2019年12月06日

【読みたいことを、書けばいい。−人生が変わるシンプルな文章術−】田中 泰延 読書日記1101



《目次》
はじめに 自分のために書くということ -書いたのに読んでもらえないあなたへ
序章 なんのために書いたか
第1章 なにを書くのか 〜ブログやSNSで書いているあなたへ〜
第2章 だれに書くのか 〜「読者を想定」しているあなたへ〜
第3章 どう書くのか 〜「つまらない人間」のあなたへ
第4章 なぜ書くのか 〜生き方を変えたいあなたへ〜
おわりに いつ書くのか。どこで書くのか。

 ブログをやっている人間は、多かれ少なかれ、何らかの形で書くことに興味を持っているのではないかと思う。そんな人間にとって、自分の考えていることを「どんな風に書けば良いのか」という疑問を持ったこともあると思う。そういう者にとって、実に興味深いタイトルであるこの本、それだけで手に取ってしまったと言える。

 著者は、学生時代に6,000冊の本を乱読し、卒業後は電通でコピーライターとして活躍し、今はフリーランスでインターネット上で文筆活動を行なっているという人物。全く知らなかったが、『街角のクリエイティブ』というサイトに映画評のコラムを持つているらしい。そんな著者が語る文章論。

 現在、ネットで読まれている文章の9割は「随筆」だと著者は語る。その随筆とは、「事象と心象が交わるところに生まれる文章」だとする。そのうち、「事象」寄りのものを書いているのが、ジヤーナリストであり研究者である。そして「心象」寄りのものを書いているのが小説家であり詩人だという。その中間がライターだとする。著者によれば、書く文章の「分野」を知っておくことは重要であり、定義をはっきりさせることも然りなのだという。

 意外なことに、ターゲットなど想定しなくていいとする。読み手など想定して書く必要はないのだとか。書いた文章を最初に読むのは間違い無く自分自身。たくさん読まれたい、ライターとして有名になりたいという思いを捨て、まずは書いた文章を自分が面白いと思えれば幸せだと気がつくべき。「他人の人生を生きてはいけない」という言葉は、大いに賛同してしまう。事実、私も別のブログをやっているが、そのターゲットは「自分だけ」である。

 つまらない人間とは何かといえば、それは「自分の内面を語る人」。物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛であり、調べたことを並べれば、読む人が主人公になるとする。調べるのは主に一次資料に当たるべきで、それは図書館で調べるべしとする。資料を当たっていくうちに「ここは愛せる」というポイントが見つかるので、そのポイントの資料を掘るといいらしい。言葉で説明されても分かりにくいが、実際に著者の書いたブログを読むと何とくイメージがわく。

1. 感動が中心になければ書く意味がない
2. 思考の過程を披露する
3. 「起承転結」でいい
4. 貨幣と言語は同じもの
5. 書くことはたった一人のベンチャー起業
6. 書くことは生き方の問題である

 総じて言えば、「自分が読みたいことを書けば自分が楽しい。そこにテクニックは必要なく、この本で語られるのは文章テクニックではなく、「(自分が)読者としての文章術」。そんな持論の各章の合間に文章術コラムが入っている。中でも履歴書(エントリーシート)の書き方という部分などはいずれ息子にも教えたいと思わされた。「エントリーシートはキャッチコピー」。元コピーライターらしいその意見になるほどとと思わされた。

 著者も言っている通り、この本にテクニックを求めてはいけない。しかしながら、これもテクニックといえばテクニックなのかもしれないという気もする。ブログをやっている者としては、そして同じような考え方であることもあり、自分に自信を持たせてくれた一冊である・・・





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2019年12月02日

【日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義】デービッド・アトキンソン 読書日記1098



《目次》
第1章 人口減少を直視せよ――今という「最後のチャンス」を逃すな
第2章 資本主義をアップデートせよ――「高付加価値・高所得経済」への転換
第3章 海外市場を目指せ――日本は「輸出できるもの」の宝庫だ
第4章 企業規模を拡大せよ――「日本人の底力」は大企業でこそ生きる
第5章 最低賃金を引き上げよ――「正当な評価」は人を動かす
第6章 生産性を高めよ――日本は「賃上げショック」で生まれ変わる
第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよ――「大人の学び」は制度で増やせる

 著者は、元ゴールドマン・サックス証券のエコノミストであり、現小西美術工藝社社長。これまでも『新・所得倍増論 潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋』をはじめとして、日本経済に対する提言を発表しているが、この本もまたそれに連なる一冊である。元エコノミストらしく、海外のエコノミスト118人の論文を読破し、それらの分析結果を日本の実情に合わせて考察したのが本書だと言う。

 日本で現在起きているパラダイムシフトは、「人口減少」と「高齢化」。このままでは日本に勝算はなく、必要なのはこれまでの常識にとらわれない考え方だとする。人口減少は不動産価格の下落をもたらし、物価全体に大きな影響を与える。これが最大のデフレ要因であるが、これ以外にも少子高齢化、政治要因、産業構造の変化等様々な要因がデフレ圧力となる。もはや金融政策の効果もなくなると言う。それは、同じ人であっても年齢が高まれば需要は減るものであるし、当然の結果だとする。なるほど、理屈はよくわかる。

