ある古典も、このようにゆるやかに解説を兼ねて示されると素直に理解できる。中国古典初心者にはいいかもしれない。電子書籍だけであるが、一読してみたい内容である・・・


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2016年07月07日

【新人OL、つぶれかけの会社をまかされる】佐藤義典



プロローグ 宣告
第1章 屈辱
第2章 奮闘
第3章 希望
第4章 確信
第5章 決着

著者は、マーケティングコンサルタント。いつもメルマガを愛読しており、その関係でこの本の存在も知っていたが、改めて読んでみようと思い至った次第。本書を一言で表すと、「物語をベースとした超わかりやすいマーケティングの入門書」と著者は自ら語る。内容は、そう著者が語る通り中堅商社広岡商事の新規事業室に勤める売多真子が、ある日社長に呼ばれ、経営不振のイタリアンレストランの立て直しを命じられるところから始まる。

2ヶ月の期限が与えられ、改善案の提出を命じられる。できなければ店も閉店となり、新規事業室も解散となる。上司の大久保からは「任せる」とだけ言われた真子は、問題のレストラン「リストランテ・イタリアーノ」の改善案を作ることになる。突然の指示に戸惑いながら、真子は親戚であるマーケティングコンサルタントの勝に連絡し、アイディアをもらうことにする。こうしてレストランの経営改善案を作るというストーリーが始まる。

ドラマ仕立てで何かを学んでいくというスタイルは、これまでにも『もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの【マネジメント】を読んだら』『女子高生ちえの社長日記』などがあったが、難しい理論を理解しやすくしてくれるという効果がある。それはたとえばの例とともに説明されるようなものであり、イメージもしやすくなる。何となく子供っぽい気がするが、それはそれで飲み込む方がいいように思う。

本書全体を貫くキーワードは、「一貫性」と「具体性」。「一貫性」とは、論理的であるということ、そして「具体性」とは肌感覚と説明される。お客様と言った場合、それは具体的にどう言うお客様なのか、「強み」といった場合、それは具体的にどういうことなのか。分かってはいても、ついつい具体性のないイメージで語っていることがよくある。ストーリーの合間にきちんとした説明が挿入されているので、より理解しやすい。

最初の教えは、「ベネフィット」。ベネフィットとは、「お客様の立場で考える価値」。レストランだから、それは「おいしいもの」とするのは短絡的。お客さんは料理だけでなく、店の雰囲気や楽しさなどを求めているかもしれない。そう教えられた真子は、お客様が「他店ではなくこの店に来る理由」をお客様アンケートによって考えていく。

個人的に参考になったのは、「手軽軸」「商品軸」「密着軸」の考え方。何に力点を置くかで、店作りは決まってくる。「誰もに愛される」ことを目指すと「誰にも愛されなくなる」のはよくわかるから、この切り口は大事である。それぞれ何に力点を置くかで、他店との差別化も異なってくる。
1. 「手軽軸」なら競合より早い、安い、便利で差別化
2. 「商品軸」なら競合より高品質、新技術で差別化
3. 「密着軸」なら競合より顧客の「個別」ニーズに対応した密着感で差別化
とされており、この説明もよくわかる。

こうして周りの人たちの協力を得て、新しい店「そーれしちりあーの」が誕生する。ストーリー自体は、単純で予定調和的であるが、それはこの本の目的がストーリーでないゆえに仕方ないであろう。何より、マーケティングの考え方がよくわかる。仕事でマーケティングは関係ないというのではなく、ビジネスマンならこの程度は知っていたいところである。そういう意味では、手軽に学べるマーケティングの教科書として、読んでもいい一冊である・・・


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2015年11月15日

【競争しない競争戦略-消耗戦から脱出する3つの選択-】山田英夫



第1章 競争しない競争戦略 
第2章 ニッチ戦略
第3章 不協和戦略
第4章 強調戦略
終 章 薄利の奪い合いからの脱却

自らの会社の存続を考えると、自ずから「戦略」というキーワードに反応するようになる。
それも血みどろのレッドオーシャンにいる場合は、どうしてもブルーオーシャンへ移動したくなる。
そんな時、この本のようなタイトルを見れば、手が出るというものだろう。

「競争しない」とは、実に甘美な囁きであるが、そのためには、リーダー企業と「棲み分ける」か「共生する」かであるとする。
そしてその具体的な方法として、「ニッチ戦略」、「不協和(ジレンマ)戦略」、「協調戦略」の3つがあるとする。
なんだか教科書みたいだと思ったら、本当にその通り。
著者は、早稲田大学ビジネススクールの教授であり、これは教科書的な位置付けの本であった。

「競争しない」と言っても、まったく競争がなくなるということはありえず、この本では「競争しない」ことを「既存の業界リーダー企業と争わないこと」と定義している。
はじめに紹介されるのは、「ニッチ戦略」。
ニッチとは、単に売り上げが小さいことを意味するのではなく、「リーダー企業と争わない」という点で、「差別化」とも異なる。

ニッチにも種類があり、「量」と「質」の軸から「技術」「チャネル」「特殊ニーズ」「空間」「時間」「ボリューム」など10種類が挙げられている。
そしてそのそれぞれに具体的企業が紹介されていて、理解しやすくなっている。
例えば、手術用の縫合針のマニー、経営者死亡保障に特化した大同生命保険、北海道に特化したコンビニのセイコーマートなどは、テレビや身近な例として知っているので、イメージしやすい。

不協和戦略には、@企業資産の負債化A市場資産の負債化B論理の自縛化C事業の共食化の4類型がある。
@は、文字通り企業の資産が価値を持たなくなるようにするもので、営業職員を多数抱えた既存の生命保険に対し、ライフネット生命保険が仕掛けた「ネット専業保険」が例示される。
Aは、POSレジの大手企業東芝テックに対し、スマホ決済で対抗したスクエアやペイパルなどである。
Bは、リーダー企業が顧客に説明してきたことを覆せず、有効な対抗策が取れないもので、それまでの「掲載課金型」のリクルートに対し、「成果報酬型」で成功したアルバイト求人のリブセンスが例示される。
Cは、リーダー企業が事業の共食を招くことになるため参入できないもので、従来のスポーツクラブに対して、プールや風呂を持たないフィットネスクラブを展開するカーブスのような例である。

不協和戦略は、リーダー企業が圧倒的な力を持っている業界こそ効果があるというところが特徴である。
これはなかなか心強い。
「自分の業界は大手にかなわないから」と思っているなら、知恵を振り絞ってみる価値はありそうである。
我が不動産業界はどうだろうか。

協調戦略は、「バリューチェーンへの組み込み方(自社のVCか他社のVCか)」及び「機能の代替か追加か」によって4つに類型化できる。
「自社による航空機エンジンの製造」から「他社をも含むエンジンの予防保全・補修・スペアパーツ管理」へ転換を図ったGE。
他行の引き出し手数料で収益を上げるセブン銀行。
他社製品も含めて配達するオフィス・グリコ等々。
改めて説明されるといろいろあるものである。

内容的には、はっきり言って「教科書」である。
理屈を理解するには優しくまとめられていて、若手向きであろう。
ある程度のレベルの人なら、自社の事業と見比べてみて、あれこれと事業展開を考えてみるようにしないとダメであろう。
その際の良い指針となりうるものである。

ゆっくりと自社の事業モデルを考えてみたいと思うのである・・・

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2015年10月25日

【日本語(上)(下)】金田一春彦



序章 日本語はどういう言語か  
第1章 世界の中の日本語
第2章 発音から見た日本語
第3章 語彙から見た日本語
第4章 表記法から見た日本語
第5章 文法から見た日本語(1)
第6章 文法から見た日本語(2)
第7章 日本人の言語表現
終章  日本語はどうなる

金田一 と言う名前を聞くと、まず二人の有名人の名前が挙がる。
一人は探偵で、実在の人物ではないが、横溝正史の小説で有名だ。
そしてもう一人は、その名を聞けば自然と国語辞典を思い起こす。
この本の著者は、その後者の方。
まさに、国語辞典と大いに関係ある、タイトルもそのものズバリの「日本語」の本である。

我々が日常当たり前のように使っている日本語であるが、世界から見ると改めて気付かされることがある。
例えば、街を歩いていて、タバコを買いたいと思った時、あの店で日本語が通じるかどうかを心配しなくて良いという指摘である。
当然ながら、世界に出れば、そういう心配をしないといけないところもあるわけである。

我々の社会は、そんな単一言語の社会であるが、実は一つの言語だと言っても外国人からするとわかりにくい「変化」があるという。
「いつ江戸へ来たか」という表現をとると、
「いつ江戸へお出でなされました」
「いつ江戸へお越しでございました」
「いつ江戸へ御座った」
「いつ江戸へ参られた」
「いつ江戸へ来なさんした」等々、武士や町人や男女など使う人によって様々変化する。
外国人からすると難解かもしれない。

単一言語と言っても、実は方言の違いで、国内でも互いに何を言っているかわからないというケースはある。
例えばウラル語族では、その中で方言が別の言語として発展しているらしい。当然、互いに言葉は通じない。
日本語はそれより5倍以上も多い人口がいるが、「標準語」という共通言語があるから「日本語」という言語で互いに相通じる。
この点が「日本語族」の特徴なのだという。
これら最初の「世界の中の日本語」という見方は、掴みとして非常に面白い。

発音から見た日本語もまた独特で、著者は「拍」という概念でそれを説明する。
「拍」とは、「一番小さい音の単位」だそうで、例えば「春」だと「ハ」「ル」がそれにあたるそうである。
これが外国人には難しいらしく、例えば「討論会」だと、「ト・ウ・ロ・ン・カ・イ」で6拍であるが、外国人からすると、「トウ」「ロン」「カ」「イ」と4拍になってしまうのだという。

この拍は外国語に比べて少なく、そのため日本人は小学生の低学年から、ひらがなを覚えればほぼすべての単語がわかるようになる。
ところが、例えば英語だと、dogにしろcatにしろ一つ一つ教わらなければ書くことができない。
このメリットは大きいだろう。

語彙でいけば、各言語ともその背景にある文化の影響が大きそうである。
英語ではcow,oxなど雌雄で使い分けるが、日本語では「牛」である。
逆に日本語では魚の種類が豊富だが、インドではレストランで何の魚か尋ねたところ、sea fishで済まされたという例が紹介されている。
そういえば、兄も弟も英語ではbrotherだし、違いを表現するならelder brotherと2語になってしまう。

表記法も面白く、例えば漢字で「コ」を使う場合、「親子」なら「子」の字を使うが、だからと言って「心」を「子頃」とは書かないなど、当たり前のように理解していても、改めて指摘されるとなるほどと思わざるをえない。
「時雨」は「シグレ」と読むが、「時」は決して「シグ」とは読まず、「雨」も決して「レ」とは読まない。

最後の他人への考慮を表す表現が日本語らしくていい。
例えば「お茶が入りました」を主語がはっきりしている英語などの言語では、
「私があなたのためにお茶を入れた」となり、なんだか押し付けがましい。
「お風呂が沸きました」
「ご飯ができました」
などもそうであるが、いかにも自然に用意されたかのごとき表現で、著者によれば「優しい表現」になっている。

総じて「日本語」と言っても、新たに何かを学ぶという内容ではない。
我々が普段何気なく使っている日本語の、気付かないでいた一面を教えてくれるものとなっている。
「日本語トリビア」と言ってもいいかもしれない。
1988年出版で、多少時代を感じさせるところはあるが、自分たちの母国語を改めて学ぶのに古さはないだろう。
日本人の教養として、知っておいても損はない。
改めて「日本語」を意識させてくれる一冊である・・・
   
    
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2015年07月02日

【未来予測の超プロが教える本質を見極める勉強法】中原圭介



第1章 物事の本質を見極めれば、人生はきっとうまくいく
第2章 本質を見極めるためには、まず「歴史」と「宗教」を学ぶこと
第3章 学問の雑食をすると、思考の幅と奥行きが広がる
第4章 歴史を中心とした学問の融合が大局を判断する力をもたらす
第5章 本当に深い理解を得るための書籍・新聞の読み方
第6章 経験知を積むと直感を発揮できるようになる

著者は、個人的にいつもマークしている経営コンサルタント兼経済アナリスト。
先日も『これから日本で起こること』を読んだばかりであるが、この本はちょっと趣向が変わって「勉強法」の本。
実は「勉強法」の本も興味があって、たとえば昨年は『東大教授が教える独学勉強法』を読んだし、過去にもいろいろ読んでいる。
著者と「勉強法」と二つのキーワードがマッチした興味深い本として、この本を手に取ったわけである。

経済アナリストとしては、常に鋭い視点で物事をとらえている著者であるが、それにはタイトルにもある通り、「物事の本質を見極める」必要がある。
そしてそのためには、ある特定の分野の知識だけではなく、多種多様なジャンルの知識を学ぶことが求められているという。
それは大いに共感できることである。

勉強法と言っても、記憶法のようなものではない。
「とにかく幅広いジャンルの書籍をできるだけたくさん読む」
「毎日新聞を読む」
「社会人は書籍より新聞」
と至ってシンプル。
だが、個人的には大いに納得。
かく言う自分もこのブログにある通り、本に関しては“雑食”だと思う。

「偏った情報ではなく、さまざまな情報を手当たり次第に吸収し興味を広げる」ことが大切で、それゆえ自分の好みの情報を集めがちなネットはダメだという。
そして中でも哲学を学ぶことが重要で、「構造主義」「ポスト構造主義」「ポストモダニズム」の3つの思想を学ぶことが、哲学的な思考を高めるには一番効率的だとする。
ここはごっそりと抜け落ちているから、今度このジャンルの本を読んでみたいと思う。

感心したのは、資本主義のゆくえに対する意見。
安い労働力を求めて、各国を移動していくのはこれまでの流れ。
されど最近は「世界の工場」と呼ばれた中国も人件費が高騰しているという。
変わってベトナムやミャンマーなどの国が浮上してきているが、いずれ同じ道を辿るだろう。
著者はやがてその流れはアフリカにおよび、そしてその先はなく、「資本主義の成長は30年以内に限界を迎える」とする。
個人的には漠然と感じていたことだけに、腑に落ちる。

最後に「直感」と「ひらめき」が語られる。
両者は同じもののような気がするが、その違いは、「思いついたことに理由がはっきりとわかるかわからないか」らしい。
「直感」はその理由がわからないもの。
ただ、「直感」は「ひらめき」よりも物事の本質を見極めていることが多いとのこと。
「直感」型の経営者の代表は、セブン&アイの鈴木会長、「ひらめき」型の代表はソフトバンクの孫さんだとする。
このあたりは、ちょっと難しい。

ともかく、大事なことは考えること。
「考えるという行為の繰り返しによって世の中を俯瞰し、大局を判断し、本質を見極める洞察力が磨かれていく」とする。
その言わんとするところは、まったく同感である。

まだまだ限りなく学び続けたいと思うし、これまで抜け落ちていた哲学の3つの思想分野にも挑戦してみようかと思う気になった。
参考図書も挙げられているし、是非トライしてみたい。
経済分野に限らず、学び多き著者である・・・

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2015年04月16日

【逆転の競争戦略】山田英夫



第1章 リーダー企業の強みは永遠か
第2章 リーダー企業はなぜ転落するのか
第3章 業界破壊者の戦略
第4章 侵入者の戦略
第5章 挑戦者の戦略
第6章 リーダー企業の対応

著者は、早稲田大学ビジネススクールの教授。
その教授が、タイトルにある通り、「逆転の競争戦略」について解説した一冊である。
ここでいう「逆転」とは、「2位の企業が1位の企業を『逆転』する」だけではなく、「1位企業の『強み』を『弱み』に変える」戦略の意味もかけられているのだという。

初めに、いわゆる老舗企業などのリーダー企業が衰退する例が挙げられる。
パソコンでは、マイクロソフトが「エクセル」や「ワード」のアプリケーションソフトや「インターネット・エクスプローラー」などをウィンドウズに同梱する方法で先行する企業を駆逐し、グーグルは無料検索でその地位を確立した例である。
タワーレコードは倒産し、百科事典の平凡社も壊滅的打撃を受ける。
リーダー企業といえども、その地位は安泰ではない。

リーダー企業の地位が崩される理由は、その地位を脅かす敵が登場するためで、その敵は3つに分類される。
業界そのものを破壊してしまう「業界破壊者」、違う業界から侵入してくる「侵入者」、そして2位以下の企業の下剋上である「挑戦者」である。
「業界破壊者」の例としては、CDを圧迫した音楽配信、電子手帳に対するiPhoneなどであり、「侵入者」としては、銀行業界に進出したセブン&アイホールディングスやオリックス、「挑戦者」としては、トヨタ自動車に対する日産自動車などである。

そして上記の3つの敵については、それぞれ実例を上げて詳説される。
実例に採りあげられるのは、名だたる有名企業ゆえ、具体的イメージも湧いて理解しやすい。
リーダー企業からも、なぜそうした逆転戦略に対抗できないかが説明される。
それらは、「企業資産の負債化」、「市場資産の負債化」、「論理の負債化」、「事業の共喰化」として説明される。

書いてあることは、特段難しいことではない。
すべて、身近な事例を、学術的に整理分類したといえる内容である。
「事業の共喰化」と言われてもピンとはこないが、トヨタ自動車は車の販売減につながるカーシェアリングには参入しにくいと言われれば、理解は早い。
言うなればこの本は、そうした「実例の学術的言語化」とでも定義できそうな位置付けである。

こうした本は、ただ読んでいても、単なる事例の羅列でしかないだろう。
具体的に「(たとえば)自分の仕事(=業界)ではどうだろうか?」といった目的意識がないと、あとには残らない気がする。
漫然と読んでいても、読み流して終わりになる気がする。
まぁ、それでも実例豊富なため、単純に読んでも面白いといえるかもしれない。
ただ、やはりこの手の本は、何かを得ようとして読むものであると思えるのである。

何か自分の仕事(=業界)に活かせないだろうか。
そんな目的意識を持って、読みたい一冊である・・・


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2015年02月11日

【統計学が最強の学問である「実践編」】西内啓



序 章 ビジネスと統計学を繋ぐために
第1章 統計学の実践は基本の見直しから始まる
第2章 統計学が「最強」であるもう1つの理由
第3章 洞察の王道となる手法群
第4章 データの背後にある「何か」
終 章 統計手法のまとめと使用の手順

以前から統計に関心を持っていたのだが、そんな時に目にしたのがこの本の前段とも言える『統計学が最強の学問である』
読もう読もうと思っているうちに、とうとう『実践編』が出てしまった。
迷った挙句、『実践編』に手を出したという次第。

統計学が優れている事を否定するつもりはないが、如何にして実用的に利用するかは大変興味深いところ。
その点については、この本は、“洞察”ということに力点を置いて説明していく。
ビジネスという現場で利用することを念頭に置いたという説明は、先を読む楽しみを与えてくれるものであった。

しかし、やはりどんなに「簡単に説明した」と言われても、難しいものは難しい。
「平均値」の解説であるところあたりはまだ何とかなる。
「最小二乗法」やデータのバラつき、正規分布や分散も大丈夫。
「中心極限定理」など初めて目にする言葉も出てくるが、標準偏差などもストライクゾーンだ。
だが、「帰無仮説」や「p値」、「z検定」などという言葉が増えてくると、厳しくなってくる。

その後も「t検定」、「カイ二乗分布」、「フィッシャーの正確検定」と続く。
「ロジスティック回帰」については、「二値論理に関するアウトカムを分析するための回帰分析」だと説明されているが、正直言ってついていけない。
さらにたとえ理解できたとしても、実践に至っては、『「どの説明変数をいくつぐらい使って分析すればいいのか」という手法に対するインプットの面と、「出てきた結果からどういう意味を読み取り、どう解釈してどうアクションを取るのか」というアウトプットの面の2つに分けて整理』しないと難しい」と述べている通り、応用が困難だ。
実際に本に載っている例でも、切り口をちょっと変えると、まるで違うものとなる。

おそらく実践の場でも、「データをどういう切り口で分析するか」、「その結果から何を得るか」というのが最大のポイントとなる。
採り上げられている解説は、なるほどついて行ける人はついて行けるのかもしれないが、そのあたりはあくまでも「やってみなければわからない」ようになっている。
手法はわかっても、果たして応用に使えるのかという疑問である。
まぁ、そこは「理解できる人ならできる」世界なのかもしれない。

結局のところ、この本はしっかりとした知識なしで読んでも参考にはならない。
『重回帰分析とロジスティック回帰分析でアイデアを探索し、必要に応じて因子分析やクラスター分析で変数を縮約し、最終的にランダム化比較実験とt検定やz検定でそのアイデアの有効性を検証する、という手順を実際に踏んでいけば、あなたのビジネスもきっと新たな「儲かるアイデア」に辿りつけるはずである』と著者は述べるが、出てくるのは溜息だけである。

巻末には、本文で説明されていた数学的な部分について、「優しく」解説されているが、高校数学などはるか遠い記憶の彼方の人間にとって、これすら難解である。
あらためて微分積分から学び直さないとダメだ、と思わせられる一冊である。

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2014年11月16日

【東大現代文で思考力を鍛える】出口汪



序章  東大が投げかける、受験生へのメッセージ
第1章 常識に縛られない思考を作る4問
第2章 現代の問題系を理解する4問
第3章 芸術と文化の見方を学ぶ3問

東大の入試に出された現代文を紹介するというちょっと珍しい一冊。
と言っても受験指南書ではなく、あくまでも東大の入試問題に使われた現代文を取り上げ、それを解説することで面白さを味わってもらおうというもの。
理系の人からは敬遠されるかもしれないが、こういうのが結構好きな自分としては、食指が動いたという次第である。

はじめに「東大の現代文ほど、面白いものはない」と著者は語る。
「東大の現代文入試の問題は、東大がその年の顔として、まさにメンツを懸けて探してくる文章である」と聞くと、確かにそうなのだろうと思う。
「この世界で生き抜くための、そして人生をより豊かにする教養が、ふんだんに盛り込まれている」というイントロの解説は、その先を期待させるものである。

そしていよいよ現代文が各種採りあげられる。
構成は、「作者の紹介」→「当該現代文(問題分)」→「著者の解説」→「実際の問題1問」→「補講(補足説明)」という形になっている。
中心はやはり「当該現代文(問題分)」なのであるが、それだけだと理解が難しい。
著者の説明で、なるほどと思うのである。

紹介される作者は、福永武彦、木村敏、小池昌代、大森荘蔵・・・とせいぜい何とか名前だけ聞いた事があるという程度で、大半の人は知らない。
どれもお固い文章かというとそうではなく、固いのから柔らかいものまである。
ただ、例えば「木村敏『異常の構造』」など、そもそも普段まず間違いなく読む事はないだろうというものばかりである。
どれも大学入試以来ではないかと思うくらい“異分野”の文章である。
それがかえって良かったと個人的には思う。

そして各文章には、実在の問題が1問ついている。
国語の問題によくある「文中の傍線部分の意味はどういうことか」というような問いである。
ずばり正解というのはなかなか難しかったが、だいたい近い線いっていたというのもあり、まあ世の中に出てから磨かれた文章読解力だろうかなどと思ったりしてみた。

最後に補講の部分では、さらに深く学びたい人へ向けて関係する作品を紹介してくれている。
哲学や詩集や小説などいろいろあるが、いくつかはそのうち読んでみようとメモしておいた。
人によって感じ方は違うかもしれないが、さらに深く学んでみたいという気にさせられる。
「思考力を鍛える」というタイトルに嘘偽りはないが、この本だけで十分というわけではない。
これをきっかけにして、思考力を鍛えたいと思わせられる一冊である。
   
   
   
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2014年04月22日

【勇気の科学】ロバート・ビスワス=ディーナー



The Courage Quotient / How science can make you braver

Introduction 一歩を踏み出すための科学
第1章 自分の勇気指数を知る
第2章 勇気を測定する
第3章 感情のシーソーに乗る
第4章 魔術的な思考を活用する
第5章 権威に抵抗する
第6章 傍観者にならない
第7章 あえて失敗する
第8章 実験室を出て、現実の世界へ

「○○の科学」と題する本は、最近一種のブームみたいなところがある。
この本は、原題にもある通り、勇気について書かれた本。
原題だと「勇気指数」とでも訳すのだろうか。
ただ内容的には、「勇気」についていろいろな角度から分析がなされているので、まぁ邦題通りと言ってもいいかもしれない。

そんな勇気であるが、それは決して神秘的なものではなく、一般の人々にも当てはまるよう定義し、理解できるものだと言う。
そしてそれは充実した人生を送る上で、大きな価値を持つ。
例えば「困難に立ち向かう」とか、「他者を助ける」などという行為にも見られるものである。

さらに「勇気」は習得する事ができ、訓練によって高める事もできる。
そのプロセスには「恐怖のコントロール」と「行動意志を高める」とがあり、まず「認識する事」が、勇気のを高める第一歩だとする。
何となくわからないでもないが、このあたりは「言葉遊び」のような気がしてしまう。

勇気は科学的に解明できるとし、背景には文化が重要な位置を占め、その文化は「尊厳、名誉、面子」のいずれかを重視するものである。
ちなみに、日本は「面子」を重視する文化であり、この文化では、「自分が他者の目にどう映るか」が重要とされる。
言われてみればそうなのかもしれない。

勇気が必要とされる前提として、「恐怖」がある。
恐怖は人間が自己防衛するための本能的な反応であるがゆえ、消し去る事はできない。
ゆえにうまく利用したり、利己的な思考から離れ他者からの目を意識したりする事から克服できたりする。
「恐怖」を「怒り」に置き換えるという手もある。
また社会的責任から、普段なら躊躇するような場面でも行動できたりする事もある。

等々、確かにあれこれとよく分析されている。
そうして一冊の本に仕上げているわけで、さすがなのだと思うが、どうも何か物足りない。
それはたぶん、「感動」がないからなような気がする。
勇気とは、他者に感動を与える行為だと思う。
ただ冷静に分析されても、そこに感動はない。
それが何となく、この本に面白味を感じなかったところかもしれない。

冒頭に、「本書をユナイテッド航空93便の勇気ある乗客に捧げる」とある。
93便の乗客たちが、いかに勇気ある行動を取ったのか、それを詳細に描くだけでも「勇気」とは何なのかが伝わるような気がする。
ただそれだけであり、その他の部分はどうもという感じだ。
カレーライスの美味しさを淡々と言葉で説明されたように、
「わかるんだけど、肝心なところが伝わり切れない」
そんなもどかしさを感じた一冊である・・・

posted by HH at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 教科書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする