2019年07月29日

【罪の声】塩田武士 読書日記1054



 物語は2人の主人公のうちの1人、曽根俊也が実家の母親に頼まれ母親の部屋から偶然黒革のノートとカセットテープを見つけたところから始まる。そのカセットテープを何気なく再生した俊也は、それが子供の頃の自分の声であり、そこに自分の声で録音されていた内容に違和感を覚える。そしてノートに「ギンガ」「萬堂」という言葉を見つけ、そこからかつて日本中を震撼させた「ギン萬事件」を連想する。すぐに検索サイトで調べた俊也は、そのテープが事件の脅迫で使われたものだと知って愕然とする。

 一方、もう1人の主人公は大日新聞記者の阿久津英士。本来は文化部の記者であるが、社会部の年末企画に駆り出されることになる。それは「昭和・平成の未解決事件の特集」。大阪本社ではその事件として「ギン萬事件」を扱うことになる。そして早速、ギン萬事件の4ヶ月前にオランダで起こった「フレディ・ハイネケン誘拐事件」の取材から着手するように担当デスクの鳥居から指示される。事件後、現地で探偵まがいのことをしていた謎の東洋人について調べろというもの。こうして気乗りしないまま阿久津は調査に向かう。

 自分が知らないうちに大事件に関係していたこと、そしてもしかしたら自分の父親が事件の犯人かもしれないという考えから、俊也は父親の幼馴染である堀田を頼る。そして堀田とともにノートとカセットを手掛かりに調査を始める。こうして「ギン萬事件」を2人の主人公がそれぞれ調査を始め、物語は進んでいく。事件は1984年に発生し、菓子・食品メーカー6社が脅迫され、ギンガは社長まで誘拐される。萬堂は商品に青酸ソーダを混入され、甚大な被害を受ける。結局、犯人は逮捕されずに終わっている。

 事件の概要や犯人の一味とされる「キツネ目の男」という説明を読んでいて、なんとなく「グリコ・森永事件」を思い出したのは、自分もそういう世代だからだと言える。そしてこの小説は、その「グリコ・森永事件」をベースにしたものだとわかる。主人公こそ架空の人物だろうが、どこまでが史実なのだろうかという興味が湧いてくる。改めて事件を振り返る意味でもなかなか興味深い内容である。

 主人公の俊也と阿久津は互いに面識はなく、たまたま偶然同じ時期に事件の再調査に着手する。それぞれの立場から、手に入れた情報を辿り、事件を追って行く。読む立場の自分もまたそれを後追いして行く。父親から父の兄へと疑惑は移る。わずかな手掛かりから事件に関わった関係者を訪ね話を聞いて行く。そして小さなキッカケを掴み、そこからまた新たな事実を手に入れる。特に記者の立場の阿久津の調査過程がなかなか興味深い。そして2人はついに遭遇する。

 グリコ・森永事件は未だ未解決のままであるが、ギン萬事件は俊也の協力を得た阿久津が執念の調査で事件の全貌を解明する。それはいろいろな登場人物の人生が絡まったもの。逃げ切った犯人にハッピーエンドはなく、子供ながらに事件に利用された俊也以外の2人の子供の運命は切ないもの。重厚感溢れるストーリー展開は、なかなか読ませてくれるものがある。実際の事件はどんなものだったのだろう。ひょっとしたらこの小説の通りだったのかもしれない。

 いろいろと想像してみたくなる一冊である・・・



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2018年11月09日

【オリジン】ダン・ブラウン 読書日記971



原題:Origin
 毎回読むたびに、息もつかせぬ展開と「これは本当なのか」と思わせてくれる謎で楽しませてくれるロバート・ラングドン教授の活躍するシリーズ第5弾である。

 プロローグでは、今回中心人物となるエドモンド・カーシュが、万国宗教会議に参加したキリスト教のバルデスピーノ司教、ユダヤ教のラビであるケヴェシュ、そしてイスラム教の法哲学者サイード・アル・ファドルを相手に、あるプレゼンテーションを行うところから始まる。それは「われわれはどこから来たのか、そしてわれわれはどこへ行くのか」というテーマでのもので、その内容は宗教の根幹を揺るがす科学上の新発見である。いきなりの謎と興味を秘めて物語は始まる。

 今回、宗教象徴学者ロバート・ラングドンは、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館に元教え子のカーシュの招きでやってくる。その類を見ない設計で、観光客を激増させたという建築の伝説的美術館を舞台とするとは、と個人的には大いに期待する。迎えるのは、美人のアンブラ・ビダル館長。アンブラは、またスペイン国の王太子フリアンの婚約者(つまり将来のスペイン王妃)でもある。

 未来学者でもあるエドモンド・カーシュが美術館で世紀のプレゼンテーションを行うという触れ込みで、ラングドンも久々の教え子との再会とそのプレゼンに大いに期待して臨む。しかし、なんとそのプレゼンの場で、カーシュは暗殺されてしまう。犯人はルイス・アビラという海軍退役提督。かつて爆弾テロで家族を失うという悲劇に見舞われており、バックにはパルマール教会と宰輔と称する人物がいる。

 大混乱の会場。絶命したカーシュの遺体を前にラングドンは呆然とするが、カーシュと一緒に仕事をしていたアンブラからある事実を聞かされ、ラングドンはアンブラとともに会場を脱出する。アンブラにはスペイン国の未来の王妃として近衛隊員が護衛についていたが、これを撒いての闘争劇。彼らに手を貸すのは、カーシュが製作したAIウィンストン。ヘッドセットを通じての万能の活躍がドラマに面白みをもたらす。

 例によって物語の展開は実にスリリング。AIウィンストンの果たす役割は、『イーグル・アイ』などの映画でも描かれているが、人間のサポートなど到底及ばない完璧なもの。やがてユダヤ教のラビもイスラムの法哲学者も何者かに殺され、事件の裏側にはカーシュの発表を阻止しようとするキリスト教の影が見え隠れする。そして全編にわたって気になって仕方がないのが、カーシュが発表しようとした新発見の内容。

 スペインを舞台に、ガウディのサグラダ・ファミリアやカサ・ミラといった建築物が背景に描かれる。ゴーギャンの絵画やウィリアム・ブレイクの詩や挿絵といったものも合間に重要な意味合いをもって描かれる。よくぞこれだけのストーリーを思いつくものだと、今更ながら感心してしまう。そしてその内容も今回は実に示唆に富む。

 ストーリーに重要な役割を果たすのが、AIのウィンストン。カーシュが敬愛するチャーチルからその名を取って名付けられたのだが、やがてこういうAIが登場したら、われわれの生活はどうなるのだろうかと想像させられる。それはそれでまた楽しい想像でもあるし、疑問に思う想像でもある。本を読みながら、カーシュの投げかけた謎「われわれはどこへ行くのか」を一緒に考えても面白いかもしれない。

 まだまだシリーズは続くのだろうか。これだけのストーリーを捻り出すのは簡単ではないと思うが、是非とも次の作品を期待して待ちたいと思わされる一冊である・・・


【ロバート・ラングドン教授シリーズ】
『天使と悪魔』
『ダ・ヴィンチ・コード』
『ロスト・シンボル』
『インフェルノ』
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2017年02月09日

【誘拐】五十嵐貴久 読書日記759



COUNT ZERO
ファースト・ステップ
セカンド・ステップ
サード・ステップ
ラスト・ステップ
ファイナル・ステップ
IN THE END

 著者は以前、『贖い』を読んで面白いと思った作家。前作からの期待連想というわけではなく、選んでみたらたまたま同じだったというのが正直なところだが、偶然選んだ二冊がともに面白いと今後は作家の名前で選んでみたいと思わされる。そんな一冊。

 主人公は大角観光の人事部に努める秋月孝介。冒頭、いきなり何やら重大事態の発生。孝介は会社を飛び出し、会社や家族からの連絡にも応じず街をさまよい酔いつぶれる。やがてそれが孝介の会社の社員が一家心中をしたことだとわかってくる。大角観光は経営不振によるリストラを行っており、死んだのは孝介が退社させた社員であったのである。

 悲劇はさらに続き、その家の中学生の娘は孝介の娘宏美の親友であり、孝介が深夜に帰宅すると、宏美にそれをなじられる。そしてあろうことか、宏美は批難の言葉を残し窓から飛び降りてしまう。それを機に、妻も孝介の元を去り、職を辞した孝介は職と家族とをともに失う結果となってしまう。

 それからしばらくし、かつての信頼できる部下であった関口純子とともに孝介は大胆な行動に出る。それは時の内閣総理大臣佐山憲明の孫娘百合の誘拐である。時に佐山は総理大臣として日韓友好条約締結を控えており、それに伴う韓国大統領の来日が大きな政治テーマとなっている。そんな中で、白昼堂々現職総理大臣の溺愛する孫娘を誘拐した孝介と純子。

 佐山総理は動揺し、警察は威信をかけて犯人逮捕、百合の保護に向けて動き出すが、警察は韓国大統領の来日に伴う厳戒態勢で誘拐捜査に十分な人員を割けない。その中で、警視庁の荒巻捜査一課特殊捜査班班長が捜査担当に任じられる。荒巻以下捜査陣は、犯人を条約締結に反対する北朝鮮と見て捜査を開始する・・・

 以前はよくニュースになっていた営利目的の誘拐事件であるが、最近はあまり聞かない。それも捜査技術の進歩によって、誘拐が成功可能な犯罪ではなくなってきていることによるのかもしれない。それを示すのか、作中では今の技術の一端が語られる。誘拐といえば、かつては脅迫電話を少しでも長く喋らせて逆探知するというのが定番だったが、今は一瞬で逆探知できるという。

 そうした技術背景を考えたのか、孝介の考えた脅迫電話の方法はなかなかユニークである。そして韓国大統領が来日する厳戒下の東京で孝介から要求が出される。一介の個人にそんな大胆な犯罪が可能だろうかというところが、この物語のポイントになると思うが(少なくとも私はそう思う)、そのあたりは実にうまく説明されている。なるほどと思う中、物語の展開も先を読ませず、ぐいぐいと引き込まれてしまった。

 誘拐という、一種手垢のついた感のある内容であるが、なかなかアレンジされていて良かったと正直思う。ラストに至る一瞬まで気をぬくことができなかった。この作者の他の作品もますます読んで見たくなった一冊である・・・


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2015年11月18日

【贖い】五十嵐貴久 読書日記603



Part 1 熱帯夜
Part 2 猛暑
Part 3 沛雨
Part 4 焦暑
Part 5 色なき風
Part 6 晩秋

初めて目にする著者であるが、面白そうなので手に取った一冊。
これがなかなか良い選択であった。

何気なく始まる物語。
井の頭線の久米山に住む吉岡慎二は、同僚と飲みに行く直前、妻からの電話で息子が帰らないと知らされる。
違和感を抱いて帰宅するも、息子は帰宅せず。
そして翌朝、小学校の門前に置かれた息子の切断された頭部が発見される。
なにやら以前あった酒鬼薔薇事件を彷彿とさせるイントロである。

そして埼玉県志木市にある春馬山の雑木林で、中学生の少女浅川順子が他殺体で発見される。
さらに愛知県警の坪川は、市内のスーパーで1歳児が行方不明になったという通報に駆り出される。
まもなく、子供はコインロッカーで他殺体で発見される。

なんの関連もなさそうな3つの事件。
それぞれ警視庁の星野と鶴田里奈、埼玉県警の神崎と中江由紀、愛知県警の坪川が事件の捜査に当たる。
それぞれ「事情」を抱えた刑事で、捜査本部では傍流の立場である。

そんな事件とは一見無関係に、三友商事に勤務する稲葉秋雄が登場する。
定年を控えた独身で、スポーツクラブに通い、健康維持に努める。
社内では出世とは程遠いものの、部下の人望も厚く、定年延長の利用を請われているが、本人は退職を決意している。
そんな老企業戦士は、最初の事件のあった久米山に住んでいる。

バラバラの3つの事件がどう絡んでいくのか、読みながら興味心を刺激する。
キーを握るのは捜査一課の警部星野。
過去の事件の余韻があり、捜査一課内では“浮いた”存在。
そのため、取り扱いに困る女刑事の鶴田里奈と組まされている。
そんな星野が、何を考えてか、不思議な行動を取っていく。
理由もわからないまま、里奈はそれについていく。

こうして次第に事件の全貌が明らかになっていくのであるが、これが何と面白い。
先の予想できない展開ほど面白いものはない。
先が知りたくて、なかなか読むのをやめにくくなる。
直接のストーリーとは関係ないものの、警察内部の「助け合いかばい合い」の文化や縦割り組織の弊害が描かれる。
このあたりは、フィクションなのかそれとも実情を描いているのか、どちらにしても興味深い。

警察の事件ものは数多創られているが、まだまだこれだけ面白いストーリーが紡ぎ出される。
いろいろな登場人物の立場に身を置いて読むと、また味わいも変わる。
この作家の他の作品も読んでみたくなった。
面白いものに飢えている人には、オススメの刑事ドラマである・・・

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2015年09月03日

【土漠の花】月村了衛 読書日記582



第1章 ソマリア
第2章 土漠
第3章 血
第4章 花

「これは面白い」と読むのをやめられなくなってしまった一冊。
自衛隊が海外で戦闘に巻き込まれるという内容の物語は、下手をすると現実味のない荒唐無稽のつまらないものになりがちだが、うまく現実味を持たせたところに、この本の成功があるような気がする。

舞台はソマリア。
ソマリアの海賊対策のために自衛隊の派遣部隊が、ジブチに駐留している。
そこへCMF連絡ヘリが墜落し、救助の要請が入る。
そして吉松3尉をリーダーとする捜索救助隊が現地に向かう。
現場を確認し、翌朝から回収作業に入るべく野営した一行の下に、現地人女性3名が救助を求めてくる。

事情を聞けば、現地の民族対立でワーズデーン氏族に追われてきたビヨマール・カダン氏族の者だという。
ワーズデーン氏族による虐殺から逃げてきたのである。
3人を保護しようとした矢先、追いかけてきたワーズデーン氏族の襲撃を受け、なんと隊員3名が戦死する。
そしてリーダーである吉松3尉も射殺されてしまう。

友永曹長は敵の隙をついて仲間とともに脱出する。
逃げてきたビヨマール・カダン氏族の女性2名も殺され、唯一生き残ったアスキラを連れ、自衛隊員たちはワーズデーンの攻撃を回避しつつ、逃走へと移る。
ここからの脱出劇が全編にわたって展開される。
その臨場感溢れる迫力が面白くてやめられない。

自衛隊も最近では海外での活動が許されている。
といっても、平和憲法を掲げる我が国の自衛隊にとって、戦闘行動などもっての他。
ここでも、本来なら米軍があたるべき救助活動について、米軍が現地武装勢力の掃討作戦中で人員が割けないという理由で、自衛隊にお鉢が回ってきたことになっている。
実にありうべき前提である。
そこへ突然の襲撃。

数で勝る武装勢力に、訓練は行き届いているが実戦経験がない自衛隊員が、予想すらしなかった実戦に巻き込まれて行く。
思わず映画『ブラックホークダウン』(この映画もソマリアが舞台だ)を思い出してしまったが、まさに同じような展開である。

生き残った自衛隊員一人一人の人生が描かれていき、そこにもまた物語がある。
死と隣り合わせの現実の中で、葛藤を抱えながら、日頃の訓練を生かしながら、ひたすら安全地帯への帰還を目指していく。
単なるアクションの面白さだけでなく、貧しさから部族対立が起き、幸せに暮らしたくても暮らせない現地の人々の問題も浮かび上がる。
読み終えて、思わず唸ってしまった・・・

映画化されたら、かなり面白いだろうなと別の期待も湧いてくる。
何か肩肘張らずに読める面白い物語はないだろうかと探している方には、是非オススメしたい一冊である・・・

posted by HH at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説(スリリング) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月09日

【その女アレックス】ピエール・ルメートル 読書日記562



原題:ALEX

何となく面白そうだと手に取った一冊。
作者の名前は初めてであったが、なぜかそう感じたのである。
時折、そういう本に手を出すが、これが見事に正解であった。

主人公はタイトルにある通り、アレックスという名の女性。
職業は看護師である。
そのアレックスがある夜、食事をして一人自宅へと帰る途中、何者かに襲われ拉致される。
殴られ、手荒く扱われた揚句、裸で狭い檻の中に監禁される。
レイプするわけでもない男が何を要求するのかと思いきや、「淫売がくたばるところを見てやる」と不気味に語る。

一方、拉致現場の目撃者からの通報で警察が動き始める。
捜査の指揮を執るのは、カミーユ・ヴェルーヴェン警部。
小説ではわからないが、背が低い男らしい。
1年前に最愛の妻を誘拐された上に殺害されるという経験をし、心の傷も癒えぬまま臨時に捜査の指揮を任される。

第一部は、誘拐されたアレックスと事件を追うヴェルーヴェン警部とが並行して描かれる。
ここは物語の全体の入り口。
ヴェルーヴェン警部の人物像と、彼を支えるルイ、アルマンという二人の部下、そして上司のグエンといった人物が描かれていく。
偶然の幸運で、女が監禁されているという情報がもたらされ、警察は現場に急行する。
そして意外な顛末・・・

小説は3部構成となっている。
この第一部が第二部へと移ると、物語の雰囲気はガラリと変わる。
第一部では描かれなかったアレックスの予想もしなかった行動。
そしてパリ警視庁(物語の舞台はパリである)にとっては、事件は続いており、ヴェルーヴェン警部の捜査も続く。
そしてまた予想外の展開を見せて第三部へ移行する。

ここでもまた物語が劇的に変化する。
だんだんと結末が見え始めるに従って、物語の全体像が明らかになる。
それは実に驚くべきもの。
3部はそれぞれ連続しているが、様相はガラリと変わる。
それはまるで弁証法のような展開。
第一部を受けながらも違う物語となった第二部を受け、そしてまた第三部は違う物語となるといった感じか。

こういう小説は初めてだし、読み終えて深い読後感を得た。
実に、面白い。
母国フランスでは、ヴェルーヴェン警部の物語はシリーズになっているようであるが、翻訳はされていないようである。
ちょっと残念であるが、この本だけでも読めたのは幸いと言える。

どうやら映画化の話もあるようで、実現されたらたぶん、面白いものになるに違いない。
果して、キャスティングはどうなるのだろうという興味が湧く。
「読まなきゃ損」と断言できるフランス犯罪小説である・・・
    
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2015年03月31日

【インフェルノ】ダン・ブラウン 読書日記529



原題:INFERNO

ダン・ブラウンと言えば、『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』『ロスト・シンボル』と続く『ロバート・ラングドン』シリーズであるが、ついに第4弾が登場。
これは読まずにはいられない。

冒頭、ロバート・ラングドンは病院のベッドで目覚める。
点滴につながれ、頭部が痛む。
一体何がどうなったのか、読む者はもちろん、当のロバート・ラングドン自身もわからない。
屍の上に立つ銀髪の女が囁く夢に襲われる。

そして突然、スパイクヘアの女が襲撃してくる。
手当してくれていた医師が目の前で撃たれて倒れる。
もう一人の女医ブルックスに連れられて逃げるラングドン。
今回の始まりは、いきなりの「トップスピード」モードである。

ロバート・ラングドンは一時的な記憶喪失にかかっている。
女医のシエナ・ブルックスの話によれば、頭部を銃撃されたとのこと。
気がつけばなぜかフィレンツェにいるし、見知らぬ殺し屋に命を狙われ、シエナとともに逃げる羽目になる。
さらに米国大使館に助けを求めたものの、やってきたのは殺し屋。
実に面白い。

たびたび脳裏に浮かぶ謎の銀髪の女性とおどろおどろしい地獄のようなイメージ。
やがて、ダンテの「神曲:地獄篇」がキーワードとして浮上する。
ロバート・ラングドンが象徴学者である以上、それに関わるものがないと物語も進まない。
例によって一つ一つ謎を解きながら、失われた記憶と、背後に動く恐ろしい計画が明らかになっていく。

登場人物は、主人公のロバート・ラングドンと一緒に行動する医師シエナ・ブルックス。
謎の組織“大機構”の総監、WHO事務局長エリザベス・シンスキー、そして恐るべき計画を立てたベルトラン・ゾブリスト。
このロバート・ラングドンシリーズは、“謎解き”が面白さの一つになっているが、ここでもダンテの「神曲」に絡めた謎を一つ一つ解明して計画の深淵に迫っていく。

息もつかせぬ面白さは、さすがであるが、ただこれまでのシリーズと比べると何かが足りない気がする。
それは何かと思うに、謎解きの内容だろう。
前作までは、「これはフィクションのはずなのに本当のことなのだろうか」と思わせる驚きがあった。
フィクションとノンフィクションとの境界がわからなくなるものがあったが、この本では残念ながらそこまでのものがなかった。
“物足りない”と言っても、それは「過去の作品と比べたら」という話であって、普通の作品と比べれば、十分に面白い。

今回は、「人口爆発」という問題点をテーマにし、考えてみれば非常に深刻な危機になりそうな話に気付かせてくれるという役割もあった。
楽しみながら、問題意識を持つという効果もある。
これでこのシリーズも打ち止めということもないだろう。

次のロバート・ラングドンの活躍を期待したいと思う・・・
   
     
   
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2013年10月06日

【コブラ】フレデリック・フォーサイス 読書日記371



原題:The Cobra
第一部:蜷局(とぐろ)
第二部:威嚇
第三部:攻撃
第四部:猛毒

今なお、現役で健在。
フレデリック・フォーサイスの最新作。
衝撃的だった『ジャッカルの日 』以来30年超、ほとんどの著作を読んでいるが、裏切られた事はない。
いまだに新作が出る事が嬉しい限りである。

これまでと同様、本作も現実の世界の現実の問題をベースに物語が語られる。
今回はコカインの世界。
冒頭、ある少年の薬物中毒死に心を動かされたアメリカ大統領が、コカイン撲滅のための極秘作戦を指示する。

作戦指令を受け、具体策に入る段階で任務を任されたのは、元CIA高官にして工作員のポール・デヴロー。
綽名はコブラ。
この物語の主人公である。

そしてそのコブラが、作戦遂行にあたって右腕に指名したのが、弁護士にして賞金稼ぎのキャルヴィン・デクスター。
通称は“アベンジャー”。
とくると、前作 「アベンジャー」を思い出すが、この二人、前作でも“共演”しているのである。
主役を交代しての再登場というわけである。

コブラが計画を立案し、アベンジャーがそれを遂行していく形で物語は進む。
緻密な取材に裏付けされたストーリーは、迫力満点。
コカインは、コロンビア・ペルー・ボリビアで生産されているが、純粋コカインを精製し販売する段階になるとほぼコロンビア1国で生産されているのだというが、こんな知識も自然と身につく。

コロンビアで精製されたコカインが、どんなルートで先進国に“輸出”されるのか。
先進国では、当然当局によって摘発努力が続けられているが、どんな問題点があるのか。
そんな事もわかってくる。
周到な準備期間を経て、コカイン撲滅作戦がスタートする。

実際にやったら効果はあるだろうに、と例によってリアリティ溢れる展開にそんな感想を持つ。
主人公はコブラとされているが、実際読んでいくと、コブラが主人公なのか、アベンジャーなのか微妙なところでもある。
そしてフォーサイスらしい結末。

次回作はあるのだろうか。
まだまだ読んでみたいと思わせられる作家である・・・

   
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2012年12月08日

【ジェノサイド】高野和明 読書日記298



書店で山積みになっているのを見かけ、気になって手に取った一冊。
フレデリック・フォーサイスもののような雰囲気が漂う作品で、最後まで一気に読んでしまった。

物語は、アメリカと日本、そしてコンゴとで展開される。
イエーガーは元米軍人で、今は民間軍事会社に勤めている。
肺胞上皮細胞硬化症という難病に侵された息子を持ち、その治療費を捻出するために、イラクで危険な警護任務についている。
民間軍事会社というのも、いかにもアメリカらしい。
元軍人たちが雇われ、危険地域で軍事サービスを展開しているのである。
そんなイエーガーに、次の任務のオファーが来る。
死の淵に喘ぐ息子の病状を妻から聞きながら、イエーガーはその破格の条件のオファーを受ける。

一方日本。
大学生の古賀研人は、父を大動脈瘤破裂で失う。
そしてその死後、科学者だった父から突然メールが送られてくる。
しばらく姿を消すが心配するなという内容。
そして「アイスキャンディで汚した本を開け」という謎めいたメッセージ。
そして大金の入った口座と、見知らぬアパートの一室に残された実験器具を発見する。

イエーガーのミッションは、他の3人のメンバーとコンゴに潜入する事であった。
ジャングルに住むピグミー達を探し当て、そしてある任務が課される。
古賀研人は、父からの「オーファン受容体のアゴニストをデザインし、合成しろ」との指示を見つける。それは大学院に通う理系学生の研人にもよくわからないものであった。

日本の大学院生研人とアメリカの軍事会社に勤めるイエーガー。
一見なんの接点もない二人の物語が進行していく。
ブッシュを彷彿とさせるアメリカ大統領のバーンズ。
側近に言われるまま、コンゴでの作戦ネメシスにゴーサインを出す。

3つの物語が独立して進み、やがて絡み合う。
このあたりは何となく予測がつく。
鍵となるハイズマン・レポート。
一体どんな展開が待ち受けているのか。
このあたりは、なかなか惹きつけてくれる。

民間軍事会社の仕組みや製薬の過程。
人助けという美名に隠れた金儲けの世界。
人類の歴史にアフリカ情勢。
物語とは別に、今まで知らなかったそうした事実が楽しめる。
そして空想力豊かなストーリー。

人類の残虐性が進化の鍵という話はなるほどと思いつつ、複雑な気もする。
そして表向き平和国家のアメリカの持つ好戦性。
イラク戦争の真実の姿も今では多くの人が知るところとなってきている。
そうした側面の補完ストーリーの効果もあって、本体のストーリーもドラマチックに展開していく。

そして余韻の残るラスト。
盛沢山の物語は、重い余韻を残す。
「善なる側面が人間にあるのも否定しない。しかし善行というものは、ヒトとしての本性に背く行為だからこそ美徳とされるのだ。それが生物学的に当たり前の行動なら称賛される事もない。」というハイズマン教授の言葉は実に含蓄に富んでいる。
物語意外にもたっぷりと考えさせてくれる物語である・・・


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2011年04月01日

【ロスト・シンボル】ダン・ブラウン 読書日記143

ロスト・シンボル 上 [ハードカバー] / ダン・ブラウン (著); 越前 敏弥 (翻訳); 角川書店 (刊) ロスト・シンボル 下 [ハードカバー] / ダン・ブラウン (著); 越前 敏弥 (翻訳); 角川書店 (刊)

映画化もされた大ベストセラー「ダヴィンチ・コード」と「天使と悪魔」の著者ダン・ブラウンが、両シリーズの主役ロバート・ラングドン教授を主人公とした第3弾として発表したのがこの作品。

「ダヴィンチ・コード」も「天使と悪魔」もともに歴史上の芸術と宗教とを絡ませた見事なストーリーであった。
「これは本当なのだろうか」と思わず読み返してしまう部分があちこちにあった。
レオナルド・ダヴィンチやニュートンなどの歴史上の人物が、本当にこんな事をしていたのだろうか、と圧倒されたものである。

そして今度は舞台がアメリカの首都ワシントン。
何かと陰謀説が取り上げられるフリーメイソン。
ワシントン記念塔にジェファーソン記念館にリンカーン記念館といった名だたる建物が、秘められた古の謎の舞台として登場する。
またしても「これは本当なのだろうか」と惑わされる世界に放りこまれる。
「作中に描かれた儀式、科学、芸術、記念建造物は、どれも実在する」という冒頭の言葉に否が応にも興味を湧きたてられる。

フリーメイソンのメンバーでもある恩師ピーター・ソロモンから頼まれて、ラングドンは講演のためワシントンにやってくる。
しかし講演会会場はものけの空で、突然上がった悲鳴に駆けつけると、そこには切断された人の手が置かれている。
その手の指輪を見たラングドンは、その手がピーター・ソロモンのものである事を知り愕然とする・・・

犯人からの連絡で、「生きてピーターを取り返したければ、古の謎を解き明かせ」と迫られるラングドン。
なぜかそこにCIA長官がやってきて、犯人に協力しろと迫る。
読む者もみなラングドンと同様、戸惑いながらストーリーに巻き込まれていく。

建国の父達が隠したという秘密とはいったい何なのか。
ワクワクしながら読みだすとなかなか止まらないのは前2作と同じパターン。
緻密な取材と物語の構成力は凄いと思わざるを得ない。
今までほとんど興味もなかったが、改めてワシントンを訪れて確かめてみたくなってしまった。このシリーズはまだ続くのだろうか。
続くとしたら、次回作も必ず読みたいと思わされる一冊である・・・



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