 これまでも語られているが、日本はGDP総額世界3位といっても、それは人口ボーナスによるもの。それが証拠に一人当たりでは28位にまで落ちてしまう。それゆえに、著者はこれまでにも増して「生産性の向上」が不可欠だと説く。なぜ日本はこれほど生産性が低いのか。著者はそれを具体的に説明してくれる。生産性の向上には国としては輸出増が効果があるとする。それも中間財(中間財は輸出先の生産性向上に貢献するだけ)ではなく最終消費財である。

 日本の生産性が低い理由として、個人的になるほどと思ったのは、「日本には中小企業が多い」ということ。実は、内訳を見ていくと、個人ベースでは大企業では生産性はそれほど低くはないのだとか。中小企業こそ生産性の向上が必要であり、著者は最も効果の高い方法として「中小企業の規模拡大」と「最低賃金の引き上げ」を主張する。大企業の生産性が高くて中小企業が低いと言う理屈は、「下請けにしわ寄せしている」と考えれば理解しやすい。合併等によって規模を拡大すれば、それを防いで給料も上げられると言うことである。

 読んでいて、なるほどと思う反面、やっぱりよく理解できないところもある。そもそも生産性とは、と調べてみると、「労働生産性」については、「付加価値/社員数」ということのよう。付加価値とは、粗利益=限界利益。つまり、より少ない人数で多くの粗利を稼ぐということが生産性の向上につながると言える。中小企業は取引先の大企業に叩かれて粗利を抑えられ、一方で日本は雇用が守られているから労働者が減らせないというカルチャー面でも理由もあるのかもしれない。

 しかし、それは「物価」とどう関係するのかという疑問もある。1つの比較指標として「ビックマック指数」が挙げられている。日本のビックマックは途上国並みに安く、その理由は「最低賃金が低いから」としている。しかし、値段の高いビックマックと安いビックマックのどちらがいいかと問われれば、消費者としては安い方である。生産性が向上して、結果として給料が上がったとして、それで物価が上がれば「元も子もない」気がする。

 著者はこの本で以下の主張を展開する。
1. 高生産性、高所得資本主義を実施
2. 企業規模拡大を促す統合促進政策
3. 最低賃金の継続的な引き上げ
これから日本は「人手不足」が本格化してくる。安易な安い移民にシフトするのは愚策だというのはその通りだと思う。「人が足りないのなら人をより効率的に使う仕組みを作れば良い」と言うのもその通り。ただ、その方法論として、著者が主張することが正しいのかどうか、残念ながら素人の私にはよくわからない。ただ、これからいろいろ考えていく上で、1つの示唆に富む意見だと思う。

 頭の片隅にとどめておきたい一冊である・・・
 

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2019年11月18日

【1秒でつかむ−「見たことないおもしろさ」で最後まで飽きさせない32の技術−】高橋 弘樹 読書日記1093



《目次》
はじめに「1秒たりとも、飽きないで見てもらいたい」
第1章 1秒でつかむ「見たことないおもしろさ」の作り方
第2章 コンテンツの魅力を引き出すために
第3章 「不快」を排除して見えない魅力を伝える技術
第4章 1秒も離さず常に興味を持ってもらう12の技術
持続編 「裏切り」「笑い」「伏線」「疑問」「振り幅」1秒も飽きさせない「5つの神器」
ラスト編 1秒も「ムダではなかった」と思ってもらうために
第5章 人の心に突き刺さる「深さ」の作り方
おわりに

 著者はテレビ東京のディレクター。毎週水曜日に放送されている『家、ついて行ってイイですか?』の生みの親だと言う。本のタイトルはともかくとして、テレビ東京という大手のテレビ局からすると、資金力で劣る立場からどう戦っているのか。中小企業に努める身としてはなかなか参考になる一冊である。

 その『家、ついて行ってイイですか?』だが、実は「平均視聴時間割合が高い」、「番組録画率が高い」、「番組視聴質が高い(真剣に凝視している)」という特徴があるらしい。そして2018年1-3月には視聴質で堂々の3位に入ったという。著者によれば同番組は「企画術」と「伝える技術」から構成されているという。「おもしろい!」と思ってもらうためにはいろいろな手法があって、それをここでは様々解説してくれる。

 そのもっともシンプルで価値の高い方法は、「いままでにないものを作ること」だという。当たり前すぎるが、よくよく考えてみればテレビ業界もそのほかの業界でも「二番煎じ」「二匹目のドジョウ」がうようよしている。これは「言うがやすし」でなかなか簡単にはいかないことによる。『家、ついて行ってイイですか?』では、それまでのドキュメンタリーの常識をすべて覆したのだという。その内容は以下の通り。

1. 長期密着取材 → 短期密着取材
2. 事前に取材のアポを取る → その場で交渉する
3. 雰囲気のあるナレーションと音楽 → ノーナレーション、ノーミュージック
4. 主人公を意図的に選ぶ → 街を歩いている人の中からその場で選ぶ
ゴールデンタイムの番組でナレーションを外すなんて普通は論外だそうであるが、考えてみれば挑戦的な試みだと思う。

 著者は普段から現実社会を観察し、「おもしろい!」と思う一瞬を自分の脳みその中に切り取ってストックしておくという。一瞬ネガティブなものでも「組み合わせ方次第」、「切り取り方次第」、「ストーリー次第」、「機能次第」でポジティブな魅力を発見することができるという。いま成功している商品やサービスとの差別化は常に新商品開発の最大の課題だとするが、これは普遍的に当てはまることである。

 著者はしばしば「バランスを崩す」という表現を使う。たとえば『家、ついて行ってイイですか?』は予算のバランスを崩壊させたという。というのも、悲しいかな各局に比べて予算の圧倒的に少ないテレビ東京では、番組作りでも同じ戦いはできず、『家、ついて行ってイイですか?』では、その予算のほとんどをロケに振り向けたという。

 たとえば、全体の予算が他局では3,000万円だとするとテレビ東京は1,000万円であり、これを「タレント出演料」「スタジオ予算」「ロケ予算」「編集費用」「ナレーション等」に均等に割り振ると当然予算総額の多い相手には勝てない。そこで「ロケ予算」にたとえば8割をつぎ込めば、少なくとも「ロケ予算」では圧勝できる。選択と集中とも言えるが、、予算のバランスを崩すことによって勝てるという理屈らしい。同番組では、通常5〜10人のディレクターが70人配置しているのだとか。

 「良いものを作るために努力で差別化する」という言葉は、胸に刺さって来る。さらに強調しているのは「ストーリー化」。この「ストーリー化」もいろいろなところで語られているが、「事実を解釈して魅力を最大限に引き出す」ことで結果を劇的に変えることになる。著者が就活を行なっていた彼女にこれを使い、獨協大学で初めて電通に内定をもらうことになったという話は興味深い。
 
 結局、気がついてみると、「1秒でつかむ」というタイトルはよくわからなかったが、自分のビジネスに色々とヒントになりそうなことはあちこちに散りばめられていた。改めて『家、ついて行ってイイですか?』を観てみたが、なるほどみんながチャンネルを合わせるのがよくわかる。これから毎週観てみようと思わされる。野村監督ではないが、「弱者の兵法」の参考になる一冊である・・・








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2019年11月08日

【ビジネスの限界はアートで超えろ!−「ゼロ→イチ」の思考法「アートシンキング」入門−】増村 岳史 読書日記1091



《目次》
はじめに
第1章 ビジネスとアートの意外なつながり
第2章 アートの位置付け ――その意味と役割
第3章 アート・デザイン・クリエイティビティ ―それぞれの関係
第4章 アートのベースにはロジックがある
第5章 アートに見るイノベーションの要素
第6章 アートシンキング
第7章 実践! デッサンで思考をアップデート
おわりに

 ビジネスとアートとは、一見、なんの関係もなさそうであるが、実は最近アートを取り入れるリーディングカンパニーが増えているという。そこにはビジネスとアートの意外な繋がりがあり、著者はそんなビジネスとアートを結びつける事業を展開している人物。それはビジネスパーソンを対象にデッサンを教える事業だという。

 実は、絵(デッサン)を描くことによって、「右脳と左脳のバランスを活かした全体的な思考能力」と「新しいものを発想して行く能力」、「ものごとを俯瞰して捉え、調和のとれた思考能力を高める」のだという。そういう講座を著者は主催しているらしい。

 絵を描くことには、感性や感覚をつかさどる右脳と論理をつかさどる左脳を統合した調和のとれた能力が必要とされるらしい。今、MBAよりもMFA(美術学修士:Master of Arts)がもてはやされているという。不景気になってもモノだけはあふれ続ける世の中で、魅力的な商品を生み出せるか、商品を開拓させられるかは、デザイン性・アート性が鍵となるという。MFAは右脳と左脳を統合してバランスよくものごとを考えることが可能とする。

 世の中では、全体を直感的に捉えることのできる感性、課題を独自の視点で発見し、創造的に解決する力の重要性が日増しに高まってきているという。テクノロジーはアートとの融合で鋭さを増し、データ可視化の基礎にデッサン力がある。トップ間の商談の際のアイスブレイクで芸術に関する話題が高い確率で出てくる。アートを学ぶことによって、経営者としての新たな知覚と気づきを手に入れるため、経営者はアートを嗜むらしい。

 昨今、デザイン・シンキングなど、「デザイン」も注目を浴びているが、デザインとアートはどう違うのかとふと思う。その答えも解説されている。すなわち、デザインはまず課題ありき。課題解決のための思考がデザインでありテクノロジーである。これに対し、アートやサイエンスは世の中に問題提起をするもの。深層的な思考であり、自己表出、新たな価値の創造、ゼロイチの思考だとする。なるほど、である。

 ゼロからイチを生み出す思考法、それがアートであるらしい。芸術と聞くと、ついつい自分には関係ないと思ってしまう身としては、どうにも辛いものがある。ロジックと感性との絶妙なバランスによって新たな価値を生み出す。センスを呼び覚まし、アートシンキングを実践して行く具体的方法が、「絵を観ること、絵を描くこと」だとする。ゆえに著者はそのための講座を主催している。

 著者が強調したいアートシンキングについてはよく理解できる。そのために基礎たるべきデッサンを学べという主張もなるほどである。だが、苦手意識を拭えない自分としては、思わず唸ってしまう。アートに即効性を求めてはいけないというが、なんとなく自分には「今からやっても」という感覚を覚えてしまう。この本で著者が説明したいことはよく理解できた。ただ、そこから先のハードルは高い。

 とりあえず、「アートシンキングとは」という入門編として、理解することはできた。まずそこから、として少しずつ意識していきたいと思わせてくれる一冊である・・・







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2019年10月23日

【アフターデジタル−オフラインのない時代に生き残る−】藤井 保文/尾原 和啓 読書日記1084



≪目次≫
第1章 知らずには生き残れない、デジタル化する世界の本質
第2章 アフターデジタル時代のOMO型ビジネス~必要な視点転換~
第3章 アフターデジタル事例による思考訓練
第4章 アフターデジタルを見据えた日本式ビジネス変革

 「アフターデジタル」とは聞き慣れない言葉である。アフターとつくからは、今のデジタル社会の後にくる次の社会というイメージなのだと思う。ようやくデジタル社会に慣れてきたと思ったらもう次か、と思わなくもないが、まずはその内容をと興味を抱いて手にした一冊である。
 
 著者の1人は、中国のデジタル社会事情に詳しい方のようで、よく日本からクライアントを引き連れて視察に行っているようである。実は、中国ではもうオンラインとオフラインの逆転現象が起こっているという。その主はオンラインであり、従はオフラインである。中国ではIT事情は圧倒的に進化しており、アリペイ(Alipay)やウィチャットペイ(Wechatpay)などのモバイル決済は当たり前。キャッシュレス決済の普及は、チャージをしようとしたら現金を入れることのできる機械がないほどだという。

 さらにジーマクレジット(芝麻信用)では、支払い能力を個人特性はもとより、返済履歴、人脈、素行などをベースに徹底して可視化した仕組みを作り上げているという。このジーマクレジットの信用スコアを高めるため、中国人のマナーが格段に良くなったという。、中国版ウーバーであるディディでも、顧客に対してのキャンセルレートや配車リクエストを待たせた時間、GPSを利用した安全運転チェックなどで評価され、それが収入に直結するため、やはりサービス向上につながっているという。

 アフターデジタルとは、リアル世界がデジタル世界に包含されるもので、デジタルでは常に接点があり、たまにデジタルを利用したリアルにも来てくれるものだとする。アリババによるネットスーパー「フーマー」がその代表例として取り上げられている。店舗から3キロ以内であれば、ネットで注文すると30分以内に届けてくれるという。また、会社帰りに店舗に寄り、そこでオーダーして届けてもらうという利用もしているのだとか。具体例があるとわかりやすい。

 もはやオンラインとオフラインはシームレスになって溶け合い、顧客はその瞬間において最も便利な方法で買いたいだけで、それを提供するのだとか。とにかく「ユーザー思考」であり、オンラインだオフラインだという区分けは関係なくなっている。個人的にはやはり「評価システム」が気になった。ジーマクレジットやディディだけではなく、レモネードという自動車保険アプリの仕組みも面白い。

 レモネードでは、ドライバーの運転データを取得し、それを保険料に反映させているという。日本のカーシェアリングでも急加速・急減速をポイントに反映させるシステムを導入しているが、運転態度を保険料に反映させるというのが一番理にかなっていると思うし、今後は日本でも取り入れられるような気がする。広告においても、広く誰かわからないまま打つのではなく、特定の属性に向けてオススメの商品の広告を打てば購入される確率も高まる。こういう動きは要注目だと思う。

 中国がなぜこれほどアフターデジタルの世界で日本より先行しているかというと、それは新しいことに対するスタンスの違いという指摘は興味深い。すなわち、中国では「やってはいけないこと」を決める制度であり、日本では「やって良いこと」を決める制度だという。中国ではとりあえず「やってみる」ということが可能な制度であり、この差はとても大きいと思う。これからすぐに起こりうることという意味で、中国の先行事例は実に興味深い。

 アフターデジタルの世界に遅れを取らないようにしたいとつくづく思うが、そのためにも一読の価値ある一冊である・・・



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2019年10月16日

【実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた】橋下徹 読書日記1082



<目次>
第1章 まずは、人を動かす―実行のための人間関係、人事の要諦
第2章 本当に実行すべき課題はどう見つけるか―橋下流・問題解決のノウハウと、マインドの持ち方
第3章 実行し、信頼される人の条件とは―部下は結局、上司の背中を見て動いている
第4章 実行のための「ビジョン作り」と「チーム作り」―結果を出す「仕組み」はこう作る
第5章 上司を動かし、提案を通す―「トップの視界」を想像しながら仕事をする
第6章 情報を制する者は、組織を制す―強い組織は、情報共有の横串がしっかり入っている
第7章 日本と大阪を「実行できる組織」にするために―徹底的に考え抜かれた大阪都構想の実行プロセス

著者は、元大阪府知事・大阪市長。現在は弁護士をしている著名人。そんな著者が、「実行力」をテーマに、知事・市長時代の8年間、どのように人や予算や物事を動かし実行してきたかという仕事振りについて語った本である。その「実行力」については、著者は「リーダーとしてこだわってきた」と語る通り、部下を使う立場の人、リーダーシップを求められている人にとっては、参考になることが多いと思われる。

いきなり「部下との人間関係なんか気にするな」とする。それは組織マネジメントにおいて決定的な要因ではないとする。組織のリーダーに必要なものは、「仕事をやり遂げた」ことへの信頼関係だという。また、人は怒っても動くものではなく、最後は人事権があると思って静かに対応した方が良いとする。38歳でいきなり1万人以上の組織のトップに立ってしまった著者だけに、そんな四面楚歌的環境の中での知恵だったのかもしれない。

反対派は、あえて積極的にそばに置き徹底抗戦させたのだとか。それは反対意見を取り入れて修正するとより良い案になるし、最後は従ってもらうのであれば多様な意見を取り入れられるからだとする。これはリーダーに取っては聞き耳をたてるところだろう。リーダーの仕事は、部下を「やる気」にさせることというのもまさにその通り。そして「最初の衝撃」で組織の常識を壊してしまうと、意識は劇的に変わるという。

一例として大阪城の庭園でモトクロスの世界大会を開催したことを挙げている。それまでは厳密な管理で「イベントなんてありえない」という意識であったが、著者はトップダウンでゴーサインを出す。その結果、世界から観光客がやってきて、主催者からは利用料ももらえ、あらゆる面でプラスの結果となり、以降職員から様々なアイデアが出てくるようになったという。財政問題を抱えていたこともあり、これはあらゆる点でメリットがあったという。

著者もいきなりそんな能力を身につけたわけではなく、勉強もしていたようである。特に新聞を読む時に自分なりに「課題の発見」をし、常に持論を持つように思考トレーニングをしていたという。これは簡単に真似できそうであるし、ちょっとやってみたいと思う。トップだからとすべて部下に任せて「担がれている」だけでは「問題解決能力」は研ぎ澄まされないだろう。こういう姿勢も参考になる。

人がついてくる最大の理由は「共感」だという。「逆張りの法則」でビジョンを作り、トランプ政権のようなシンプルな方針を明示する。トップは「比較優位」で考えるものであり、「上の人と話すときは『一つ上の枠組みの目線』を意識せよ」ということは、部下の立場の人にいいアドバイスであろう。一部の人に政治力を握らせないためにメールを活用して広く情報を広め、逆にメールで現場の情報を吸い上げ、活用する。こうした仕事振りは普通の会社員でもすぐにできることである。

最後に大阪都構想と一連の運動について語られている。東京に住んでいるせいか、大阪都構想は人ごとであり、あまり興味もなかったが、現在大阪が抱える二重構造の問題点が明かされ、最後の住民投票に至るブロセスが解説される。そこに至る「実行プラン」は並大抵のものではなく、なぜ知事から市長に転じたのかの背景もよく理解できた。これはこれで裏話として面白い。そしてイギリスがEU離脱で大混乱に陥っているのは「実行プラン」なくして離脱を決めてしまったからだという説明もよく理解できる。結局、大阪都構想は住民投票で否決されてしまうが、大阪府民にとっては大きな損失ではなかったかと感じさせられる。

著者は、残念ながら政治家を引退してしまったが、こういう人こそ政治の世界に求められるのではないかと思われる。まだまだ若いし、「カムバック」も大いに期待したいと思わせてくれる一冊である・・・




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2019年10月08日

【10秒で伝わる話し方 あがってうまく話せない人でも大丈夫】荒木真理子 読書日記1080



《目次》
Chapter 1 「短く話す」ことにはメリットばかり
Chapter 2 頻繁に出くわす苦手シーンもたった「10秒」で克服
Chapter 3 できる人はやっている「10秒」伝達のコツ
Chapter 4 どう話す?相手の心に刻む「10秒」のストーリー
Chapter 5 「10秒」を最大限に生かす+αのテクニック
Chapter 6 つなぎ話法「10秒×α」でいざスピーチ・プレゼン!
Chapter 7 人前がこわくなくなる!すぐにできる「あがり症」対策

 著者は気象キャスター。究極のあがり症だったらしいが、「10秒の話し方」を身につけたことによって救われたという。その「10秒の話し方」を徹底的に語ったのが本書である。

 元々はアナウンサー志望だったらしいが、就活では30回以上の面接に落ち、臨んだ最後の面接でのエピソードが秀逸。最後に何かありますかと尋ねられ、著者は1人だけ手を挙げ、「私はどうしてもアナウンサーになりたくてここに来ました。悪かった点を教えてください。次回までに直します!」と食い下がったと言う。これが評価されて採用となる。こういうスタンスは誰もが見習うべきではないかと思う。

 著者が「10秒の話し方」に目覚めたのは偶然。中継先で放送用の原稿が風に飛ばされてしまった時、一枚一枚拾い上げていくと10秒そこそこの原稿が4枚だったという。一枚ずつだとスムーズに言えるのに、全部合わさるとつかえてしまう。だったら10秒ずつ話してみようじゃないか、10秒ならできるとなったらしい。「求めよ、されば与えられん」ではないが、日頃からの問題意識のなせる技なのかもしれない。

 この10秒の話し方は、アナウンサー以外にも広く応用できる。プレゼン、会議、スピーチ、面接、自己紹介、飲み会の挨拶。そういう意味では、個人的に興味をそそられる。「10秒の自己紹介」では、「よく言われる褒め言葉」「自分が誇れる特徴やモットー」「キャッチコピー」などを利用し、「数字で表現」するのがコツだとか。例えば、「読書好き」なら「通勤時間を利用して毎月20冊本を読んでいます」などだという。これはなかなか参考になる。

 10秒以外にも「話し方、会話」という点でも参考になることは多い。
1. 話が途切れてしまったら、最高の聞き手に徹する
2. 相手の質問より短く答える
3. 昔話のペースが最も相手に伝わる
4. 営業ではまずメリットを話す(相手の立場になり相手が最も望んでいる話をする)
5. 話にタイトルをつける(体言止め、固有名詞、数字・記号を使う)
6. 起承転結は「転」を先に話す
7. 専門知識はざっくり伝える
8. パソコンで一度で変換できない言葉は使わない(着用する→身につける)
「わかりやすさ」という意味ではよくわかる説明である。

 また、スピーチの方法も参考になる。
1. 挨拶を切り出す直前、3秒間我慢して「間」を取る
2. スピーチの直前に起きたことを付け加える
3. 出だしの10秒に全神経を注ぐ
4. 書き言葉は話し言葉にチェンジ
どれも機会があったら試してみたいと思わされる。

 極度のあがり症だった著者が、それを克服して「話す世界」で活躍できたのは、ご本人の努力の賜物だと思うが、そのきっかけとなったのが「10秒の話し方」。そこから派生して様々な「話し方」へと広げていく。苦しみながら抜け出した人の話は説得力がある。アナウンサーでなくても、参考にしたい一冊である・・・
  


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2019年10月03日

【事実vs本能−目を背けたいファクトにも理由がある−】橘 玲 読書日記1079



《目次》
Part 0 ポピュリズムという「知識社会への反乱」
Part 1 この国で「言ってはいけない」こと
Part 2 私たちのやっかいな習性
Part 3 「日本人」しか誇るもののないひとたち
Part 4 ニッポンの不思議な出来事
Part 5 右傾化とアイデンティティ

 著者は、近年『言ってはいけない残酷すぎる真実』『もっと言ってはいけない』と読んでいる著者。いずれも「真実」というキーワードが入っており、本作も同様。続編というわけではないが、「真実」というキーワードを追求する著者のスタンスが現れている気がする。

 「真実を知ることはとても重要」だということはその通りである。著者はそれを「正しい地図を持っていなければ、自分や他人の人生について正しい判断をすることができない」とする。それはその通り。では、その「正しい地図」たる真実とはどのようなものなのか。それを各Partで説明して行く。

 PIAACという先進国の学習到達度調査によると、
1. 先進国の成人の約半分(48.8%)はかんたんな文章が読めない
2. 先進国の成人の半分以上(52%)は小学校3〜4年生以下の数的思考力しかない
3. 先進国の成人のうち、パソコンを使った基本的な仕事ができるのは20人に1人(5.8%)しかいない
ということらしい。『もっと言ってはいけない』では、日本人の例が示されていたが、先進国全般として同様だという。

 にわかには信じ難いが、著者はその事実を丁寧に説明していく。さらに衝撃的なのは、この調査でOECDの平均を下回る国にポピュリズムが台頭しているということ。職業に必要な知的スキルが低い国は失業率が高く、ポピュリズムが台頭しやすいのだとか。それはそうかもしれないと思うが、その顔ぶれがアメリカ、イギリス、フランス、ポーランドと続くと愕然とする。

 Part 1では「この国で言ってはいけないこと」が紹介される。女児虐待死事件のそれは、義父と連れ子との間で起こっているということ。犯罪統計でも幼児虐待は義父と連れ子との間で起こりやすいのだとか。これは進化論に理由を求められ、欧米でもしっかりと統計に表れているが、日本のメディアはそう報じないとする。行政担当者の不手際を集団で吊るし上げて憂さ晴らししているだけでは問題は解決しないとする。その通りなのかもしれないが、やっぱりビミョーである。

 タブーを避けながらわかりやすさに固執すると、結果としてデタラメな報道が垂れ流されるというのはなんとなく理解できる。子宮頸がんワクチンの問題は記憶に新しいが、実は日本で広がっている子宮頸がんワクチンの健康被害問題は、海外とはまったく異なるもので、WHOでは子宮頸がんワクチンは強く推奨されているのだとか。この問題は、一部の医師、研究者や人権派弁護士、メディアが作り出したものらしい。「善意の人たちによって10万個の子宮が失われていく」という「事実」は恐ろしい。

 そのほかにも「安楽死」をめぐる問題、「子供は褒めるとダメになる」という解説、「いじめ防止対策をすればいじめが増える」「自衛隊にはなぜ軍法会議がないのか」といった常識とは異なるもの、普段考えもしない「事実」が紹介されていく。「過労死自殺はなぜなくならないのか」「働き方国会が紛糾する“恥ずかしい”理由」等「事実」かどうかちょっと疑問に思うケースもあるが、一つの見方としては面白い。

 ただし、政治的な部分になると、ちょっとした違和感を禁じ得ないところもある。「徴用工判決ではなぜ韓国の民意を無視するのか」「靖国神社の宮司が『反天皇』になった理由」については、事実は事実としても解釈が異なるように思う。「事実」は「思想」によって異なる意味づけがなされるのではないかと感じさせられるところである。一方、「日本社会は保守化、右傾化しているのではなく、革新=リベラルが絶望的なまでに退潮している」というところは素直に同意できる。

 解釈はともかくとして、「事実」にこだわるスタンスはやっぱり大事だと思う。表面的な報道を鵜呑みにするのではなく、「事実」はどうなのかを意識していかないといけないだろう。そういう意味で、一読の価値ある一冊である・・・




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2019年08月27日

【Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法】ロルフ・ドベリ 読書日記1063



原題: Think clearly The art of the Good Life 52 Surprising Shortcuts to Happiness
《目次》
・考えるより、行動しよう――「思考の飽和点」に達する前に始める
・支払いを先にしよう――わざと「心の錯覚」を起こす
・戦略的に「頑固」になろう――「宣誓」することの強さを知る
・ものごとを全体的にとらえよう――特定の要素だけを過大評価しない
・買い物は控えめにしよう――「モノ」より「経験」にお金を使ったほうがいい理由
・自分の向き不向きの境目をはっきりさせよう――「能力の輪」をつくる
・静かな生活を大事にしよう――冒険好きな人より、退屈な人のほうが成功する
・性急に意見を述べるのはやめよう――意見がないほうが人生がよくなる理由
・読書の仕方を変えてみよう――読書効果を最大限に引き出す方法
・「心の引き算」をしよう――自分の幸せに気づくための戦略
・組織に属さない人たちと交流を持とう――組織外の友人がもたらしてくれるもの
・本当に価値のあるものを見極めよう――あらゆるものの90パーセントは無駄である など

 著者は実業家兼作家。この本はサブタイトルにもある通り、「より良い人生を送るために必要な思考の道具箱」だとしている。それは、良い人生を送るために必要なのは、「たった一つの原則」と言うようなものではなく、道具箱に入っているような雑多な諸々。それを著者は52にまとめ、「思考法」として表しているものである。

 まずは、「考えるより、行動しよう」と始まる。何かを書くと言うアイデアは、「考えている時」にではなく、「書いている最中」に思い浮かぶと説く。それはブログを書いている自分自身が経験則として実感していることである。そしてこの法則は、人間が行うありとあらゆる領域の活動に当てはまる。実際、考えるより行動する方がはるかに難しい。続いて「なんでも柔軟に修正しよう」では、重要なのはスタートではなく、(途中の)修正技術だと言うのは、ちょっと驚きの新鮮な意見である。

 流石に52もあると、自分に合うもの合わないものがある。そこは合うものだけを選択して参考にしたい。
 1. 「ああいう人だから」と分からせた方が勝ち
 2. 失敗の原因を突き止めるたび、人生は上向く
 3. よい人生の基本的なルールは、本当に必要ないものを排除すること(何を手に入れたかではなく、何を避けるか)
 4. 本音を出しすぎないようにする(意識的に2番目の人格を作り上げる)
 5. モノより経験にお金を使う
 6. できることを仕事にする
 7. 自分と波長の合う相手を選ぶ
人間関係、物欲、誰にでもいろいろあるが、言われてみればなるほどというものが多い。

 まだまだ続く。
 1. 性急に意見を述べるのはやめる
 2. 嫉妬をなくす
 3. 解決よりも予防(予防措置には知識だけでなく想像力も必要)
 4. どこに注意を向けるかで幸せを感じるかが決まる
 5. 相手の立場になってみる
 6. 期待は少ない方が幸せになれる
読みながら取っていたメモがどんどん増えていく。自分自身にとっても大いにヒントになる。

 読書については、「よい本を選んで2度読む」という意見が新鮮。また、「心の引き算」というのも同様。銀メダルよりも銅メダルの方が満足度が高いのは、「メダルを取れなかった」ケースを想像するか否か。これは確かにその通りだと思う。「競争が激しいところにわざわざ飛び込まない」というのは、日頃ビジネスで意識していることである。

 著者は「内なる成功」を目指そうと語る。内なる成功とは、心の充実や平静さである。物質的な成功より内面の充実の方が大事だという意見はまったくその通りである。「墓地で一番裕福な人間になるより、今の人生を充実させる」、それこそがよりよい人生そのものだと思う。人生も半ばを過ぎるといろいろと感じるものがある。この本を20代の頃に読んでいたとしたら、あまり感じるところは少なかったかもしれない。自分にとってはいいタイミングだったと思う。

 著者の言う「内なる成功」を自分も意識したいと思わせてくれた一冊である・・・

 

posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月20日

【ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」】アルバート=ラズロ・バラバシ 読書日記1060



原題: THE FORMULA THE UNIVERSAL LAWS OF SUCCESS THE SCIENCE BEHIND WHY PEOPLE SUCCEED OR FAIL

目次
はじめに 成功で重要なのはあなたではない。社会なのだ。
 1 レッドバロンと忘れ去られたエースパイロット
【成功の第一の法則】 パフォーマンスが成功を促す。パフォーマンスが測定できない時には、ネットワークが成功を促す。
 2 グランドスラムと大学の卒業証書――なぜ努力は(時には)成功を生むのか
 3 200万ドルの小便器――なぜ努力は成功に結びつかないのか
【成功の第二の法則】 パフォーマンスには上限があるが、成功には上限がない。
 4 そのワインの価値はどのくらいか――決められない価値を、どうやって決めるのか
 5 スーパースターと「べき乗則」――報酬に上限はない
【成功の第三の法則】 以前の成功×適応度=将来の成功
 6 爆発する子猫と靴下人形――成功をキックスタート≠キる方法
 7 好みは人それぞれ――質はどのようにして、社会に影響を与えるか
【成功の第四の法則】 チームの成功にはバランスと多様性が不可欠だが、功績を認められるのはひとりだけだ。
 8 カインド・オブ・ブルー――バランス、多様性、リーダーシップが重要
 9 見過ごされた科学者を見つけ出すアルゴリズム――重要なのはパフォーマンスではなく、世間の捉え方
【成功の第五の法則】 不屈の精神があれば、成功はいつでもやってくる。
 10 アインシュタインの間違い――スキルが合わさると、なぜ最後には努力が実を結ぶのか
結論

 著者はアメリカの複雑ネットワーク研究センターのセンター長。大学教授でもある。そんな著者が解き明かした「成功の普遍的法則」とあって興味をそそられ手にした一冊。著者自ら成功法則とはいえ「セルフヘルプ(自己啓発)」ではなく、「サイエンスヘルプ」だとする。膨大なデータをもとに最先端の科学的手法を駆使して導き出したものだそうである。
 
 成功とは、「あなたが属する社会から受け取る報酬」だとする。重要なのはパフォーマンスではなく、社会があなたのパフォーマンスをどう捉えるか。第一次世界大戦時のドイツ人パイロットであったレッドバロンとフランス人パイロットであったルネ・フォンクを例に説明がなされる。どちらも似たような戦績(パフォーマンス)の撃墜王であったが、レッドバロンの方がはるかに有名なのは、「社会がそう認知したから」。重要なのは、あなたの功績に気づき、その価値を認め、より広い世界に広めるネットワークである。

 確かに、言われてみればその通り。実力はあっても人気が出ないという例はゴマンとあるだろう。また、ワインの品評会でゴールドメダルを取るのは「ほとんど運」だとか、ピアニストの評価はその演奏ではなく、「演奏する姿」に影響を受けるとか、演奏会における評価の傾向とかの例は何となく白けさせてくれる。演奏会では、「初日の一番目の女性」ピアニストの評価は、「五日目の二番目の男性」ピアニストより6つも順位が低いらしい。自分も観た映画の評価では、直前のものの方が高くなる傾向が高いことに薄々気づいていたから、この意見には納得である。

 サクラの行列にはそれなりの効果があり、アマゾン等のレビューも最初が肝心であり、だから自作自演のレビュー(ソックスパペット=靴下人形というらしい)が残念ながら効果が高いらしい。レビューは、酷評の場合は好評に覆されてしまうらしいが、好評の場合はそれに引きずられるらしい。さらに愕然とさせられるのは、チームの成功にはバランスと多様性が不可欠だが、功績を認められるのは1人だけという説明。これも例を聞けば納得させられてしまう。

 一流選手だけを集めても必ずしも無敵のチームとはならないのは、かつてジャイアンツがFAで各チームの4番打者を集めても勝てなかったのを思い出せばよくわかる。実作業に汗を流した者と栄誉を授かる者は別というのも過酷な事実。チームの誰の功績かを決めるのは、誰が何をしたかではなく、世間がどう捉えるか。だから優れた仕事に1人の創造者の名前をつけて呼ぶのだとか。ダーウィンの進化論(そうなのかとこれには驚かされる)とか、ジュリア・ロバーツの映画とか言った具合にである。

 それでも救われる思いがするのは、「成功の第五法則」。「不屈の精神があれば成功はいつでもやってくる」だ。85歳でノーベル化学賞に輝いた分析化学者のジョン・フェンの例が説明されるが、「創造性には有効期限がない」というのは、希望を感じさせてくれる。さすがに著者は科学者らしく、データを基にした研究は説得力がある。個人的には、「身もふたもない事実」というより、「なんとなく感じていた真実」という気がする。

 こういう事実を積み上げて検証した学説というものには、個人的には興味を惹かれる。事実がどうかということもあるが、だからどうということもない。ただ、頑張っても日の当たらないと感じている人は、知っておいて損のない話である。
 なるほど、と思わせてくれる一冊である・・・


 
posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | ビジネス/自説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする